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2012.04.17
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カテゴリ: アート
村上隆の『芸術起業論』
個人的に気になる3人の村上さんがいるけど、その1人が村上隆なんです。
(ちなみに、あとのおふたりは村上春樹、村上龍です)

日本画壇が目をむくような、村上隆の『芸術起業論』を読んでみましょう。


村上
村上隆著、幻冬舎、2006年刊

<内容紹介>より
すべての人(=アーティスト)は起業家である! 芸術には、世界基準の戦略が必要である。「光を見る瞬間」をどう作るか!? サザビーズオークションで1作品1億円で落札された村上隆が説く、超ビジネス書。

<大使寸評>
芸術起業という言葉自体に矛盾を孕んでいるけれど、世界に打って出た村上隆さんが、その矛盾を蹴飛ばすようにぶち上げた持論が面白いのです。
成せば成る!何事もガッツが肝要なんでしょうね。

Amazon 芸術起業論


この本のエッセンスを紹介します。

<芸術には、世界基準の戦略が必要である> p25~30より
 日本の美術の授業は、ただ「自由に作りなさい」と教えますが、この方針にしても、欧米の現代美術の世界で勝ち抜くためには害になりかねません。
 自分勝手な自由からは無責任な作品しか生まれません。
 欧米の美術の文脈の下地を把握しなければ、美術の本場に「ルールの違う戦い」を挑むことになり、戦う以前に相手にされないのです。
 欧米を中心にした芸術の世界で取引されているのは、人の心です。
 芸術の世界に踏みこめば踏みこむほど、アーティストの目的は人の心の救済にあるのではないかと感じるようになりましたが、それなら、自分の欲望をはっきりさせなければなりません。
 芸術家は、欲望とどうつきあうのかを強く打ちださなければならないのです。
 ものが欲しい。カネが欲しい。権力が欲しい。女にモテたい。出世をしたい。
 欲望の強さは芸術制作の邪魔にはなりません。むしろ問題は日本の芸術家に強烈な欲望がないことです。
 (中略)
 美術雑誌の最近数10年の最大のクライアントは美術大学受験予備校、そして美術系の学校です。
 大学や専門学校や予備校という「学校」が、美術雑誌を支えているわけです。金銭を調達する作品を純粋に販売して生業とする芸術家は、ここで尊敬されるはずがありません。これは日本の美術の主流の構造でもあるのです。
 「勤め人の美術大学教授」が「生活の心配のない学生」にものを教え続ける構造からは、モラトリアム期間を過ごし続けるタイプの自由しか生まれてこないのも当然でしょう。
 エセ左翼的で現実離れしたファンタジックな芸術論を語りあうだけで死んでいける腐った楽園が、そこにはあります。
 世界の評価を受けなくても全員がだらだらと生きのびてゆけるニセモノの理想空間では、実力がなくても死ぬまで安全に「自称芸術家」でいられるのです。
 生徒が教師になり続ける閉じた循環を奨励する雑誌の中で、「芸術家の目的は作品の換金だ」と主張できるはずがありません。その現場に教師たちが直面していないからです。
つまり、日本の美術雑誌とは、美術学校での活動をくりかえすための燃料に過ぎなかったのです。
 芸術家も作家も評論家も、どんどん、学校教師になっていきますよね。日本で芸術や知識をつかさどる人間が社会の歯車の機能を果たせる舞台は、皮肉にも「学校」しかないのです。
 文化人の最終地点が大学教授でしかないなら、若者に夢を語ってもしかたがありません。
 「今の若い連中のやってることは、だめなんだよなぁ。俺たちの夢は、こうだったんだぞ!」大学機構に守られている表現者が夢を語っても、それは本当に夢でしかありえませんから。
 今、企業家たちがもてはやされつつも嫌われているのは、夢を実現させているからだとぼくは思うんです。夢があるならこんなふうに実現すればいいというマネジメントが立証されてしまったら、先生と生徒たちが何十年も飲み屋で酌み交わして夢のような話が一瞬にして無になりますからね。
 戦後何十年かの日本の芸術の世界の限界は、「大学教授の話は日本の中で閉じている酒場の芸術談義に過ぎなかった」と認められないところなのです。


 なかなか威勢のいいコメントですね。
 村上隆さんが美術雑誌や美術大学教授や、はたまた自称芸術家によせる強烈な批判が表明されているが・・・・何かよっぽど酷い仕打ちを受けてきたのではないでしょうか(笑)
 でも、その批判は画壇の正論とは言い難いが、概ね日本の惨憺たる状況を言い得ていると思うのです。

