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2014.11.11
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カテゴリ: 政治
 米政治学者のフランシス・フクヤマ氏がインタビューで「行き詰る米政治、劇的に進む分極化、リーダーが見えぬ」と説いているので、紹介します。
フクヤマ
(フクヤマ氏へのインタビューを11/8デジタル朝日から転記しました)




Q:中間選挙の結果によって、米国の政治は変わりますか。
A:行き詰まっている状況は変わらないでしょう。共和党が議会の主導権を握っても、法案に大統領が拒否権を発動した場合、それを再び覆すには、上下両院それぞれ3分の2以上の再議決が必要です。

 米国の政治システムは、少数政党がよく組織されていれば、過半数を占める政党の行動でさえ、たやすく阻止できるようになっています。共和党がたとえ大統領と両院をおさえても、なお、大きな法案を通すことは難しいのです。『拒否権政治』といっていい状態です。

Q:議会はなぜ機能不全に陥っているのですか。
A: 米国政治の大問題の一つは、政治家に選挙で献金したり、ロビー活動をしたりする利益団体の影響力が増していること。利益団体はすさまじい勢いで増えている。ロビイストのいる会社の数は、1971年に175だったのが、2009年には1万3700にもなっています。

 過去20年、政治の分極化も劇的に進みました。20世紀には、共和党と民主党には、中道の部分でかなりの重なりがありました。しかし今はそれがない。08年以降、予算も可決できず、移民制度改革や銃規制といった大きな法改正は、議会を通りません。多くの米国人は中道的な立場を支持していますが、組織化されていない。一方で、政党や活動家は、とても硬直化し、イデオロギー的に結束しています。

Q:米国の覇権や文明は、このまま衰退していくのでしょうか。
A:米国の文明そのものが衰退しているとは全く思っていません。米国の民間部門は強力で、革新的です。問題は政府部門にあります。財政の持続性や、人口の高齢化などの問題に直面している。適切なタイミングで政治的に解決できなければ、米国の地位や力を大きく弱めてしまう。

Q:オバマ大統領を、どう評価しますか。
A: とても失望しています。08年に当選したときには、カリスマ性のあるリーダーのように思われました。しかし、国を治めるための協力態勢を築くという点において、極めて無力な大統領です。彼は、人と個人的な関係を結ぶよりも、大きなスタジアムで2万人の前で演説するほうがよほど得意な人物です。

 もっと深刻なのは、オバマ氏が内政に集中し、国外の問題についてあまり関心を持たず、大きな問題にかかわろうとしなかったことです。

Q:米国は「イスラム国」に対する空爆を始めました。
A:アフガニスタンとイラク戦争で多くの米国人は疲れてしまった。オバマ氏は、もう戦争に巻き込まれたくないという国民感情に過剰に反応し、少しの努力さえすれば良い結果を生むことができたのに、それを避けました。中東に関与する方向にシフトしたのは良いと思います。ただ、私は『イスラム国』よりも、クリミアを併合したロシア、南シナ海や東シナ海などで攻勢を強める中国を懸念しています。地政学的に大きな脅威だと思います。
私は今も、民主主義国家同士は戦争をしない傾向にあると考えています。しかし、世界には、ロシアや中国という強力な非民主主義国家が存在します。今年は、それらの専制国家が領土拡大の野心を示した大きな変化の年であり、地政学がものを言った19世紀や20世紀に逆戻りしてしまったかのようです。

    ■     ■
Q:ロシアや中国にどう対応すべきなのでしょう。
A:抑止策と関与策の両方が必要ですが、国によって対処法は異なります。ロシアには、より大きな抑止力が必要でしょう。中国は、もっと複雑です。さまざまな面で関与を深めることは可能です。中国にとって、アジアで軍事紛争をしないことが国益にかなうからです。ただ同時に、抑止力も重要な要素です。

Q:前著「政治の起源」で、中国にはシステムの弱さがあると指摘していますね。
A: 中国は、世界で最も早く『近代国家』を成立させました。官僚制があって中央集権的で、能力本位で、さほど縁故主義ではない。中国はそうした制度をつくるのが得意です。ただ、そこには、『法の支配』や『民衆に対しての説明責任』という仕組みがない。この二つは、国家を縛り、国家権力が公共的な目的で使われるよう担保するものです。

