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2014.06.28
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カテゴリ: アート
図書館で「藍布の源流(季刊銀花第126号)」という本を手にしたが・・・・
この本を借りたわけは、モン族の民俗衣装の写真が素晴らしかったこともあるが、レポーターの文章も良かったわけです。
特に「民族の矜持」という言葉には、しびれたのです。。
(さまよえる少数民族でもあるモン族には、思い入れが深いのです。大使の場合)

ということで、そのあたりを紹介します。

<藍の人、藍の技>
 庭一面を彩る藍草は、触ればパリパリと音を立てるほどに命みなぎらせ、収穫の季節を待ちわびる。初夏7月、刈り取られた藍草はみごとな染料に生まれ変わるのだ。藍布の源流を求めて、ヴェトナムの中国国境の町サ・パへ、そして中国の絞りの里大理へと、1千キロを駆け抜けた。

 たちこめた霧が薄れていく。深い霧の中に眠っていた山も田もゆっくりと目覚めの時を迎えていた。ハノイから車で8時間ほどでラオ・カイ、さらに峠を越えること1時間半、サ・パはホアン・リエン山脈の麓に位置する高原の町である。ムン・フォア川に沿って、モン族の村々が点々と見えてきた。春先の柔らかい陽光が谷を刻む田を次第に照らし、辺りを銀色の光で満たしていく。そろそろ野良仕事へ出かけていくところなのだろう、その光は畦道をたどる親子をも優しく包み込んでいった。

 彼らは皆藍をまとう。それも黒々と染めた藍を。蛇や虫、山棲みの民にとって、さまざまな毒牙から身を守るためにも、藍なくして生きていくことはできなかった。藍は天からの賜物だった。

 染めの季節にはまだ少し早いはずなのに、その家の庭先は一面の藍草でおおわれ、軒先に置かれた樽からは、もう藍のいい匂いがそこはかとなく漂っていた。
 ふつふつとたぎる藍の花、その一粒一粒が、緑みがかっていたり、褐色を帯びていたり…みんな違う色。藍草は、一葉一葉の内に実に豊かな色合いを潜ませていたのだ。

 1年がかりで糸を績み織り上げた大麻布を、母は大切そうに手に取るや、そっと藍をくぐらせていく。そのしぐさのたおやかさ。誰のものでもない、我が夫の、我が子の身を守る布への思いがにじむ。モン族の母たちはあたりまえのように藍を建て、染める。着古した衣も再度藍液に浸せば、新品同様の輝きを取り戻すのだった。家族の衣は母の手から生まれ、技は娘へとごく自然に伝えられていく。

(中略)
 織りためた布を染めるのは夏の仕事だ。初夏7月ごろ、根を残して刈り取った藍草を女たちは樽にぎっしり押し込み、水と灰汁、蒸留酒も少々加える。40度にも及ぶ日中の高温で藍は自然のままで醸され、三日もすればみごとな藍が建つのだった。
 藍と大麻布は実に相性がいい。十回ほど染めれば充分な濃さが得られるし、摩擦に弱くけば立ちやすい繊維もしゃっきりと張りが出て強さも増した。

モン族
サパの黒モン族 より

 表布の大麻は藍に染まりやすいから深い色に、裏の木綿は染まりにくいので水色、表裏の配色は心憎いばかりだ。女の衣装はキュロットスカートに脚伴、頭に筒状の帽子を頂く。男も女も子供も、民族の服をこんなに大事に着ているのは、アジアにあっても稀有なことだろう。

 かつて中国に暮らしていたモン族は、いくたびも戦渦に巻き込まれ、この地へ移り住むようになった。他民族に迎合せず、独自の文化を守り貫いてきた誇り高き人々。彼らにとって衣装は他民族と分かつしるしであり、民族の矜持そのものだから。



p18より
 鍬や鋤を担いで、元気に山道を下ってきた一団。ハノイからラオ・カイに向かう途中、そしてサ・パ周辺でも、笑顔の彼らに遭遇した。ザオ族もまた藍を愛する藍の民だ。藍とは一つの植物名ではなく、青の成分インディカンを含むものの総称というが、ここでは琉球藍と同じ仲間、キツネノマゴ科の藍がよく育つ。

 温暖で湿潤、紫外線が強いところと生育環境としては最適地だった。しかも、自然発酵建ての場合、温度が高いと発酵が進み茶色みを帯びてしまうし、逆に寒すぎても発色せずといささか気難しい。

 標高二千メートル、高地ゆえに高温になりすぎず、かといって寒すぎず、麗しい藍が得られた。藍ははろばろと広がる空の色、稲穂を渡る風の色、健やかな暮らしの色だ。

めくらまし

 袖は大麻、袖口は木綿・・・藍の濃淡を取り合わせた配色はみごとというほかはない。背は細密な織り模様。目の届かない背面だからこそ魔に見入られないように―めくらましだった。

<大麻と藍と> p30~31より
●ここは中国に接するヴェトナムの西北部、モン族の住むカット・カット村。共同の染め場ではなく、なんと、どの家にも必ず藍樽がある。藍は彼らの生活の必需品。藍の匂いを蛇や蛭は嫌い、近寄らない。山仕事、田畑仕事、彼らの家も山の中、虫よけの効果の高い藍は危険から身を守る生活の知恵である。服地は女性たちが自生の大麻を仕事の合間に、いえいえ、寸暇を惜しみ歩きながら糸を績み、農閑期に織ったものである。

