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2014.08.28
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『本は、これから』というタイトルの新書を借りたのだが・・・
池澤夏樹さん編集のこの本には、紙の本にこだわる本好きたちの共通のベクトルが感じられます。

ということで・・・
この本から気になるエッセイを三つ紹介します。

紙の本と電子書籍の棲み分けは、かくあるべしという高説があったけど、ええでぇ♪

<本の棲み分け:池内了> よりp4~8
 原稿を書き上げて編集者に渡した直後に、「これを紙の本と同時に電子出版してはどうでしょうか」と持ちかけられた。考えてもいなかった思いがけない申し出なので躊躇していたら、追いかけて「宇宙に関する本には沢山のきれいな天体写真を使うことになるので、電子版の方が素晴らしい画像が使えて迫力が出ますよ」と言われる。私は、「本の体裁が決まってから判断しましょう」と言ってお茶を濁さざるを得なかった。

 そもそも人間は有機物でできている。有機物とはカーボン(炭素)であり、本は紙に限るのである。その上、人間はアナログで物事を認識している。ある重要な事柄が何ページの何行目に書いてあったと覚えているのではなく、本の三分の二辺りのページの上から三分の一くらいのところにあったと記憶してページを繰り直すのが常であり、それを探し当てるのが楽しみなのである。ときには、線を引いたり片隅を折畳んだりして目印にし、その部分だけを操っては何度も読み返したりもする。そうすると妙に愛着が生まれて言葉が頭に染みこむというものである。

 だから私は、シリコン製の電子画面とは性が合わない。辞書とか百科辞典のような、その場限りの知識を得るには電子書籍は便利だが、考えたり想像したりしながらページを操り、後戻りしたり飛ばし読みしたりしてから元に戻ってくる、というような読み方には電子本は不都合この上ないからだ。何しろシリコンは石頭だから融通が利かないこと夥しく、インターネットをしていても癇癪を起こして放り出す始末である。だからカーボン人間はシリコンとは折り合えない、電子書籍なんて文化を貶めるもの、と考えてきたのだ。

 (中略)
 とすると、記録媒体としての電子書籍、自分の頭を鍛えるための紙の本という棲み分けができそうである。というより、それが必然のように思える。豆粒一つに百科事典全体が収まるような技術を利用しない手はないし、それこそが省資源となり文化の継承を確実なものとするからだ。辞書、辞典、読み捨て本、ノウハウ本などは電子書籍で十分その役を果たすだろう。それに対し、絵本、教科書、古典、哲学書などは紙の本であり続けるに違いない。むろん始めは両方で出版し、生き残ったものだけが紙の本として継続されることになると考えられる。過渡期に本の選別が進むのである。

◇池内了:1944年生。総合研究大学院大学教授。宇宙物理学。『擬似科学入門』他。

池内了という人、大使と同様に頑固なアナログ人間のようですね♪

読書に関する長田弘さんのくどいような、ゆっくりした、次の提言が、ええでぇ♪

<本を読む。ゆっくり読む。:長田弘> よりp56~57
 限られることのない時間をもつ本を、人生という限られた時間しかもっていないものが読む。そのことを読書というのであれば、読書というのは限られた時間しか持たない人にとって、どうあってもきわめて限りある行為にすぎません。

 すなわち、すべてを読むことなどできないということが、読むということのはじまっりにほかならないのが読書であり、一人一人にとっては、読む本、読んだ本というのは、読まない本、読まなかった本の膨大さによって、本という文化、読書という文化はつくられてきました。
 本がつくってきた世界は、言うなれば、山なす不読の本によってできた世界であると言っていいかもしれません。

 本のつくってきた世界の豊饒さというのは、読まれる本によってより、むしろ圧倒的に、読まれなかった数知れない本によって、つねに豊饒であり、豊饒でありえてきた世界だったからです。読まれない本、読まれなかった本なしに、本の世界はなかった。

 本という文化、読書という文化は、そのような逆説的な本質によって豊かにされてきた文化であり、そうした逆説的な本質が見失われれば、本という文化、読書という文化が人間の持つ限られた時間にもたらしてきた、或る豊かな感覚もまた確実に失われます。

 本という文化、読書という文化が人のもつ限られた時間にもたらしてきたのは、人のもつ限られた時間をことさらにゆっくり感覚させるような仕掛け、あるいは夢だったと言っても、まちがいではないでしょう。

