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2015.05.13
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『海游録 朝鮮通信使の日本紀行』という本を手にしたとき・・・
嫌韓ムードが澎湃と立ち昇るなか、この種の友好的な本を読むのも一興かと思ったわけでおます。
地図


【海游録 朝鮮通信使の日本紀行】
朝鮮

申維翰 (著), 姜在彦 (翻訳) 、平凡社、1974年刊

<カスタマーレビュー>より
江戸幕府・徳川政権下の享保4年(1719年)、9回目の朝鮮通信使に製述官として随行したのが申維翰だ。江戸に向かう道のりで見聞した当時の日本の風土なども詳述している。

 最初に立ち寄るのは対馬。そこで、対馬藩に対朝鮮の交渉役として抱えられていた、雨森芳洲と出会う。彼はそのまま江戸まで同行した。

 雨森さんには、きっと心のどこかで、辺地・対馬藩に勤めていることへの、「役不足」感が、鬱積していたのだろうか。そのことを申は見抜く。 さらに、役目を終えて、芳洲はが別れを告げる場で涙する。その涙が、自分との別離のためではないことを看破している。

<読む前の大使寸評>
旅程に組まれた各地に、異文化のカルチャーショックを与えた朝鮮通信使である。
通信使から見た当時の日本の光景や日本人が興味深いのです。

Amazon 海游録 朝鮮通信使の日本紀行


この本で鞆浦、牛窓あたりの船旅を見てみます。
p97~100
<鞆浦と牛窓>
 28日。黎明に順風を得て帆を張り、出発した。波頭また激して、蓬々の響きは雲水と相呑み、相吐く。■窓の下で膝をのばすと、身境やや爽やかなるを覚える。

 俄かに左辺の山口を見ると、白い姫垣が海に臨み、清く輝いていてなまめかしい。人家にして眼に入るもの千余戸、それが数里にもわたってつづく。望めば四、五の物見櫓が松橘林の外に■出し、大きさはほぼ小倉城の如し。しかしめずらしくうっとりさせる観は、それにやや劣る。傍らに戦艦数隻があり、備■を設けることははなはだ壮である。倭人の言によれば、地名は三原である。

 三原は、名酒および佳紙多く、海中の名邑と称す。安芸州の属県だが、太守は家臣を遣わして代理をさせているという。

 また行くこと十余里、たちまち翠壁があり、水面に削り立っている。壁の上は土をならして土台とし、その上に小庵を築いている。居僧が四、五人、鐘を叩くとその音が響いてくる。倭人の言によれば、この名は海潮山盤台寺である。僧は世間と行き来がなく。ただ船が通過するを待ち、その鐘の音に応じた客が投じた食物を得て、生活の糧にするという。そこで各船は、米穀を贈ることにした。

 一人の僧が崖をおりて小舟に乗り、米を受けて去った。僧はその容貌が粗野にして、文字も解しなかった。

 未の刻と申の刻の間に、鞆浦にいたる。聞けば、ここは牛窓からへだたることわずか二百里、と。風に乗って前進しようとした。しかし緒倭が言をきわめて、「宋太守の船がおくれており、それが来るまで待つべし」と言う。その船が来ると、日は暮れかかった。

 太守がまた言うところによれば、「沿路に使館を設け供具するのは、すべて関白の命ずるところである。そのために地方官が費やしたところのものは、もう還すことはできない。今ここを素通りすれば、これは、護行の藩臣をして那法に違反せしめることになる」と。このように力説するので、ついに帆をおろし、館に入った。

 鞆浦は、備後州に属する。使館は福禅寺である。寺は海岸の山の下にあり、棟宇は宏大、帳御は豊侈である。湾口から使館にいたるまでほぼ六、七里なるべし。路上にはことごとく重席を舗き、一点の塵もない。五歩ごとに一本の竿を植え、竿には一つの大燈を懸け、もって路をはさむ。夜を視ること昼の如し。

