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2013.04.08
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カテゴリ: 政治
ケビン・ラッドさんへのインタビュー <米中衝突回避の道>

 ケビン・ラッド豪州前首相がインタビューで「危険兆すアジア、信頼を徐々に築く外交文化が必要」と説いているので、紹介します。

ラッド

 中国通として知られるケビン・ラッド豪州前首相が「アジア回帰を超えて」と題する論文を米国の外交誌「フォーリン・アフェアーズ」に寄稿した。米国の「アジア回帰」に中国が反発を強めるなか、「アジアの最重要課題は米中の衝突回避」との見方に基き相互信頼づくりの私案を示している。ラッド氏に米中関係の現状と展望を聞いた。
(デジタル朝日ではこの記事が見えないので、4/3朝日から転記しました・・・そのうち朝日からお咎めがあるかも)


Q:論文の中で「中国の台頭と米国の財政・経済問題の結果、アジア太平洋地域の戦後秩序の耐久性に疑問が投げかけられている」と書いています。

 この地域ではあらゆる兵器の大規模な拡散が進んでいる。そこに、朝鮮半島問題や、東シナ海、南シナ海での領有権問題があるのだから、冷戦時代と比べてもはるかに危険な状況にあるといえる。

Q:確かに、北朝鮮が核弾頭の小型化と大陸間弾道ミサイルの開発を終えているとの見方もあります。
A:それは地域の安全保障に対する「根本的な脅威」を超えて、「存在そのもに対する脅威」になり始めたということだ。私はこの表現を軽々には使わない。皮肉だと思うのは、世界各国がイランで進行中の核兵器開発に懸念を抱いている一方、すでにさらに進んだ段階にある北朝鮮に対しては、同じような懸念を持っていないということだ。

Q:米国の「アジア回帰」を歓迎する一方で「それだけでは平和を維持するのに十分ではない」と指摘しています。何が足りないのですか。
A:冷戦期の米ソ関係を例にとれば、戦略核をめぐる信頼は、長い時間をかけて徐々に構築されていった。二次にわたる戦略兵器削減交渉を思い出してほしい。1975年には全欧安保協力会議(CSCE)で(紛争の平和的解決などを定めた)ヘルシンキ合意も作られた。しかし、アジアにはそうした合意がないし、核兵器の削減交渉も行われていない。CSCEに相当する枠組みもない。そういう「外交文化」がないと言える。
 米国の地域における(軍事的)プレゼンスが縮小しないことは、戦略的な土台として必要だ。中国が不快に思っていることは明らかだが、彼らはリアリストなので力の均衡は信頼している。均衡が保たれているという前提で言えば、欠けているのはどうやって戦略的な(相互)信頼を築くかだ。

Q:具体的にどうせよ、と。
A:戦略的な信頼を構築するための段階的なアプローチ、「米中戦略的ロードマップ」を提案している。

Q:昨年12月、中国国防大学での講演で示したものですね。米中間の定期的な首脳会談の実施や、ニクソン政権当時のキッシンジャーのような交渉担当者の設置、防衛対話の格上げなど7項目でした。
A:そうだ。信頼は、いきなり宣言してできるものではない。まず小さな協力から始めて、次第により大きなことに進めていくのだ。

Q:中国は受け入れますか。
A:中国の利益がこの地域の安定を維持することにあるのは明らかだ。経済成長を達成するためには、長期にわたる安定が必要だからだ。今や中国経済は、単に輸出入だけでなく、投資や資本の流れでも国際社会にさらされている。米国も世界で唯一の超大国として、地域と世界の安全を確保したいと願っている。この利益の重なりを考えれば、相互信頼構築のためのロードマップづくりは、十分に可能だと思う。

Q:豪州は1昨年、米海兵隊のローテーション形式の展開を米国と合意しました。中国は包囲網の一環と見ています。提案とは逆に米中の相互不信を深めさせているのでは。
A:中国の分析は間違っている。これまでも豪州は長年にわたって米海兵隊のローテーション展開を受け入れてきた。1500人規模を1回3ヶ月だ。今度の合意は約2500人を6ヶ月という内容だ。根本的に力のバランスを変えるものではない。
 豪米の軍事的関係は第1次世界大戦にまでさかのぼる。1941年には対日戦に備えて同盟を結んだ。それ以来、米国との軍事協力は進化してきている。そうした流れの中で考えれば、今回の海兵隊の展開強化は、極めて限定的なものに過ぎない。シンガポールが受け入れる沿岸海域戦闘艦(LCS)の配備の方がはるかに大きな意味を持つ。

