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2011.09.11
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カテゴリ: 歴史
「モン族の悲劇」の続きです。

竹内さんがモン族を世界最古の長征民族と称しています。
中国、フランス、アメリカと大国に利用され、翻弄され続けるモン族の未来に希望あれかしと思うのです。

「モンの悲劇」竹内正右著、毎日新聞社、1999年刊

モンの悲劇

<マキの放棄、そして原子爆弾>p102~103
 1984年、米上院外交委員会は「米国政府とベトナム戦争」報告書の中で、原爆使用を検討していた事実を30年の沈黙を破って公表しているー「米陸軍G3軍事計画局はベトミンをディエンビエンフーに引きつけた上で核爆弾を使用し、仏軍を軍事的に優位にさせようとした。だが、使用した場合の国際評価の逆効果、反対説が大勢を占めた」と。
「インドシナは朝鮮より重要で外交政策の最優先順位」とし、「インドシナの喪失は日本をも失う」とのドミノ理論を公式発表していたアイク政権。が、そのアイクは結局仏軍にナバール計画への支援、C47型機、B26型機の供与、空軍整備用員の派遣、CATパイロットの提供、と必要最小限のものしか与えなかった。ダレスに「歴史の教訓から利益を引きだすことが重要」と言わせたほどに、仏軍がベトミンの人員、武器数等、情報収集の貧困やザップ将軍の軍事能力の把握欠如など軍事的無能と植民地主義政策をさらけだしたこと、また、軍事面で仏・米が4年半も相互誤解を続けたことが第一次インドシナ戦争を敗北へと導いてしまった。
 が、仏軍の軍事的無能さと米国の軍事不介入が要因で最大の犠牲となったのは、モンのマキ部隊そのものだった。そして、仏軍に忠誠していたマキにはディエンビエンフー陥落後も武器投下が続けられ、ディエンビエンフーの戦場に放棄されたのである。「いつか、モンは放棄される」との、マキ創設者トランキェール大佐の予言は的中してしまう。その予言は、次なるモンの主人公、米人たちへの予言ともなるのである。
(中略)
 マキは孤立した1万6千人の仏軍兵士救出作戦、「コンドル」、「アルバトロス」等に投入されるのが常であった。仏軍脱走兵に武器を与え、守ったマキのその勇気と忠誠ぶりを賞賛する記録は溢れるほど残る。日本占領中、仏軍兵士が多く生存できたのもマキに負っているのである。が、それはまた、マキ部隊のモンの犠牲の多さを意味した。仏軍捕虜の中に、モンが皆無である事実は何を物語るのだろう。マキ部隊は捕虜に値しない、その場で即処刑の報復相手に過ぎなかったのである。仏軍のディエンビエンフーの敗北は、ラオス領内へ敗走したマキ部隊とその家族たちへの報復をベトミンに決意させた。ラオスのモンの悲劇はディエンビエンフーの戦いにまで遡る由縁がここにある。

<ジョン・ウェイン・シンドローム>p119~120
 モン投入計画はどんな背景から生まれたのだろうか。それにはケネディの大統領就任前年の米国を解明する必要がある。
1960年。この年米国では、91年の湾岸戦争でも再認識されだしたあの「ジョン・ウェイン・シンドローム」に覆われている。その源は西部劇「アラモ」であり、アメリカンドリームの象徴、J.F.ケネディ自身だった。そしてジェームズ・ボンドの小説の愛読者であるそのケネディが好んだ、アイルランド出身のジョン・ウェイン自作自演の反共映画、冒頭にケネディ特殊戦争センターが描写されるほどの「グリーンベレー(1968)」が作られていく。1961年、ケネディの「月へ人間を」のマーキュリー計画で、宇宙予算は400万ドルから65年の5億ドルへと上昇。国防予算は60年の45億ドルから62年の52億ドルとまで拡大していった。
 中国と旧ソ連が亀裂を生じだした1960年はまた、モンがケネディと遭遇した年でもある。60年12月、一人のモンが米国を訪れている。ラオス王国軍第2軍管区司令官バン・パオ将軍である。将軍にも、招いたワシントンDCにも、ある思惑があった。12月初め、右派プーミ・ノサバン将軍が起こしたクーデターがあったばかりのラオスでは、ケネディの特殊戦争が着々と進められていた。