とにかく、功成った反逆児のコメントは、村上春樹にしろ、ジョブスにしろ颯爽としていますね。


<なぜ私の作品は1億円で売れたか> p34~37より
 2006年5月、ぼくの作品にオークションで1億円の値段がつきました。2003年に他の作品が6800万円で売買されて以来、ぼくの作品は「日本人の一つの芸術作品としては史上最高額の価格がついている」と語られていますが、こうした値段には理由も背景もありましし、ぼくには「すごく高額だ」とは思えません。
 美術作品制作のコストは高くつくからです。
 新しいものや新しい概念を作りだすには、お金と時間の元手がものすごくかかります。お金や時間を手に入れなければ「他にないものをひきよせるために毎日研究をすること」は続けられません。
 つまり、ビジネスセンス、マネジメントセンスがなければ芸術制作を続けることができないのです。
 ぼくの作品はまさにその傾向の一つだと思うのですが、なぜそういうことが起きるのか、というと「作品の価値は、もの自体では決まらない」からでしょう。
 価値や評価は、作品を作る人と見る人との「心野振幅」の取引が成立すればちゃんと上向いてゆくのです。
 1作品1億円の価格を理解するには、欧米と日本の芸術の差を知っておく必要があります。
 欧米で芸術作品を制作する上での不文律は、「作品を通して世界芸術史での文脈を作ること」です。ぼくの作品に高価がつけられたのは、ぼくがこれまで作りあげた美術史における文脈が、アメリカ・ヨーロッパで浸透してきた証なのです。
 マルセル・デュシャンが便器にサインをすると、どうして作品になったのでしょうか。既成の便器の形は変わらないのに生まれた価値は何なのでしょうか。
 それが「観念」や「概念」なのです。
 これこそ価値の源泉であり、ブランドの本質であり、芸術作品の評価の理由にもなることなのです。
 くりかえしますが、認められたのは、観念や概念の部分なのです。
(中略)
 「アートを知っている俺は、知的だろう?」
 「何十万ドルでこの作品を買った俺って、おもしろいヤツだろう?」
 西洋の美術の世界で芸術は、こうした社交界特有の自慢や競争の雰囲気と切り離せないものです。そういう背景を勉強しなければ、日本人に芸術作品の真価は見えてこないのだと思います。ええ、くだらない金持ちの戯れ事ですよ。でもそれを鼻で笑いたければ、世界の評価基準に対して一切口出しをしないでほしいわけです。
 たとえば、ぼくの作品に6800万円の値段をつけてくれたのは80歳近いアメリカの老夫婦で、既に会社を売って隠居されている方でした。
 アメリカの富裕層には評価の高い芸術を買うことで「成功したね」と社会に尊敬される土壌があります。そういう人たちが、商売相手なのです。


ふむふむ 村上は“欧米の無知な富裕層にふっかけているという冷めた認識”も持ち合わせているようで・・・・心強いですね♪



<芸術は想像力をふくらませる商売である> p49~51より
 ぼくはアメリカでは成功をおさめましたが、日本では敗残者に近いものでした。どちらかというと、もうそろそろ、アートをやめようかなぁと考えていました。
 ほとんど国外移民のような気持ちで渡米して、「やるしかない」と思っていたからこそ何とか勝てたような気がします。
 「かっこいいところに行きたくて海外に進出した人」は、海外での生き残り戦略の必死さに追いつけなくて負けてしまいます。
 日本でも自分のやりたいことはありましたが、現実的にまるで経済活動には結びつきませんでした。奨学金を受けて滞在したアメリカで「海外では受けそうだぞ」と試したものが当ったというのが現状です。アメリカで認められるまでの日本での敗北の記憶や「自分には何もないんだ・・・」という思いは、いまだにぼくの作品制作の大きな動機になっています。
(中略)
 「ニーズを優先させているといい作品なんてできない」と言われますが、本当でしょうか。
 ウォーホールは工房を構え、分業制をとり、多くのクライアントの要望に応えました。ぼくもそうです。
 相談や調査を基に作品を進化させることは、創造性を妨げないのです。
 「そんなことじゃ、中国の職人が本気を出したらすぐに追い越されるぞ!」
 工房でぼくはいつもこう叱咤していますが、芸術作品制作は他の芸術家との競争です。本気で市場の要望に応えようとすれば、妥協ができないほど質を高めなければなりません。
 分業制をとることで、一人ではできないほどの精度でものを作れるようにもなりました。
 ぼくは若いアーティストを育てていますが、ものすごくきつい特訓なのでおそらく不特定多数の人がやりたがるとは思えません。
 選ばれた人しか生き残れない、信頼関係がなければとても成り立たないような方法でアーティストの魂に刺激を与えているのですが、そうでもしなければ、現在の成功者の生きる価値観に揺さぶりをかけられる作品は生みだせないのです。
 ウォーホールは、クライアントがパトロンに値する重要なものだと理解していました。現代のパトロンがクライアントだとすれば、クライアントの発言が芸術を左右するのも、至極もっともなことでしょう。
 要望も理解した上で、それに応え、同時に確信犯的に聞き流す反逆的な作品も残すような生き方を確保しなければ、現代の芸術家の活動は経済的に破綻します。 


村上の拘りはジョブスのiPhonの拘りに通じるものがあり・・・・
日本の画壇にあって、村上はプロジェエクト・マネージャーの資質がある稀有なパーソナリティなんでしょう♪
そして取り残された日本画壇は、逆に金融自由主義に打ちのめされた日本経済や、ガラパゴスに陥った日の丸技術を彷彿とさせるわけですね。
あ 何だかプロジェクトX風になってしまったな~。


<経済的自立がないと、駒の一つになる> p66~69より

(文字数制限のため削除)


会社化、ブランドビジネス・・・この本は経済関係の本なのかと錯覚するほどですね。
ところで、分業制で制作するアートと言えば、映画もその一つであるが・・・
拘りの映画監督とも言えるリドリー・スコットが、よくディレクターと対立していたことが知られるています。
ギャラリストをうまく利用した村上もリドリー・スコットのような拘り(コア)を持っていたのだと思うのです。

1日の文字数制限で一部削除しましたが、全文は左の「 気になる本8 」に入れておきます。
ところで、村上隆の最新作ですが・・・・ 村上隆展「Murakami-Ego」を観たことにいたしましょう。
五百羅漢図に取り組む村上隆





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Last updated  2012.04.22 08:42:46
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