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2011.05.14
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カテゴリ: 気になる本
 韓国では「日本びいき」として評価の低い呉善花さんであるが・・・・

 韓国の惨状から「人のふり見て我が身を正せ」と思ったりするが、日本でたびたび起きた漢字廃止の動きは、もう起きることはないでしょう。ただ・・・・
「いま騒がしい英語公用化より、漢字文化圏の再興が先じゃないか」とも思う大使である。


「漢字廃止で韓国に何が起きたか」呉善花著、PHP研究所、2008年刊

<独自に概念語をつくるとした計画>p32~35
 私は韓国人が漢字の廃止によって失ったもののなかでも、最大のものは「概念を用いて抽象度の高い思考を展開すること」だと思ってきた。それが最近、呉之湖氏の1971年当時に書かれた論文「国語に対する重大な誤解」を読み、氏がすでにその弊害についても警鐘を鳴らしていたことを知った。呉之湖氏は1905年生まれで1982年に亡くなった西洋画家である。
 呉之湖氏はあらゆる角度からの漢字廃止の弊害を論じているが、それを読んで、やはり概念語の問題が一番大きいと感じた。概念語の問題について、呉氏はまず大韓民国の憲法第一章を例にとることからはじめている。
(憲法第一章)
 90%以上が漢字語で、しかも概念語のすべてが漢字語である。呉氏は、これをすべて音だけで表記して、韓国が韓国の文化を維持発展していくことなどできはしない、必ず質を落とすことになると主張した。
 しかも、当時の漢字廃止論者たちは、漢字を廃止するだけではなく、漢字語そのものをも廃止し、新たに造語していくことが必要だと考え、その作業を進めていたのである。
 一例をあげると、内容―中の肌、団体生活―集まり暮らし、胃―ご飯の缶、などである。日本語で「身体障害者」のことを「手足の日自由な人」と言い換えようとするのと同じである。
 彼らは、こういう言い換えを盛んにやって「新発明」の単語をどんどんつくっていったが、彼ら以外の誰もまったく使おうとはしなかった。呉氏は、高度な抽象性をもった概念を抽象度の低い直接的な語彙ばかりの固有語で表記することじたいに無理があるという。
 私の考えるところでは、「内容」を「中の肌」と造語しても、それはけっして概念語にはならない。単なる言い換えにしかならず、概念として必要な抽象度を獲得することはできない。「中」とか「肌」とか、身の回りにベトベトと張りついた言葉の感触から離れられなくては、とても抽象世界への離陸は果たせないからである。



<漢字廃止が戦後韓国の知的荒廃を推し進めた>p62~67
 漢字復活論者たちの論考をよく目にするようになってから、彼らが韓国では最も良質の教養と見識を身につけた理性的な知識人たちであることがよくわかった。こういう人たちも韓国でしっかり生きていたことを知ったのは、私には大きな救いだった。一部には民族優越主義があるのだが、ハングル民族主義のようにファナティックなものではない。
 彼らがいっているように、韓国人は、ハングル専用のおかげで「世界一読書率の低い国民」となってしまっている。しかし、漢字復活にもまったく問題がないわけではない。
 十年ほど前のことだが、日本人を交えて数人の韓国人と話していたときのこと。一人の韓国人がふと不思議そうにいった。
「なぜ韓国にはケーランとタルギャルと二つの名前があるのだろう」
 いずれもニワトリの卵の韓国語なのだが、私も「そういわれれば不思議だなあ」と思った。すると、その日本人は「ケーランは漢字語でタルギャルは固有語でしょう」という。「ああ、そうか、そういえば多分そうなんだね」と、そこにいた韓国人のだれもがはじめて気づかされたのだ。
 それと同じようなことがあった。
 ある日本人の編集者が打合せに私のマンションに訪ねて来て、帰ろうとしたときに急に雨が降り出した。私は傘を貸してあげようと思い、無意識に韓国語交じりの日本語で「ビニルウサンがありますので持っていって下さい」といった。その日本人はなんのことかわからず「え?」と聞き返したのだが、私は再び「ビニルウサン」といってしまった。
 すると、その人は「ああ、ビニールの傘ですね」というのである。「なぜわかったんですか」と聞くと、「雨が降っているし、雨傘を音読みすればウサンになりますから、韓国語でも同じ発音なのかなと思ったんです」という。
 まさしくその通りなのである。
 これらは、単に韓国人がうっかりしていたという軽い話ですむ問題ではない。漢字語が広く深く一般に浸透していくと、漢字語に圧倒されて固有語が死語となってしまうことが少なくないという事態につながっているのである。
 日本では山を音読みで「さん」と、訓読みで「やま」と読むから、日本固有語の「やま」が死語となることはない。しかし韓国では訓読みが行われないため、山は「サン」という漢字語に圧倒されて、かっては固有語で山を表す「メ」という言葉があったが、いまではまったく使われていない。
 「メ」という言葉は漢字語の「山」と単純にイコールの言葉ではなく、もう少し別の意味にもかかわる言葉だったらしい。おそらく「メ」は、古い時代からの韓国独自の「山」のイメージの広がりを持っていたのだと思う。そうした固有語独自のニュアンスも、訓読みがないために失われてしまう可能性がきわめて高い。
 それでもまだ、海は「ヘ」の漢字語に対して「パダ」の固有語が残っている。天は「チョン」の漢字語に対して「ハヌル」の固有語がある。しかし「山」のように、基本語彙ですら固有語を失った言葉はたくさんあるのである。
(中略)
 韓国の漢字復活論者に対する私の最大の不満は、彼らのだれもが日本語にある「訓読み」に注目しようとしないところにある。先の「至高」「賢人」「水防」という漢字語の意味を日本人が比較的簡単に理解できるのは、使われている漢字がやさしいものだからだけではない。「至る高い」「賢い人」「水を防ぐ」というように、訓読みすることで即座に大枠の意味をつかめるからである。
 しかし韓国の場合、「水」と「防」の漢字を知っていれば、「水防」という漢字語の意味が、日本人のように目で見てすぐ見当がつくかというと、なかなかそうはいかない。なぜかというと、韓国の漢字教育では「防はフセグのボウ」というように意味を覚えさせるからである。これは、英語の「defense」は「ディフェンス」と発音し、「ふせぐ」という意味だと教えるのとほとんど同じことである。受験生の時代、英語の単語帳と首っ引きで必要な単語の発音を覚え、同時に意味を覚えていった体験を思い出していただきたい。韓国の漢字学習ではそれと同じことをやるのである。したがって外国語と同じように、「意味を忘れる」「意味がすぐに出てこない」ということがどうしても避けられない。
 それに対して日本では「防」には音読みの「ボウ」と訓読みの「ふせぐ」の二通りの読み方がある。これによって「防ぐ」という表記を頻繁に読んだり書いたりすることになるから「防」と「ふせぐ」は自然に意識のなかでしっかりと結びついて一体化していく。