<ロンチェン基地>p120~122
 第一次インドシナ戦争の軍事的天王山がディエンビエンフーの攻防なら、第二次インドシナ戦争のそれは、1971年3月の米軍・南ベトナム軍のラオス侵攻作戦の要因となった北ベトナム軍のホーチミンルート上最大の要衝チェポン攻防と共にロンチェン攻防である。「1961年という年は、ケネディのインドシナ攻撃の運命の瞬間である。コロンブスの大陸500年制服の中で最も破壊的なものの一つ。政治のみならず、文化にも多大な影響を及ぼした」
 ラテンの風土から始まった、ケネディのその「破壊を創りだす外交政策」の結晶とも言える、アジアの軍事的拠点の一つがラオスのロンチェンに作られていく。
 1961年、J.F.ケネディの選挙スローガンの一つ「」は、太平洋を越えてラオスのロンチェンに出現したと言えよう。米国IVSから派遣されたモン専門家ポップ・ブエルが、60年5月米人として初めて見つけた太古の渓谷。その空間は白星隊の手で秘密裏に山岳作戦基地として変容され、モン特殊攻撃部隊とその家族を率いるバン・パオ将軍の作戦本部として要塞化し、機能していくのである。この基地はまた、上部のファティ電子サイト基地やタイのウドン基地と連携、ホーチミンルートを南下する北ベトナム軍とそれを支援するパテトラオの基地への地上攻撃、空爆の母艦となっていった。それを統括していたのが駐ラオス米軍大使であり、第7空軍であり、そしてエア・アメリカ(A.A)である。
 61年、この基地は世界で最も極秘な場所となっていくと同時に、米国・ラオス経済援助計画の一環として、ポップの手でモン難民山岳司令部が設営され、モン救援作戦が展開されるのである。
 米国の歴史家J・ターナーの論文「フロンティアは文明と野蛮の接点」とするなら、この年、モンとの接点となるケネディの理想主義の砦、ロンチェンは生まれるべくして生まれたと言えよう。
 が、そのロンチェンは「モンの終焉」を導く元凶となっていくのである。

<「世界最古の長征」民族・1千万の未来>p225~226
 春秋戦国時代の異端児、楚を築き小国王(カイトン)を名乗り、文人屈原、英傑項羽などを祖先に持つモンはその後、一度もモン「王国」を樹立していない。その末裔たちが1千万人(楚の人々と周辺の漢民族との混血を合わせれば、今日数億の民となる。また、越を呑み込み、稲とその文化を伝えた人々だ。現代日本人の祖先の一部であることに変わりはない)を数える今、国境概念の崩壊が生んだインドシナ北部と中国南部の「モン四角地帯」の新形成は、一つのモン「国家」の実現を可能視させるに充分である。
 93年、中国共産党中央委員会が雲南自治区人民委員にモン女性を登用した例を見るように、中国政府は苗族(モン)自治区を統制、維持している。が、ベトナム政府は今日もモン60万人の自治区は認めていない。
 国境を超越した、一つのモン「国家」の実現は21世紀に持ち越される。
「世界最古の長征」をした民族モンは、21世紀のいつの日か、再びモン「王朝」として名乗りを上げる時が来るだろう。ラオスで抵抗を続けるチャオ・ファ隊の姿は、かって秦に亡ぼされた楚の、南に下ったその末裔そのものだからだ。
 ラオスの戦場でモンと出会ったことで、私のインドシナ戦争を見る目は全く異なるものとなった。そして、モンの存在とその戦争を捉えることなしにインドシナ戦争を描くことは全くの不充分であることを知った。この試みで、実に巧妙にモンを利用しようとする現代国家の狡猾さと非情さを見てしまった。モンの抵抗は、現代国家の行動の反面鏡であり、文明への警鐘である。モンを第一次から第三次のインドシナ戦争の中から浮び上がらせることで、インドシナ戦争は終焉してはいない。銅鼓が象徴の、モンの抵抗に終わりは来るのだろうか。

<著者プロフィール:竹内正右>
 1945年1月13日、旧満州吉林省生まれ、父は、旧ソ連に抑留され死亡。2年間のコロ島での日本人難民収容所生活の後、47年、母らと静岡に引き上げる。島田商業を経て、70年に早稲田大学卒業後、インドシナ戦争を取材。旧南ベトナム、ラオス、カンボジアを巡る。75年には、ラオスのビエンチャン陥落の歴史的瞬間を記録(AP通信などで発表)。79年には、ベトナム軍のカンボジア侵攻を取材中、ポルポト軍に捕らえられた。82年、日本に帰国後も、一貫してアジアの現場を追う。スリランカ暴動(83年)、ベトナム軍のカンボジアからの第一次撤退(83年)、フィリピンのアキノ暗殺(83年)、マルコス政権崩壊(83年)、ビルマ・クーデター(83年)、中国の天安門事件(83年)、戒厳令下のチベット(90年)などを取材。89年にはモンを追って米国へ、90年、91年に再びラオス入り、以後、旧ソビエト崩壊後のトルクメニスタン(91年)、ダライ・ラマを追って、台湾、インドのダラムサラ(97年,98年)、北アイルランドの国民投票、IRA(98年5月)を取材。著書に『ドキュメントベトナム戦争1975』(パルコ出版・共著)。


モン族の悲劇(その1)
モン族の悲劇(その2)





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Last updated  2011.09.12 09:12:29
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