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2014.10.12
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カテゴリ: 経済
 ハーバード大学のアンドルー・ゴードン教授がインタビューで「平等も格差も実態以上に意識、悲観の広がりを憂慮」と説いているので、紹介します。
悲惨なアメリカから見ればそうなんでしょうけど、「悲観するな」と言われてもねぇ。

アンドルー・ゴードン
(アンドルー・ゴードン教授へのインタビューを10/11デジタル朝日から転記しました)



Q:中流社会というのは、戦後の産物なのでしょうか。
A:『一億総中流』といわれる力強い中間階級が現れたことは、戦後の特徴です。しかし、中流といわれるライフスタイルは、1910年代から始まっています。都会ではサラリーマンが増え、日曜日にデパートに出かけることが流行し始めました。そうした生活を送る中間階級は、だんだんと広がっていきました。30年代には、後の高度成長を予想させる経済成長もみられます。しかし、『自分が中流だ』と考える人たちの割合は当時、はるかに小さかった。

Q:戦前はどういう社会だったのですか。
A: 戦前の日本には、華族(貴族)がいて、財閥があり、農村には地主がいました。ヒエラルキーのある格差の大きい社会でした。 ブルーカラーである職工の賃金は日給で、数日分のボーナスしかもらわない。会社員などのホワイトカラーは月給で、ボーナスも数カ月分。両者は工場の入り口さえも違いました。こういう差別は、戦後はなくなりました。いまでも役職などによるヒエラルキーはありますが、それは絶対的なものではありません。これは非常に大きな社会的変化です。

 経済が成長した50年代から60年代、そして70年代初めにかけて、中流意識がどんどん強まっていきます。すべての人ということではありませんが、調査によっては、9割の人が『中流』と答えています。大多数の日本人が、自分は中流である、あるいは、中流になれると思っていた。現実の日本社会には、高度成長の時代だって、まだ貧富の差は大きかったのです。たとえば、大企業と中小零細企業では、倒産率が違う。都市と農村の間には、道路などの社会資本ではまだ大きな格差があった。それでも人々は、一生懸命働きさえすれば、中流の仲間入りができると信じました。

Q:何がその中流意識を支えたのでしょう。
A:ひとつには、教育における能力主義がうまく機能していると思われていたからでしょう。これは、60年代の統計ですが、国立大学入学者に占める最も貧しい所得層の学生の比率は、全人口に占めるこの最低所得層の比率とまったく変わらなかった。 高等教育へのアクセスが、完全な平等に近い状況だったのです。公立学校の評価がまだ高かった時代です。どんな家庭の子にも道は開かれている。努力さえすれば、良い学校に入り、良い会社に就職ができると信じることができたのです。

Q:そういう信仰は、もはやないですね。
A:いい学校に行くには塾に行かせねばなりません。親が裕福な方が有利です。所得格差が教育格差につながっています。

    ■     ■
Q:中流社会は崩れてしまったのでしょうか。格差は広がるばかりですか。
A:意識の上では、多くの日本人がそう感じています。しかし、実態は必ずしも極端に格差が広がっているわけではありません。日本でも貧困層は増えていますが、格差という点では、世界的に見れば小さい方です。 日本で正規雇用されている労働者の数は、80年代に約3400万人ですが、この数字はいまもあまり変わりません。非正規の数は、その間に約600万人から約2千万人に増えました。その原因は、より多くの高齢者や女性が非正規で働くようになったこと、自営業と家族労働に従事していた人たちが雇用者として働き始めたことにあります。ですから、正規を直接犠牲にして非正規が増えているわけではありません。

 格差の問題には、高齢化の要素もあります。高齢者は所得はありませんが、貯蓄などがあります。所得の分析だけでは、格差の実態を把握できないのです。

Q:国際的にはどうなのですか。
A:世界的に注目されているフランスの経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本論』という研究があります。これによると、20世紀初頭、欧米先進国も日本も、少数の富裕階級が多くの富を持つ格差の大きい社会でした。2度の世界大戦や大恐慌で資産が喪失したことで、格差が収縮しましたが、これは例外時期であり、80年代から再び格差が拡大しているというのです。ただし英米に比べると、独仏など欧州大陸の国と日本では、格差拡大の幅は大きくない。挑発的な議論ですが、私の研究を補強するところもありますし、グローバルな文脈で日本を考えることを可能にしてくれます。

Q:さきほどの話では、高度成長期には、日本人の「中流」意識は実態よりも強かった。今度は、格差を実態より大きく感じているということですが、それはなぜですか。
A:中国人や米国人よりも自分たちのほうが格差が小さいと知っても、なぐさめにはなりません。 外国との比較ではなく、みんな自分の親の世代と比べます。雇用の安定という問題もあります。様々な要因があって、経済データと人々の意識が対応していない。なぜなのか。今後研究していきたいと考えています。

