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2014.12.03
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カテゴリ: アート
図書館で『赤瀬川原平・現代赤瀬川考』というムック本を手にしたが・・・

(10月26日に逝去しています)

赤瀬川さんは模型千円札事件を起こしたりいろいろあったが、晩年に「老人力」という概念をぶちあげたことが大きいと思うわけです。



赤瀬川

ムック、河出書房新社、2014年刊

<商品の説明>より
希代の美術家、作家である赤瀬川原平を総特集。発掘対談、単行本未収録作のほか、
松田哲夫×南伸坊×山下裕二の鼎談、四方田犬彦、林丈二、夏石鈴子、足立正生、高野慎三etc.

<大使寸評>
「KAWADE夢ムック」と銘打った追悼企画本なんだが、素早い動きやでぇ♪
赤瀬川さんは模型千円札事件を起こしたりいろいろあったが、晩年に「老人力」という概念をぶちあげたことが大きいと思うわけです。
とにかく、この概念はイグノーベル賞級のオリジナリティだと、大使は高く評価するのです♪

つまり、観念的な意味で、もっとも破壊力を持った前衛的なイリュージョンだったと思うのです。
惜しい人を亡くしたが・・・それも世の常、人生なんだろう。合掌。

Amazon 赤瀬川原平・現代赤瀬川考


生前の赤瀬川さんと親交の深かったお三方の座談会を見てみましょう。

<【特別座談会】松田哲夫×南伸坊×山下裕二──赤瀬川さんの謎>
南:『ガロ』もいろいろな人を輩出している。僕が入った時もすでにいろんなスター作家がいた。

山下:みうらじゅんさんがいたのは、南さんの時代ですか?

南:みうらさんは渡辺和博の時代ですね。

山下:みうらじゅんはナベさんにすごい意地悪されたと書いていましたね。「あんたのとこに寿司百人前、頼んどいたよ」って。

南:アハハ。シャレがキツイ。鶴見俊輔さんが「ガロ学派」という言い方をされてますね。

松田:鶴見さんに言わせると、日本で学派、エコールと言えるものは、今西錦司学派とガロ学派だけだそうです。

山下:すごい(笑)。いいなあ、ガロ学派。

松田:鶴見さんの『思想の科学』は民間学としてかなり大きいものだと思いますが、鶴見さんは謙遜して、自分よりも今西さんとガロだと言ったんです。

南:考えたみたら、ガロ学派すごいんだよね。

松田:白土三平から水木しげる、つげ義春、佐々木マキ、林静一、糸井重里、荒木経惟、蛭子能収、みうらじゅんまで。

南:不思議ですね。やはり三平さんがつげさんと水木さんを呼び寄せて、そこに滝田ゆうさんが来たり、いろんな人たちが集まってくる。

松田:杉浦日向子さんも来たりね。小学館が『ビッグコミック』をやる前に、『ガロ』を買おうとしたんですよ。そこで長井勝一さんが『ガロ』を売らなかったのは、要するに小学館は白土、水木、つげだけで『ビッグコミック』を作りたかった。あとはいらない、という意向。それだったらこれから伸びる若い人たちのためにも『ガロ』を残そうという考えがあった。あの時買われていたら、みうらじゅんや杉浦日向子とかは、ああいう形では出てこなかったと思う。

南:赤瀬川さんの「お座敷」でのデビューは、『ガロ』に新人としてちゃんと応募して、入選しているんだよね。あの「お座敷」は、漫画としてもいろんな新しいことをやっている。あれはすごく刺激的でしたね。

松田:その後の、「おざ式」はどうですか。

南:あれはあれで、あの頃の赤瀬川さんらしい漫画でいいですよね。「お座敷」は、芸術家が漫画という表現に触発されていろんなことをやったっていう、その面白さがいいんですよ。
松田:イラストレーターとか芸術家が漫画を描いても、あそこまではやらない。赤瀬川さんなりにそれまでペン画をずっと描いてきて、その積み重ねがあった。そのうえで、つげさん的なものを自分なりに描いてみて、「お座敷」ができた。

南:つげさんのファンになると、つげさん的な漫画を描こうとしちゃう。でも赤瀬川さんの漫画は、読売アンデパンダンやハイレッド・センターでやっていたのと、同じ芯がある。思えば赤瀬川さん一派って、青林堂と美学校に吹き溜まってるね。

山下:神保町の磁力みたいなものが、きっとあるんですね。

松田:僕にとっては、小川町にあった筑摩書房と、猿楽町の青林堂と、神保町の美学校というトライアングル。だいたい70年代前半くらいまで、そこをウロウロしていたことで、のちの人生がほとんど決まりました。

山下:お二人は、60年代の終わりからずっと赤瀬川さんとの密接な付き合いが続いているでしょう。

松田:そうですね。でも濃淡はあります。美学校でも、僕がだんだん筑摩の仕事で忙しくなっていって、赤瀬川さんの助手みたいな役割が南に移っていった。
 トマソン観測センターを作るようになった頃は、僕はほとんど美学校へは行っていないんです。だから、赤瀬川さんはまだそんなことやっているのかと、ちょっと遠目で見ていました。
 『写真時代』の連載とかも、ふーんという感じで見ていたんだけど、宮武外骨のリバイバルや、路上観察などを通じて、また濃く付き合うようになりました。最初の頃みたいに、しょっちゅう会うという感じではなかったけれども。