 権力行使に制度的な抑制がきかないため、中国に悪い皇帝(トップ)が出たときには、対処する方法がない。これは歴史的に中国が抱えている問題で、未解決なままです。

Q:著書「歴史の終わり」では、自由民主主義が最後に生き残るという主張をされました。中国はいつ民主主義に変わるのでしょうか。
A:長期的にみれば、現在の形の中国が持続していくのは難しいでしょう。ただ、いつ民主化するか予測は困難で、遠い先かもしれません。

Q:日中関係をどうみますか。
A: とても心配しています。日本と中国の指導者が、軍事的な紛争を意図的に求めているとは思いません。しかし、戦争は意図的な挑発がなくても始まるケースが多々あります。
 靖国神社の参拝やその他の歴史問題の是非には立ち入りませんが、中国からの脅威が高まっている中で、日本はできるだけ多くの友人を持ったほうがいい。日本が歴史認識を修正しようとすればするほど、友人は少なくなってしまいます。

    ■     ■
Q:冷戦の終結は、自由民主主義の勝利と思われましたが、専制国家はなくなりません。米国は衰退し、世界はリーダーが存在しない「Gゼロ」になっていくのでしょうか。
A:私が強調したいのは、民主主義国家には、自ら問題を修正する力があるということです。なぜなら(専制国家と違って)民衆からの圧力に応えなければならないからです。しかし、自動的に修正されるわけではない。問題に真剣に向き合い、努力をしなければなりません。

 『Gゼロ』の世界が不可避だとは思いません。米国は、今もかなり強いパワーを持っているし、世界のあらゆる地域で役割を果たしていくと思います。イラク戦争後に受動的になりすぎていたのを乗り越える必要があります。これはベトナム戦争後にも起きたことですが、時がたつにつれ、必要に応じて世界に関与していくことになるでしょう。

Q:その意味でも、米国が改革をすることが大事だと。
A:米国で起きることは、世界的にみて重要です。なぜなら、多くの人は、それをモデルと見るからです。 米国のシステムが機能しないとなると、中国などの専制国家のモデルの魅力が高まります。アフリカや他の途上国がまねをするようになると、とても危険だと思います。

 米国は大恐慌や第2次世界大戦、1970年代といった厳しい時代に、大統領がリーダーシップを発揮し、問題に対処する合意もできました。 米国の民主主義は自らを修正してきた歴史があるわけですが、今後もそうなる保証はありません。米国の亀裂は深すぎて、立て直しができる人が見あたりません。

    ■     ■
Q:リーダーが勇気を持って取り組めば、明るい未来が来ますか。
A:そう思います。リーダーだけでなく、合意にむけて進んで協力するフォロワーも必要です。

Q:いつ、変化が起きうるのでしょうか。
A:オバマ氏の残りの2年は期待できないでしょう。2年後、ヒラリー・クリントン大統領が誕生しても、議会の膠着状態は続きそうです。今後6年は、大きな改革はできないように思います。

 改革には、次の二つのうちの一つが必要でしょう。一つは何らかの大きな外部的なショック、たとえば戦争や経済危機によって変化が起きるケース。 もう一つはもっと緩やかな動きですが、人口動態が変化し、何度も選挙を経る中で民主党が実権を握り、改革が実現するケースです。共和党が改革に携わるには、今よりはるかに穏健で、妥協もいとわない、かつてのような共和党に戻る必要があるでしょう。

    *
フランシス・フクヤマ:政治学者 1952年米国生まれ。ハーバード大で博士号。スタンフォード大フリーマン・スポグリ国際研究所上級研究員。

<取材を終えて>
 先月、フクヤマ氏のワシントン出張の折にインタビューをした。

 目前の中間選挙には、さほど関心を払っていない印象を受けた。話しているうちに、今後6年は米国の政治はあまり変わらないと予測しているからだとわかった。

 日系2世の父と、米国に留学していた日本人の母との間に生まれた。母方の祖父は京都帝国大学経済学部教授を務めた河田嗣郎。河田は河上肇と懇意だったという。フクヤマ氏自身は日本語を話さないが、日本には関心を持ち続けている。(アメリカ総局長・山脇岳志)

アメリカは、今後6年は大きな改革はできないのか・・・
それにしても、中国に対する冷厳な洞察がすごいですね。

米国と世界のこれから フランシス・フクヤマ2014.11.8






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Last updated  2014.11.11 10:14:51
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