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2014.06.30
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カテゴリ: 気になる本
図書館大好きの大使として、「本の歴史」を一度、系統的に見ておきたいと思い、この本を借りたわけです。
・・・というのは公式見解です。

さて、製本、印刷史上で最も重要な出来事とは何か?
この本では、それは「グーテンベルクの活版印刷術」ということになっています。

ということで、まず、グーテンベルクのあたりを紹介します。

<グーテンベルクの存在> p44~45より
 1997年末、アメリカの「ライフ」誌で、1001年から2000年までの1000年のなかで、人類にとってもっとも重要な出来事100選の調査結果が発表された。

 その一番に選ばれていたのが、聖書を印刷したヨハネス・グーテンベルグの活版印刷術であった。いわゆるルネサンスの三大発明をとってみても、ほかに火薬、羅針盤があり、その後も産業革命をおこした蒸気機関の発明、医学の進歩、飛行機やロケット開発、月面到達など大きな発明や出来事はたくさんある。それなのに活版印刷術が一番とは少々意外に思うが、しかし情報や知識を発展させ人類の文化文明に大きく貢献した印刷ならではの功績かと、その意義の深さに納得する。

 ヨハネス・グーテンベルグ。印刷の世界では有名な人物であるが、その生涯には不明な点が多く、実際にその名前が世に出たきっかけは、財産相続の問題や、結婚不履行をおこなった裁判記録などにその名が残っていたからである。

 1397年頃ドイツのマインツの貴族の家に生まれたグーテンベルクは、1430年頃にストラスブールにわたり、金細工師として生計をたてていた。はっきりとした記録はないが、このストラスブールに滞在していた時期には、すでに金属活版印刷術の開発に本格的に取り組んでいたようである。

 その後マインツに戻ったグーテンベルクは、1445年頃に金属活字による活版印刷術を完成させ、1455年頃には有名な『42行聖書』を印刷したと思われる。それまでヨーロッパでは、聖書など書物はすべて手で書き写す写本であったので、活版印刷術の出現はまさに大革命であった。それは、宗教改革の引き金になり、特権階級にのみ与えられていた読み書きを一般大衆に浸透させるなど、その成果は計り知れない。

 もともと金細工師であったグーテンベルクは、その技術を用いて、鉛と錫とアンチモンの三つの金属を混合することで融点が低く、そして印刷に耐えるだけの硬度があるという金属を開発し、その活字を鋳造するための母型と鋳造装置もつくりだした。
 またグーテンベルクは印刷が効率的に行えるために手動の印刷機をつくった。さらに、用紙にきれいに転写できるような油性のインキを、当時開発されて間もない油絵の具を利用してつくりだした。そして印刷用紙には、中国からヨーロッパに伝わった紙が用いられたのである。
(中略)
 グーテンベルクが活躍した時代は、デジタルによって新しいメディアが加速度的に浸透している現代に似ているのかもしれない。グーテンベルクの発明は、550年近く経た今日、デジタルメディアによってこれまでまったく体験したことのない大変革の前にさらされているのである。


木版印刷術の伝播は当時の日本にとって、パラダイムシフトとでもいうショックをもたらしてのではないか?
昨今では、そのパラダイムシフトを察知する能力がやや薄れてきているが・・・
当時の日本人は、ショックを契機として、模倣、吸収、改良に邁進したようです。

木版印刷術の伝来のあたりを紹介します。

<百万塔陀羅尼と日本の仏典> p30~31より
 中国で発明された木版印刷術は、朝鮮半島を経由して、遅くとも奈良時代までには日本へと伝わったが、ほぼ同じ時代、同じルートで、仏教も日本へと伝来している。
 東アジアにおける印刷は、仏教と密接な関係があり、お互いの存在なくして発展はありえなかったといえるだろう。それは、初期の印刷物のほとんどが仏書であったことが証明している。

 日本印刷史の先駆けとなり、その金字塔ともなったのが、百万塔陀羅尼の印刷である。これは、764年から770年にかけて孝謙太上天皇が、国家の安泰を願い、「無垢浄水大陀羅尼経」に説かれている造塔・写経の功徳を期待して、根本・相輪・六度・自心印の4種類の陀羅尼を百万枚印刷させて、百万基の木製小塔におさめ、法隆寺など畿内の十大寺に分置させたものである。