◇長田弘:1939年生。詩人。『読書からはじまる』他。


次に最先端の電子書籍を見てみましょう。

<電子書籍のもつ可能性:長尾真> よりp161~163
 今日電子書籍についての議論が盛んである。将来はすべて電子書籍に移っていくとか、いや紙の本の出版は永久になくならない、物としての本、紙のもつ感触などは捨てがたいなど、いろんな議論が行われている。
 しかし書籍の実質は書かれている/表現されている内容、すなわちコンテンツにあるわけで、それを表出するための媒体が時代とともに変わっていくことは避けがたい。

 昔は竹簡、木簡、パピルス、粘土、そして羊皮紙が用いられたりしたが、紙が使われだし、これが世界的に広まって今日まで来ている。コンテンツを運ぶこういった媒体の歴史的な変化とともに、媒体にコンテンツを書き込む技術の進歩にも注目しなければならない。
 墨と筆、版木や活字によるプリントの時代を経て、写真製版の技術などによって、表現されるコンテンツが文字や図、表からカラーの絵、写真というように豊かになってきた。
 こういった流れから見ると、電子書籍は紙の世界のコンテンツのほかに動画像、映像、音声、音楽など、紙の世界では表現できない新しいコンテンツが扱えるわけで、書籍までがマルチメディア情報の時代になってきたといえよう。つまり新しい電子読書端末というツールのおかげで、表現したいコンテンツの世界が質的に一挙に拡大したのである。

 現在出て来つつある電子読書端末はいくつかのカテゴリーに分類できるだろう。その第一は紙の書籍のページと同じものを表示する端末で、KindleやReaderなどである。これは第一世代の端末装置と言ってよかろう。
 これに対して一歩進んだものは、表示文字の大きさを自由に変えたり、動画像や映像、音声、音楽など、マルチメディアを組み込んだコンテンツが扱えるもので、これは第二世代の端末装置である。今注目されているiPadはこのカテゴリーのものである。

 端末装置としてこれで終わりかというとそうではない。次の段階のものは表示画面に対して読者が働きかける機能をそなえたもので、これを第三世代の端末装置と呼ぶことにしよう。
 Kindleではキーボードから読者が働きかけることができるし、iPadでは指でページめくりをしたり、アイコンを選択して種々の機能を楽しむことができるなど、現在市販の端末装置でもある程度の働きかけの機能はもっている。しかし読んでいる部分にペンで下線を引いたり、コメントを欄外に記入したり、表示画面上で作文したり、図を描いたりするといった本格的な働きかけの機能をもったものはまだ作られていない。
 このようなインタラクティブなシステムに関する研究はいろいろ進んでいるから、そのうちにこれらの機能も電子読書端末に組み込まれることになるだろう。

 このように、表現したいコンテンツの多様性と、それを表現するために使われる装置の機能との間には密接な関係がある。したがって、紙の上に表現していたものを電子機器の上で同じように表現するという範囲で電子書籍を考えていては物事の本質を見失ってしまうだろう。グーテンベルグの印刷術はコンテンツを紙という媒体に移す技術の革命であったが、電子書籍の場合は著作物というものの内容・本質を根本的に変革する技術が出て来たということで大きな革命なのである。

 これからの著作者はそれに応じてマルチメディアを十分に駆使し、読者とやりとりできる機能をもった作品を作る能力が要求されることになる。多くの場合、一人の人ではこの広い領域の技術をうまく使いこなすことが出来ないため、著者は映像や音、あるいはソフトウェアの技術を専門とする人達との共同作業が必要となる時代が来る。すでにまんが、アニメ、あるいはカラフルな雑誌などではこのような共同作業の著作が行われている。

◇長尾真:1936年生。国立国会図書館長。情報科学。

 コンテンツが大事なことは言うまでもないが、マルチメディアの電子書籍か・・・




本

池澤夏樹編、岩波書店、2010年刊

<「BOOK」データベース>より
グーテンベルク革命から五世紀。電子の端末が膨大なコンテンツから美しい「ページ」を開くこの時代、あなたにとって「本」とはいったい何か。それはいかに変貌するのか。書店・古書店・図書館・取次・装丁・編集、そして練達の書き手・読み手の位置から、鋭いアンテナの持ち主たちが応える―本の過去と未来を俯瞰する三七のエッセイ。

<大使寸評>
本を愛してやまない著名人たちのエッセイ集であるが、電子書籍時代においても紙の本にこだわる共通のベクトルが感じられます。
このあたりの人選が、編者の特権なんだろうけど、ええでぇ♪

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Last updated  2014.08.28 10:47:06
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