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2013.02.02
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カテゴリ: 歴史
<富国強兵の遺産>
 この本をパラパラとめくると、テクノナショナリズムという言葉も出てくるし、「戦後日本の航空機産業」という章もあり、もろに大使のツボを突いているわけです。
 副題が「技術戦略にみる日本の総合安全保障」となっているが、著者がMIT教授(政治学部長)となっているのが、看過できないわけですね。
こんなぶ厚い本をものにするMIT教授がいること自体に、アメリカの戦略性を感じるわけです。



【富国強兵の遺産】
富国

リチャード・J. サミュエルズ著、三田出版会、1997年刊

<「BOOK」データベースより>
「日本」繁栄の本質!!民生産業と防衛産業の相互依存により、日本の技術戦略は大成功を収めた。その根底には、明治期に培われたイデオロギーが脈脈と流れる。

<大使寸評>
この本を読むと、アメリカ人教授の情報収集、執筆力に舌を巻くわけですね♪
さすがに「菊と刀」を著わした国の学者である。その伝統とインテリジェンスが感じられる内容になっています(褒めすぎか)
このガッツには日本人の学者、ジャーナリストも見習うべきではないでしょうか?

なお、著者は日本のテクノナショナリズムを理解しつつも批判的であることを、心しておきましょう。

Amazon 富国強兵の遺産


「戦後日本の航空機産業」について著者リチャード・J. サミュエルズさんが俯瞰しています。

<第7章:戦後日本の航空機産業> p291
日本の貧弱な民間航空機産業は、戦後の非軍事化によって利益を得た日本経済全体の影の部分として解釈されることが多かった。占領軍の命令により、終戦直後の7年間にわたる重要な時期に、航空機産業が姿を消していたからである。にもかかわらず、日本の航空機産業はめざましい発展を遂げた。それは、日本の航空機メーカーが外国から熱心に航空機技術を取り入れ、1980年代には防衛力が強化され、防衛分野と民生分野の間の技術交流がさかんに行われるようになり、航空機メーカーが戦略を変更して外国の民間航空機メーカーに部品を納入するようになったことの成果であった。
 柳田邦男が述べているように、財界首脳と政府の指導者は長い間、航空機産業を戦略的な分野としてとらえてきた。つまり、航空機産業の自立を図ることは日本の「バーゲニングパワー(交渉力)」の向上につながり、安全保障の要となり、産業の発達を促す中心的存在になると考えられてきたのである。


大使のツボを突いた部分をアトランダムに抜粋して紹介します。

<非軍国主義化への道> p197~199
 戦後日本の政治と経済の歴史はアメリカの外交政策によって形成された。言うまでも無く、アメリカの外交政策を構成する要素の中で日本に最大の影響を与えたものは、ダグラス・マッカーサー元帥が率いる連合軍による占領であった。
 連合軍最高司令官(SCAP)が最初に着手したのは日本の非軍国主義化だった。1945年7月に作成された日本の降伏後の基本統治政策(指令82)の草案では、日本は産業を維持して復興のための外貨を稼ぐことはできても、軍隊をつくることはできないことになっていた。
 「指令82」の内容は非常に明快である。「日本がふたたび世界の平和と安全を脅かす存在になることを防ぎ・・・ためには、日本の軍事力の経済的な基盤を破壊し、軍国主義を根絶する必要がある」。指令は次のように命じている。

 兵器の製造や兵器の保全に用いられる製品、または軍隊・軍事施設で利用される製品の生産を即刻中止し、今後も生産を禁止すること。戦争の遂行に必要な製品を生産したり修理する設備を封鎖し、検査および制御の機能をもつ機関の運営を禁止して、偽装的な軍備を抑止すること。日本に再軍備の能力を与えるような産業や生産部門を排除すること。戦争遂行能力の育成を目的とした専門の研究機関を廃止すること。
 (文字数制約のため省略)

<航空機産業の解体> p291~294
 日本の航空機産業を支配してきた4大メーカー(三菱重工業、川崎重工業、富士重工業、石川島播磨重工業)は、今世紀初頭からたがいに協力し、あるいは個別に航空機業界のさまざまな分野に携わってきた。戦前、これらの企業は同じ設計図を共有するよう義務づけられたが、実際の航空機の生産は一つの企業だけに任され、標準化はあまり進まず、その生産性は低かった。1944年の時点で、日本には12の機体メーカーと七つのエンジン・メーカーがあった。
 占領軍は、ただちに日本の航空機産業とその技術基盤の解体に取りかかった。1945年8月24日、日本製の航空機の生産はすべて中止され、9月初め、占領軍は正式にすべての航空機工場を接収した。9月末、連合軍最高司令官(SCAP)は、この年の暮れまでにすべての軍用機と民間機を破壊する計画を発表した。11月、日本政府は「航空機に関連した・・・政府機関およびそれに準ずる機関すべてを解体する」。航空機とその部品の生産、修理、航空機関連の教育、研究、試験はすべて―摸型飛行機の製作も含めて―禁止された。
(文字数制約のため省略)