Q:論文の中で中国の将来に対する「核心的質問」を提起しています。中国が今後、既存のルールに基いた世界秩序の中で協力的に活動していくか、あるいは、自分のイメージに沿った形に世界のルールを変えていくかです。どちらに進むと思いますか。
A:ルールに基いた秩序は、長期的には中国の利益にもなる。そう説得することが、地域全体にとっての利益だというのが私の立場だ。中国は大国として恐れられるのではなく、尊敬されたいと思っている。そうであれば、既存の国際秩序に対しては、自分に有利な間だけ利用するという姿勢ではなく建設的な貢献をしなければならない。中国国内の議論を見れば、今後ますます既存秩序と協調しようという方向に進んでいくと思う。

Q:しかし、尖閣諸島問題や南シナ海での沿岸諸国との領有権問題で、中国は自国の主張を通そうと強引な姿勢を見せています。「攻撃的」との指摘も聞かれます。
A:「攻撃的」という説明は受け入れられない。自己主張が強いこととは全く異なる。中国は経済規模、軍事力で大国になったのだから、地域、世界の問題について独自の考えを持つということだ。
 我々地域諸国にとって重要なのは、中国と強固な関係を持ち、立場の違いがあれば、外交的、軍事的な危機を招くことなしに提起できるようにすることだ。「衝突」でも「叩頭」(頭を地につける)でもない第3の道。すなわち率直に忠告のできる友人関係だ。

Q:尖閣問題での日中間の対立は非常に厳しく、「率直な忠告」などできそうにないのが現状です。
A:この問題は、外交の論理と政治的ナショナリズムという相反する要素で動いている。外交の論理によれば、相互の関係を大きく傷つけることは、いずれの国にとっても利益とはならない。すでに経済への影響は深刻だ。しかし、ナショナリズムは両国で根強い。したがって安部政権にとって重要なのは、このナショナリズムで事態を炎上させることのないよううまく制御することだ。当面はまず、事態を安定化させる政治・外交的なメカニズムを作り、長期的には領有権問題そのものを解決する方法を見つけるということだ。

Q:日本のナショナリズムに関連して、中国国防大学での講演で「中国に対する姿勢の世代をまたいだ変化」に強い懸念を表明しました。
A:私の見るところ、中国との関係正常化に取り組んできた日本の政治指導者たちは引退し、戦略的和解の重要性を理解している人はほとんど残っていない。一方、新しい世代は、中国の要求を満足させることはできないので努力しても無駄だと思っているように見える。

Q:では、両国は尖閣問題を収拾できないと。
A:できるとは思うが、以前よりずっと難しくなっているということだ。双方ともナショナリズムの新たな力が活気づいているからだ。

Q:米国が「アジア回帰」の一環として主導する環太平洋経済連携協定(TPP)に対しても、日本では反発があります。
A:TPPは非常に優れた政策だ。自由貿易をアジア全体に広め、経済をより迅速に成長させることができる。日本の友人たちに強く勧める。日本は大きく手を広げて歓迎すべきだ。国内に保護主義の圧力があるのはどの国も同じだ。日本が現在保護している農業分野を含めて経済を完全に国際化すれば、大国としての地位の維持につながる。それができなければ大国としては生き残れない。

Q:そもそも中国の経済成長が持続できるのか、疑問を投げかける見方が最近、米国の専門家の間で出始めています。
A:私は中国の将来に甘い幻想を持っているわけではない。しかし、中国が過去30年間のように今後10年間成長を続けることはないと結論づけるのは、根拠薄弱だと思う。それに持続可能と見ることで失うものは何もない。むしろその方が用心深く賢明な判断だと言える。

<取材を終えて>
 米国の「アジア回帰」は歓迎しつつ、米中の不信は解きほぐす―これがラッド氏の提言の中核だ。そんなことができるのかとも思ったが、知「中」派としての自信にあふれる氏の弁舌によどみはない。米中両国政府がどう反応したいのかは「外交問題」として語らないが、豪州と同様、米中のはざまにいる日本にとっては興味の尽きない試みだ。
(編集委員:加藤洋一)


ラッド氏は中国通というより中国寄りではないかと思えるのだが・・・これが外交当事者の感覚なんでしょうか?
豪州の対中感情は良くないが、豪州政権はパンダ・ハガー(パンダを抱っこする人)と目されるだけに、日本人の感覚とは微妙に異なるようです。
さて懸案のTPPに対するラッド氏の意見は、完璧にアングロサクソンそのものであり、これは日本人として受け入れることはできませんね。

まあ、今のラット氏が市井の市民でありえるわけもなく、米国と利害共有者として見るのが正しいんでしょう。







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Last updated  2013.04.10 07:56:08 コメントを書く
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