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2012.01.17
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カテゴリ: 映画
美大を出て、CM制作、美術監督を経て、映画を作り始めたリドリー・スコットは、映画作りを全て一人でやりかねない拘りがあったようですね。

映画はやはり、脚本と、それを映像化する監督の強い拘りから生まれるものだろう。
リドリー・スコットは《ブレードランナー》の風景にはフェルメールとエドワード・ホッパーを見本に構想したそうだが、明らかに美術的素養があるわけで・・・・・
その拘りの映画美術に大使は惚れ込んだのである。

「リドリー・スコットの世界」という本からリドリー・スコットの拘りを紹介します。
なお、「ブレードランナー」については、追って紹介とします。

「リドリー・スコットの世界」ポール・M・サモン著、扶桑社、2001年刊

テルマ&ルイーズ

<女ふたりにサンダーバード・コンバーチブル>p222~252
《テルマ&ルイーズ》の脚本家カリー・クオーリは、テキサス州サンアントニオに生まれた。パードゥ大学で演技戯曲学科を専攻したのち、ロサンジェルスに転居、ここで正式の演技指導をうけた。やがてロサンジェルスで人気上昇中のMTV制作工房だったプロパガンダ・フィルムズ社に入社。ロック・ビデオを制作したのち、脚本家に転向した。
 クオーリはある夜、家の外に停めていた車の中で《テルマ&ルイーズ》の原案を思いついた。まったく違う生き方を夢見ていた女が、些細なことがきっかけで、今までのつまらない暮らしを投げだすことになるってアイデアはどうかしら?レイプされたのがきっかけで、主人公の女は相手を殺してしまうという冒頭の設定を思いついた彼女は、それを二人組の女が活躍するシリアスかつコミカルなロードムービーにふくらませた。
(中略)
 全体的にはコメディにもっとも比重が置かれているように見えるものの、部分的には寓話で、またロードムービーでもあり、さらに社会批判ドラマや女コンビの道中ものの要素もある《テルマ&ルイーズ》。その悪党ものドラマとしての外見は、狙っていた内容のつけたしのようなものにすぎない。コミカルな逃亡劇の皮をはげば、実は女性は生まれながらに弱い立場にあって泣き寝入りするしかないのだという、一連の社会批判をまとめた作品だったことが見えてくるだろう。

(中略)
 ミミ・ポークが問題の脚本をスコットにまわすと、彼はそれが自分の求めていた要素をすべて満たしている作品だと納得した。「カリー・クオーリの脚本は、実によく作りこまれていた。構成は文句なしで、物語も良くできていた。ドラマティックで、ユーモアがあって、テーマには少し不思議なセンスがきかせてあった。また、《テルマ&ルイーズ》は現実をとらえた作品でもあった。現実を浮びあがらせている作品は、あまりないからね」
 さらにつけ加えてスコットは言う。「男性と女性の人間関係をきわだたせる、カリーの筆さばきがとても気に入ったんだ。この物語は、観賞後も覚えていたいかどうかは別にして、スクリーンを観る客に、自分たちの現実社会がどういうものかを再認識させるだろう。男というものの内面にある要素を8人の男性キャラクターに分割して具体的に描きだし、また、時おり主人公二人がごく普通の女にもどって馬鹿を見るあたりも、なかなかのものだ。男性の要素のほとんどは本人に問題がある。じつに不愉快なものだった。だからといって、ぼくは《テルマ&ルイーズ》をアンチ男性的な、または男性たたきを意図した物語と思っちゃいなかった。だって、そんな作品ではないからね。ぼくはこれを、大勢の女性が耐え忍ばなければいけない社会の現実を、正直に語ってみせた貴重な脚本だと考えたんだ」
 意外にも、スコットは脚本に強く惹かれたものの、最初のうちは自分でメガホンを取るつもりはなかったという。

(中略)
 当初、《テルマ&ルイーズ》のエンディングはもう少し長かったが、あとになって監督は劇場公開版から一部削除した。
「最初に決めたエンディングも十分に効果的だった。でも、やがて《テルマ&ルイーズ》の感情的な余韻が、あのラストでは損なわれるような気がしてきた。自由をつかんだまま崖から飛び出していく主人公たちの高潔さが、あとの映像で鈍らされていたんだ。渓谷の底に転落した車が具体的に映ると、やはり逃亡は無理で主人公たちは死んだのか、現実とはこんなもんだなと思って、観客はげんなりしてしまう。だから、オリジナルの結末の一部を削除し、スローモーションで車が空中へ飛び上がっていくところで終わらせた。製作当初からずっと、カリーの脚本の結末には不安を感じていたんだ。ぼくの思いつきではなかったが、とても良くできていると思う。いつも、もっと良くできないかと物語の改良を考えていたからね。だれも、他のオチを思いつかなかったし。ともかく、映画の逃げ場のない現実味はとても良かった。あとで試写会を開いたとき、観客から『何をしてもかまわないが、あのラストだけは変えないでほしい!あれは、ハリウッド調のオチの裏返しだけじゃなくて、じつに適切なエンディングなのだから』という感想をたくさんもらったよ」

(中略)
 製作プロダクションに近い筋からの情報によると、《テルマ&ルイーズ》はリドリー・スコットの映画製作の方法論を一変させた作品だという。たとえば、監督はこの映画ではじめて、すべての場面を2台のカメラで同時撮影していた。「同一場面で、多彩なアングルの映像を得られるだけでなく、俳優たちの自由で独創性のある演技をそのまま生かす効果もあって、この技術を取り入れたんだ。あれからずっと、複数のカメラを使っている」と彼は説明した。
 ここで筆者の個人的意見も述べておこう。いままでリドリー・スコットは、撮影中に他人行儀で不愉快な態度をとると頻繁に批判されてきた。思うにこの非難は、スコットのイギリス人ならではの内気な態度や、撮影現場で緊張感を最大限度まで高め、プロ意識のすべてを発揮しようとしたことが、周囲の誤解を生んだためではないだろうか。「リドリーは、この企画のあいだ、とてもリラックスしていました」と、《テルマ&ルイーズ》の某スタッフも語る。「たぶん、あの女優たちに囲まれていたあおかげでしょう。ほんとのところは、よくわかりませんがね。ただ、《テルマ&ルイーズ》を製作したおかげで、監督のかぶっている殻が少し薄くなったように思います」

「いまになって」監督自身が感想を語った。「この映画全体を考えなおしてみると、作品のもっとも根源的なものをつかむのに成功したのだろうな。だからって、僕が得意がると思うかい?僕らはただ、愉快な映画を一本作っただけさ。評価などは二の次だよ。コメディ映画をとても楽しんで作れただけで、そのとき、自分はこういうものもうまく撮れるのだなと気づいたわけだ」






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Last updated  2012.01.18 02:40:42
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