<不利な天候の中で進められたYS-11の研究> p307~312
 YS-11は特別な航空機であった。本格的な国策会社が日本で最初につくった唯一の航空機である。現在にいたるまで、日本でつくられた民間輸送機はこのYS-11しかない。
 産業育成のために行われた多くの実験同様、YS-11のプロジェクトは一つの構想の産物であった。通産省と産業界が共有する例にもれず、この構想も深慮遠謀を尽くしたものである。1955年に通産省の航空機課の課長に就任した赤沢祥一は、このプロジェクトの推進役になった。赤沢は当時を振り返り、日本の技術のありかたと国家安全保障イデオロギーを感じさせる比喩を交えて次のように語っている。
 「航空機工業は裾野が広いし、非常に精密な工業だし、その技術開発のもたらす波及効果が非常に大きい。私は当時、航空機工業ダイヤモンド論というのを考えていた・・・・」
 (文字数制約のため省略)

<テクノナショナリズムとプロトコル経済> p488~490
 日本のテクノナショナリズムの100年以上にわたる歴史を顧みて、我々が学ぶことができるのは、どれほど遠大な戦略を構築し、国防体制を固めたっところで、欠点だらけでお粗末な成果しか得られないということである。戦略というものは、我々が考えている以上に首尾一貫性を要求するものらしい。それでも日本のエリートたちは、しばしば驚くべき明敏さを発揮してきた。彼らが優れた政治的手腕の持ち主であり、チャンスに恵まれていたことも、彼らの明敏さと同じくらいに重要であった。

 (文字数制約のため省略)
 日本において、テクノナショナリズムは圧倒的に支持されている。過去数10年にわたって、日本のテクノナショナリズムの根幹をなす三つの方針がつねに大切に守られ、この国の価値観と信念の要としての役割を果たしてきた。日本の産業を支えるこれらの基本方針は、個別にみればどこの国でも採用しているものである。だが、この三つの基本方針がいっせいに奏でられ「三音和音」をつくると、それは他に例をみない力を発揮する。何十年にもわたって―いや、何世紀にもわたって―日本の防衛産業は、この三音和音に立ち返って目の前の課題を解決してきた。


以下に関連情報を並べておきます。
・名機YS-11
・MRJの初飛行が年内に
・ 大丈夫?787型機




<名機YS-11>

性能の良かったYS-11の後釜を準備できないのは、技術上の問題ではなくて、ひとえに官民の経営感覚の無さなんでしょうね。
(採算性の悪さに懲りて手を引いたのは惜しかったようです)


【名機YS-11】
YS
前間孝則著、大和書房、2006年刊

<「BOOK」データベースより>
悪戦苦闘しつつも零戦の技術を土台にYS‐11を開発した「五人のサムライ」。トラブルに悩まされながらも必死の努力を重ねた整備技術者。薄氷を踏む思いで操縦桿を握ったパイロット。彼らの血のにじむような奮闘の末、世界の大空に羽ばたいた国産旅客機YS‐11。2006年9月30日に国内でのラストフライトを迎えるYS‐11の軌跡を追う。

<大使寸評>
高知空港着陸の前に太平洋上で急角度のバンクを行うが、これぞ小型のレシプロ飛行機という感じで高揚する大使であった。
田舎のバスのように居住性は二の次であるが・・・・丈夫で、驚異的な●の良さを発揮した機体でした。

この戦後初の日の丸旅客機を退陣に追い込んだのは、ひとえに貧弱な経営感覚にあったわけで、技術的には遜色なかったことが、惜しまれます。
Amazon 名機YS-11



<MRJの初飛行が年内に>
MRJ試作初号機の初飛行が年内に予定されているそうです。・・・楽しみだぜ♪

MRJMRJ


1/22 三菱航空機、MRJ初飛行へ品質管理を強化 より
小型ジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」を開発する三菱航空機(名古屋市港区)は、年内に実施する試作初号機の初飛行に向け、機体の品質管理体制を強化する。現在約900人の設計・品質保証の担当者を数十人増やし、国内外サプライヤーの製造工程確認や納品管理などに当たらせる。MRJは部品の6割(金額ベース)が親会社の三菱重工業以外からの購入品。安全性の確認に加え、スケジュール順守のためにもサプライヤー管理を徹底する。
 1月1日付で就任した川井昭陽三菱航空機社長が明らかにした。同社によると、MRJの部材を供給する1次サプライヤー(ティア1)は約30社。今後は初飛行に向けて各社の部材生産も本格化するため、管理体制の強化を決めた。
 MRJの一機当たりの部品点数は約95万点にもなる。原則すべてのサプライヤーに同社の担当者が出向き、製品や製造工程を確認する。


1日の文字数制限で一部削除しましたが、全文は 富国強兵の遺産 に入れておきます。





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Last updated  2013.02.02 10:16:17
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