 意識でいえば、日本経済の実態にしても、日本人の見方は悲観的すぎると思います。中国に国内総生産(GDP)では抜かれましたが、中国の人口は日本の10倍。1人当たりに直すと、日本の経済力の方がまだまだ、はるかに上です。他の先進国と比較しても、1人当たりの成長率は悪い数字ではありません。

    ■     ■
Q:しかし、実態がそうでも、意識の問題は大きいのでは。かつて戦後日本は「成功物語」として語られました。いまは、戦後は失敗だったという見方も出ています。
A:日本人の多くが戦後を失敗だと認識しているとは思いません。たしかに、これまでうまくいっていた戦後システムが今日ではうまく機能していない、という感覚はあるでしょう。でも、現在の政治経済システムが機能していないのは、世界共通の問題です。

 社会の中で楽観論が失われ、悲観主義がひろがるのは、憂慮すべきことです。予言の自己成就という言葉がありますが、そういう悲観は、若い人から挑戦する気概を失わせ、内向きにしてしまいます。また、成功した人々へのねたみから、そういう人々への反感を強めたり、あるいは外国人を攻撃する排外的な言動につながったりする危険があります。

Q:どうしたらいいでしょうか。
A: 発想を変える必要があるでしょう。日本が直面しているのは、低成長の時代に、人口減少、少子高齢化、さらに環境へ配慮するという制約のもとで、どうやって社会を維持するのかという問いです。 労働人口の減少に伴う生産力の低下をどう補うのか。原発のあり方も含めてエネルギー不足にどう対処するのか。低成長時代に生活様式をどう改めるのか。課題はたくさんあります。

 強い経済成長が期待できないときに、政治と社会の安定を保つのは容易なことではありません。しかし、世界全体として高い成長は望めないのです。過去には、年率3%から5%の成長はふつうでした。しかし、これから、1%の成長率のもとで、どうやって、品位のある、よい社会を維持するかを考えねばなりません。日本だけの課題ではありません。リーマン・ショック以降に一層明確になりましたが、低成長も少子高齢化も環境の制約も、先進国のすべてが、そしてやがては新興国もみな直面する課題なのです。

Q:日本はフロントランナーというわけですか。
A: たまたま日本が最初にその壁にぶつかったわけです。しかし、この課題を克服できれば、新しい意味で日本はまたリーダーになれるのではないでしょうか。高齢者へのケア、資源の効率的利用、省エネ技術など、日本が、世界に先駆けて取り組んできた分野があります。その経験を活用して、新しいモデルを示してほしい。

 これは、経済成長を終えた成熟社会の話です。日本にとって、『ポスト戦後(戦後の後)』をどう築くかという挑戦ではないでしょうか。

     *
Andrew Gordon:米ハーバード大学教授 1952年生まれ。著書に「日本の200年 徳川時代から現代まで」「ミシンと日本の近代 消費者の創出」など。

<取材を終えて>
 米国の日本を見るまなざしは、時期によって揺れ動く。日本が経済大国へと躍進した70年代末から80年代にかけては、米国が見習うべきモデルとして「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とたたえられた。
 21世紀になって中国が急速に台頭すると、こんどは「ジャパン・パッシング」(日本軽視)という言葉がよく使われるようになった。
 そういう中で、 ゴードン教授は労使関係を中心に、実証的な社会経済史の研究を積み重ねてきた。資料を探し、関係者にインタビューし、現場に足を運ぶ。日本は「戦後の後」のビジョンを切り開くべきだという提言も、そうした長年の観察に裏打ちされている。 (聞き手・三浦俊章)

ゴードン教授が我らが団塊世代過ごした約70年間の社会経済史を総括してくれているわけです。
渦中にあれば気づかないことを、外から見ると、こうなるのか。

しかし、これだけのスパンで俯瞰するなら、本多さんの以下総括も納得がいきますね。
<政治体制にしても、戦前のドイツ型や日本型が破産したことはもとろんとして、戦後現在までにわかったことは、アメリカ合州国型の「民主主義」とソ連型の「社会主義」が、いずれも「自称民主主義」とか「自称社会主義」にすぎず、一言でいえばニセモノだったということでしょう。『貧困23集』本多勝一>

世代間格差や教育格差が日本での悲観論を生んでいるけど、アベノミクスはこのあたりについては無策ですね。


(戦後70年へ)ポスト1億総中流 アンドルー・ゴードン2014.10.11







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Last updated  2014.10.15 06:52:52
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