瓦葺きの屋根や市■が■々として寸隙なく、見物の男女は、錦衣を着て、東西に満ちあふれている。そのなかには、商客、あそびめ、富人の茶屋も多く、各州からきた使官が往来し、住舎も繁華にして目に溢れるばかり。これまた赤間関以東の一都会である。

 海岸は山高く秀でて海に臨み、三面は緒山が相控えて湾をなす。山の根が海に浸っているところは、石を削って堤となし、その平整なること裁断した如くである。松、杉、橘、柚など百果の林が、蒼翠として四方を擁し、それらが水面に倒影す。人みなここにいたると、第一の観なりと主張してゆずらない。

(中略)
 9月初一日。晴。三使臣は、それぞれ船上において望閲礼をおこなう。風波が目に満ち、故国をへだたる数千里の外にあって、各船からの■唱を聞けば、感懐は倍加する。

 巳末の刻に、風はたちまち静まり、すなわち舟を曳いて行く。これより水路狭く、両傍には障碍物が多い。ふりかえって左右をみれば、倭船は分かれて一の字陣勢を作り、首尾があたかも魚を貫いた如く、ほとんど数十里にわたる。その中に一路を開き、三使船はその中から進む。また奇観である。

 まだ牛窓に至らざること二十里ばかり、備前州の使者が舟に掉さして来る。そして使臣に別■を致し、また余にも葛粉一箱、塩漬鯛一折を■した。別幅には「備前国主従四位侍従継政」と書いていた。

 日が西に傾く頃、牛窓に泊す。遥かなる山は湾を控え、景観が爽■である。竹を挿して魚梁となし、遠近には網船や釣艇が散在する。湾上の人家は、数千戸はあろう。
 使館の供帳は鞆浦の如くに盛んである。傍らに一塔あり、上に胴柱をたて、半空に高く突き出ている。名を本蓮寺という。

 西に港口を穿ちて一舎を設け、絶勝である。題して曰く、「学士館」と。左右には沐室や■厠があり、ともにそれぞれ精妙である。庭には蘇鉄、棕櫚、その他の草木類が異香を放ち、疎秀淡潔の感がある。草に似た細い木があり、枝繁り、葉細く、花は淡紫色である。俗に皐月と呼ぶ。

 食事がおわった頃、雨森らの緒人が、備前州の緒文士を案内して来た。筆硯と紙軸を置き、長篇短律をもってたがいに唱酬した。

(注:■は大使が読めない漢字です)


釜山から大阪までの航路は、パンスターフェリーでたどったことがあるので、(勝手ながら)個人的旅情があるのです。
ただ、快速フェリーはしまなみ海道から瀬戸大橋、明石大橋の間を、あっという間に通りすぎたけど。
しまなみ瀬戸大橋

蛇足になりますが…
とにかくこの本には、当用漢字に出ていない読めない漢字がやたら多いわけで・・・
書き写すだけで、往生こいたわけです。


この本の冒頭に訳者が書いた凡例が載っているので、一部を付記しておきます。

<凡例>
一、申維翰『海游録』は、1719年に、徳川吉宗の将軍職襲位を賀するために派遣された朝鮮通信使に製述官として随行した著者が記録した日本紀行である。それは、同年四月にソウルを出発して翌年正月に復命するまで、261日間に及ぶ。 (通信使一行475名)

一、テキストとしては、『海行総載』第一巻(1914年)に収録されているものと、『海游録』(1907年)を使った。両者にはそれぞれ誤字や脱落があるが、両者をつき合せることによって、できるだけそれを訂正した。

一、原文は、いうまでもなく漢文である。儒学者であり詩文を能くする申維翰の文章は、ときには痛烈な風刺と諧謔が、ときにはおだやかな詩情が、こもごも華麗にして変化に富んだ流れをなしている。







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Last updated  2015.05.13 23:27:03
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