●この大麻の特徴は繊維がごわごわとして弾力性がなく、摩擦に弱く、けば立ちやすい。このように衣服素材としてあまり適しているとはいえないが、藍染めとはたいへん相性がいい。木綿なら30回、芋麻なら20回染を繰り返さなくては濃い藍色を得られないのが、大麻では10回ほどで濃い藍色に染めることができる。摩擦に弱く、けば立っても、再度藍樽に浸けて染めれば、糊づけしたかのように張りが出て艶が出る。洗濯して色あせた服も藍樽に浸し、いつも艶のある服を身につけている。

<紀元前二千年の昔から> p52より
●藍はインディゴともいう。インディゴは世界の藍の総称ともなっている、インド原産のマメ科の潅木で、このインド藍は紀元前二千年ごろより染料とされ、紀元前後には地中海沿岸に輸出されたと『エリュトラー海案内記』に記されている。インド藍は、沈殿法により泥状にしたものを煮つめて固形にし、保存、運搬に適している。

●17世紀、ヨーロッパに藍がインドから染料として運ばれた時、人々はこれを鉱物だと思ったという。ヨーロッパで青く染めることができる染料は、藍の一種でウォードという染料があった。しかしそれは水色には染まるが濃紺に染めることは難しい。ところが、このインド藍は青を染めることができる成分のインディカンの含有量がたいへん多く、高い気温の中で発酵させ、さらにその藍を煮つめ、成分を凝縮して、固形物としている。そのためインド藍はとにかく少量で濃く染まり、澄んだ色で美しかった。

●さて、藍といったりインディゴ、ウォードといった言葉が出てきたり、わかりにくい。要するに、藍とは、青、藍色に染めることのできる植物染料であり、植物の中でも、葉に、青に染めることが可能な成分、インディカンを持ったものをいう。

<藍建ての発明> p53より
●"藍建て"とは、青色の色素インディカンは採取して時間がたつと水に不溶性になるため、藍草を発酵させることにより色素を水に可溶性にし、それに灰汁を加え、染められる液を作ること。"藍建て"には、沈殿法とスクモ法の2種類の方法がある。
 一つは、藍草を水に浸け発酵させ、藍色の成分を沈殿させる。この沈殿藍を乾燥させる代表がインド。ほかに、このような沈殿法により泥状のままで藍建てを行う所は、中国、ミャンマー、ラオス、ヴェトナム、インドネシア、沖縄、つまりアジアの広い地域で行われている。

●江戸時代には、スクモ法の発達により日本中に紺屋ができ、蛇や蛭などの虫よけとして、また胃薬として、子供のあせも知らずとして、衣服、手拭いなどに染められた。実用的で美しい藍染めは庶民の衣服の主な染料であった。

<模様に描かれた民族の物語> p54~55より
●"藍"はジャパン・ブルーといわれるように、また、ラフカディオ・ハーンが日本を「青い屋根の下の家も小さく、青い着物を着て笑っている人々も小さい」と書いているように、私たち日本人にはたいへんなじみ深く、それゆえ藍は日本のものと思いやすい。しかし、藍は、アジアに、世界中にある。

分布

●さて、世界の藍の種類を見てみると、日本で現在作られているタデ科の蓼藍。マメ科のインド藍。同じくマメ科の、メキシコ、グアテマラなどの中米諸国、インドネシア、アフリカ中部などに生育している、南蛮こまつなぎ。
 そして、沖縄、タイ、ミャンマー、中国の雲南、ヴェトナムなどに生育している、キツネノマゴ科の琉球藍。
 ヨーロッパ地域、モンゴル、中国北部には、アブラナ科のウォード、他にガガイモ科、キョウチクトウ科など、世界中で藍は身近な青の染料として愛されている。

●この藍染めは、織り上がった布を藍甕に浸けて青の生地に染める。しかし、後に、屋号や紋章を描く、染め抜くということを考えた。それには糊や蝋で防染する方法と、糸や紐で括り、絞りを行い防染する方法がある。
 日本の浴衣、法被、印半纏、風呂敷などは糊で伏せて紋章や模様を染める。糊を置いたところは藍に浸けても染まらず、素の生地のまま白い。また後世になると抜染という方法も考えられた。

●もう一つの防染、蝋防染、蝋で模様を描く方法は、インドネシアのバティックと、モン族、ザオ族などヴェトナムや中国の山岳部に住む少数民族の間で使われているロウケツ染め。モン族やザオ族は故郷を追われて移住しているため、衣服の模様には、昔住んでいた遠い故郷と勇敢であった祖先の話など、伝承説話が込められている。
 山路、垣根、虎の爪、城壁、豊かな自然とお花畑。悲しく美しい模様を白で描いている。美しい藍の色に白で描かれた模様は清らかで、それは見事である。




【藍布の源流(季刊銀花第126号)】
藍

季刊雑誌、文化出版局、2001年刊

<文化出版局サイトの目次>より
<特集>藍の人・藍の技 ヴェトナム、中国、日本
藍布の源流──ヴェトナム「ハノイ」から中国「大理」まで一千キロを走る  5
ヴェトナムへ藍の人に会いに行く 伊豆原月絵  30
もっと自由に──布人たちの現在 作・新道弘之、青戸柚美江、尾白直子  33
当代の紺屋さん繁盛記  48
世界の藍、アジアの藍、日本の藍  52

<大使寸評>
モン族の民俗衣装の写真が素晴らしかったが・・・
レポーターが発した「民族の矜持」という表現には、しびれたのです。。

bunka 藍布の源流(季刊銀花第126号)


ところで、映画『 グラントリノ 』にも、モン族と漢族が出てくるが・・・
この映画も、ある意味「民族の矜持」を描いていると、言えなくもないのです。 
グラントリノ





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Last updated  2014.06.30 07:07:15
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