南:松田くんは会社で重要な位置についちゃったからね。僕はずっと同じ感じで付き合ってて、ロイヤル天文同好会とか、ステレオオタク学会とかその都度一緒にやった。
 その時赤瀬川さんが興味を持ったものが団体になるんだよ。ロイヤル天文同好会は、田中ちひろが会長になって、『ゴムの惑星』という機関紙が四号くらい出た。ステレオオタク学会は高杉弾が会長で、のちに小学館の編集者になった徳山雅記くんがランダムドットステログラムの流行を作り出した。
 赤瀬川さんてけっこう流行の元になっているんだよね。ロイヤル天文同好会はぜんぜん流行しなかったけど(笑)。

松田:路上観察学会では、「赤瀬川化の法則」というのがあった。路上観察は物件主義で、表現しようとするものはあえて排除していたんです。すると赤瀬川さんは、自分の撮りたい写真というのがあって撮ってくるんだけど、写真を見せながら、「ちょっと芸術だけどね」とか、「ちょっと風情があったからね」とか言い訳をする。すると僕らも、「これは芸術だ」、「風情だ」と言って切り捨てる。
 ところがだんだん面白い物件がなくなってくると、「赤瀬川さんだったらこういうのを撮るよね」と言って、皆が撮り始める。それまで切り捨ててきたものにいつのまにか取り込まれて、「赤瀬川化」してしまう。そうすると、「写真がうまくなったね」と褒められるんだよね(笑)。

<ひとり前衛の果てまで行った人>
松田:山下さんは、赤瀬川原平という芸術家についてどう思いますか?赤瀬川さん自身がよく言っていたけど、千円札で前衛の果てまで行って、もうここから先がないという辛い思いをしたそうです。
 千円札を作った時は、裁判や事件を起こそうと思ってやったわけではないけど、裁判をきっかけに次のステージに行くことができた。その時の、果てまで行ったという感覚は、その後のトマソンや小説、老人力、日本美術応援団など、いろんなことのスタートになっているような気がします。

 これはある種の転向ですが、権力によって強制されたものではなく、何かを見てしまったということによる自覚的な変化でえす。当時、世界的にも前衛芸術があって、読売アンデパンダンでもたくさんの人が出品していたわけだけれども、なぜ赤瀬川さんだけが果てまで行けたのか。それは美術史的に、どういった意味を持っているのか。

山下:戦後のいわゆる前衛の人たちの中でも、果てまで行く覚悟を持っていた人は、じつはそんなにいなかったんじゃないかと思います。

南:逆瀬川さんは千円札を作った時点でものすごいところまで行ってるよね。でも、本人はそれほど素晴らしい作品だというふうには思っていないんだよね。

松田:その前にはチューブと真空管を使った「ヴァギナのシーツ」がある。他のアーティストだったら、あれで20年、30年と純化していけばいい。

南:読売アンデパンダンの前衛の極北に赤瀬川さんがいた。反芸術とか非芸術とか、赤瀬川さんがいちばん律儀に、当時の若い芸術家たちの先頭に行っちゃってたんじゃないかな。

山下:同世代の他の前衛芸術家と呼ばれている人に対して、赤瀬川さんはけっこう冷ややかに見ているところがあったと思う。僕が覚えているのは、荒川修作のことをあまりこころよく思っていない節があって、「荒川は世界的芸術家になりたいだけなんだよ」と、ぼそっと一言だけ言ったのを、すごくよく覚えています。

松田:荒川さんは、高校の同級生ですよね。

南:いまの現代芸術ってその荒川修作のあとをくっついていった人たちがやってるんだろうね。結局、作品が1億円で売れましたみたいな。当時はニューヨークに行くのがカッコよくて、皆で羽田に行ったとか、書いているじゃない?
 赤瀬川さんは、自分のやっていることとニューヨークへ行くことが関係あるのかどうかについては考えてたと思う。成功する可能性も、なかったわけではないけど、やっているうちに、全然違うところに来ちゃった。

山下:ニューヨークへ行って一旗揚げて、というスタイルは、どうしようもなく続いてしまっている。もういいかげんにやめてくれ、と僕なんかは思います。

松田:同じ梱包でも、赤瀬川さんとクリストでは全然違いますよね。

南:クリストはいくらでも続けられるんですよ。でも赤瀬川さんはあの時点で梱包はもうやりきっちゃった。一番似ているのは、デュシャンだよね。

松田:表現の果てまで行った感覚という点では、赤瀬川さんはのちの千利休の仕事で、利休と自分との同質性を確認したんだと思う。勅使河原宏監督がいきなり赤瀬川さんに『利休』の脚本を書かせたのは、すごい慧眼ですよね。赤瀬川さんは利休のことを全然知らなくて、それは思いもよらない依頼だったから、すぐに『漫画日本の歴史』を買いに行ったそうです(笑)。

 日本の前衛は、利休から始まるわけじゃないですか。僕は二人にすごく近いものを感じている。日本の歴史で芸術や表現の果てまで行った人というのは、利休くらいですよ。権力との対峙の仕方にも共通性があるし、ひとつのパターンを確立してずっと同じことをやっているのではなく、どんどん違うことをやるというのもそう。
 利休とデュシャンにも近いものがある。実は20世紀の前衛芸術がやろうとしたことを、利休は全部やっています。インスタレーションでもあり、環境芸術でもあり、ただの真っ黒い茶碗にものすごい金額をつけることとか、極度のコンセプチュアルアートでもある。それから身体表現、つまりパフォーマンスもやる。ありとあらゆる要素が利休のなかにはあって、それは赤瀬川さんと通じるすごさだなと、僕はつくづく思います。







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Last updated  2014.12.03 00:22:29
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