<訓と仮名をもって和語のなかに漢語を包み込む日本語>p81~83
 韓国は膨大な量の漢語を外来の音という要素だけをもって取り入れてきた。そこでは、韓語(固有語)と漢語は互いに結びつく手段を持たず、並列してそれぞれ別個に使われている。そのため、漢字文化が広まれば同じ意味をもつ韓語が消え去ったり、ハングル専用となると音だけではわかりにくい漢語が消え去ったり、という事態が起きてしまうのである。
 それに対して日本語は、音訓の二重性を持って漢語を取り入れている。そのため漢語は和語としっかり結びついて使われ、相互に排除しあうことがない。そこが韓国語の漢字の取り入れ方と根本的に異なるところである。
 日本は中国から漢字が入ってきてしばらくすると、漢語に相当する和語を求め、それを訓として漢語にあてることを徹底して追及していった。そして、漢字をモデルに日本語の音を表記する仮名をつくりだし、それを漢字と交じり合せて用いることで、世界で唯一の表意文字・表音文字の双方を活用する文字表現文化を生み出し、漢語の世界と和語の世界が混交した独自の一言語世界を生み出した。
 日本ではそうした漢語の受け入れ方をしたため、僧侶・学者・官僚など一部のインテリのものであった漢語の知識(外来の知識)は、仮名と訓を通じて一般の人々に共通な和語の知識(土着の知識)に浸透していくことを可能とした。このような外来の知識の受容の仕方は、同じように漢字・漢語を受容した韓国やベトナムとはまったく異なっている。
 朝鮮半島でもベトナムでも、漢字が入ってきた当初、それを母国語の音にあてて用いること(表音文字として利用すること)は行われたが、日本の「」や「」に見られる万葉仮名のような大きな発展をみることはなかった。ましてや、仮名を用いての訓読みという方式が生み出されることはなかった。結局は、漢語(漢文)はそのまま外国語として知識層に学ばれ、一般的には朝鮮語やベトナム語のなかに、外来語としての漢語をそのまま取り入れていったのである。

************************************************************************
<韓国の言い回し>

<電話をかける>p140~141
 これが見事に同じなのは興味深い。日本語の「かける」と韓国語の「コルダ」は、不思議なほど同じ用法をもっている。語幹との関係は「かけ・る」であり、「コル・ダ」である。「かけ」と「コル」が対応しているのである。
 どこの国の言葉でも、「電話をかける」のと「洋服をかける」のと「いのちをかける」のでは、みんな言葉が違うのが普通だ。ところが、日本語と韓国語はいずれでも同じ言葉を使うのである。
 そのほか、「声をかける」「お金をかける」「博打でかける」などの「かける」もみな「コルダ」である。これほど、一語だけ覚えれば多用できる言葉も珍しい。ただ、「橋を架ける」の場合は「橋を置く」となる。
 こうなると、kakとkorとは昔は同じ言葉だったのではないかとすら思えてくる。



<背を回す-背く>p175~176
 日本では「背を向ける」のだが、韓国では「背を回す」のである。どちらも裏切ることだけれども、何か反対の仕草みたいなイメージが浮かぶかもしれない。でも、「背を回す」のは、相手のほうへ向けて背を回すのである。
「あんなに約束したのに、あの人は私に背を回した」という具合に、裏切り行為一般に使う。漢字語を使えば「背信する(ペイシン・ハダ)」とか「背信される(ペイシン・タンハダ)」という言い方になる。 



<足が広い-顔が広い>p178
 「顔が広い」と聞くと、とても変な感じがする。韓国語にはそいう言い方はないから、文字通り「顔の面積が広い」としか受け取れない。要注意である。私の場合は逆に、日本人に「あなたは足が広いですね」といってキョトンとした顔をされたことがある。きっと気分を悪くしたことだろうと、いまだに気になってしまう。


 ところで、中国ではスマートグリッドを智能電網と表記するそうだが、中国嫌いの大使としても、この造語能力には一目置くわけですね。
 日本では官僚を筆頭にして、訳のわからない英語を使って国民を煙に巻く(欺く?)ことが流行りであるが・・・・如何なものかと思うわけです。






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Last updated  2011.05.14 16:40:58
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