百万

 この国家的事業につては、『続日本記』に記されており、百万塔陀羅尼が、印刷された年代が記録に残る現存世界最古の印刷物であることがわかる。
 その後、皇室、公家、貴族の手によって、写経と並行する形で摺経が盛んにおこなわれたが、平安時代後期より仏書の印刷は、寺院を舞台におこなわれることとなった。それは、まさに日本の出版の原点でもあった。

 先鞭をつけたのが、春日版の開版である。春日版は、藤原氏の氏寺である奈良の興福寺において印刷され、氏神である春日社に奉納されたことから、この名がつけられた。現存最古の春日版は、寛治2年(1088)の刊記がある『成唯識論』であり、平安末期においては、法相宗の唯識論関係が寺院の学僧の教学書として印刷された。その後、鎌倉時代にいたると、「大般若経」、「法華経」、「華厳経」など数多くの経論が印刷され、他の寺院出版活動に影響を与えた。また春日版は、これまでの巻子本に、折本、粘葉装といった新様式が取り入れられており、製本の歴史においても画期となっている。

 春日版に触発される形で、東大寺や法隆寺など各寺院でも開版事業が始められたが、紀伊高野山においては、真言密教関係の仏典が開版された。いわゆる高野版である。
(中略)

 古代・中世の印刷・出版は、仏教関係のものが主役であった。しかし、江戸時代に民間出版が隆盛となり、古典文学をはじめ、さまざまなジャンルの書物が印刷されると、仏教関係の印刷は主役の座を奪われることとなった。




<デジタル化の衝撃> p122~123より
 2010年は電子書籍元年といわれた。ひとつのきっかけは、これまでデジタルコンテンツを専用に表示する専用端末の開発が進んだことであろう。この数年間に海外から相次いで開発された専用端末が日本に上陸してきた。またそれに対抗して国内のメーカーからも専用端末が開発されてきた。
(中略)

 しかしこれまで本から受けてきた情報、つまり本の内容はもちろんのこと、それ以外にも視覚から嗅覚、触覚など人間の持つ感覚に直接訴えてくる存在感は、どのようにして引き継ぐことができるのであろうか。また紙面を見るのではなく画面を見るというこれまでにない情報発信のあり方が、これから先何年で普通のこととなるのであろうか。

 まさに電子書籍の登場は、グーテンベルク以上の情報革命をもたらす原動力になる可能性を秘めている。それは同時に、情報を発信・配信する社会的システムも大きく変化し、それ以上に人間が失ってしまう感覚のほうが大きいのかもしれない。

電子書籍については興味はあるが、わりと懐疑的なんですね・・・
そのあたりについては 電子書籍の正体 にしたためています。



本

樺山紘一著、河出書房新社、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
石に刻み、木や葉に書くことから始まった。紙の発明、大印刷時代。デジタル化、本の未来形までを考える。
【目次】
1章 書物という仕組みは(本とはなんだろうー旅のはじめにあって/紙という舞台ーこの最強のメディア ほか)/2章 本が揺り籃から出る(アルファベットを書くー書体の工夫/漢字の書体 ほか)/3章 書物にみなぎる活気(グーテンベルクの存在/大印刷時代の展開 ほか)/4章 本の熟成した味わい(本は権利のかたまりー著者権と著作権/本の文明開化ー本木昌造と福沢諭吉 ほか)/5章 書物はどこへゆくか(神田神保町ーどっこいそれでも古本は生きている/デジタル化の衝撃 ほか)

<大使寸評>
本の歴史=知の歴史のような内容となっていて、画像も多くて充実した図説である。
デジタル化の潮流にさらされる製本業界であるが・・・
歴史上、長くアナログでやり過ごしてきた「紙の本」は、今後も生き残るような予感がするのです。

rakuten 図説 本の歴史


この本は図説と銘打っているとおり、カラー画像満載であり、1項目を2ページで説明するスタイルが必用充分で読みやすいのです。
なお、この本の「装丁」あたりの説明は、 造本装丁コンクールで『gallay』が受賞 で取り上げています。





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Last updated  2014.06.30 02:48:53
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