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2015.06.29
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『宮本常一「忘れられた日本人」を訪ねて』という大型のムック本を手にしたが・・・・
フィールドワークの画像満載で、ええやんけ♪

この種の大型ムックを借りると、図書館のありがたさを実感するわけでおます。

【宮本常一「忘れられた日本人」を訪ねて】
宮本

ムック、平凡社、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
民衆の知恵をめぐって旅する稀代の民俗学者・宮本常一。「日本人」とはなにものか。その答えを求めて、土地土地の風景と人間の歴史を収めた膨大な記録と写真群を紹介する。宮本民俗学を解く論考も収録。

<読む前の大使寸評>
大型ムック本で、フィールドワークの画像満載という嬉しい本でおま♪

junkudo 宮本常一「忘れられた日本人」を訪ねて


この本の巻頭で佐野真一氏が、誕生百年のオマージュを語っています。

<誕生百年、節目の年に:佐野真一>よりp3~4
 宮本にいま注目が集まっているのは、誕生百年という節目にあたっていることもさることながら、誰もがいまという時代の閉塞感を無意識に嗅ぎ取っているためだろう。

 日本の地方都市のどこを歩いても、目につくのは、死んだようなシャッター商店街ばかりである。そのとき、宮本の活動は未来を照らす、ほのかな期待の明かりのように見える。

 私が『旅する巨人』(文芸春秋1996)という宮本の評伝を書いたのは、いまからもう10年以上も前のことである。その当時の大方の受けとめられ方は、「そんな奇特な男もいたのか」という程度の認識だった。それを思えば、時ならぬこの宮本ブームは隔世の感がある。

巨人

 『旅する巨人』によって、宮本常一は“再発見”された。そんな果報な評価がある。その見方に甘んじて言えば、宮本へのこの注目は、時代のほうがやっと宮本に追いついてきた、そんな証のような気がする。

 しかし、一つ気になるのは、どれも宮本を「聖化」して賞賛一辺倒なことである。この手放しの評価が読む者の胸にしみこんでいって、一人ひとりの生き方に知らず知らずに影響をあたえる伏流水という言葉はふさわしくあっても、一過的なブームという言葉はおよそ似合わない。

 私は宮本についてコメントを求められる度、こういい続けてきた。
 「宮本を顕彰することはあもういいかげんにした方がいいと思います。大切なのは、宮本の精神を継承しようとすることです。宮本は元々、民俗学は過去を振り返るための学問ではない、よりよき未来を拓くための学問だ、と言っています。宮本に詭拝して祭り上げることは、宮本の精神を冒涜することにもつながりかねません」

 宮本“再発見”の第一段階は終わった。われわれに残された次の課題は、宮本の精神をどう生かせていくかである。

 停滞した地域の復活を願って全国を歩き続けた宮本の旅は、決してノスタルジーを求める旅ではなかった。とりわけ戦後の高度成長期の旅は、経済と開発にひたすら邁進する地域に裏切られつづけた旅だったといえる。

 もし宮本の偉大さを言うなら、それは裏切られも裏切られてもあきらめず全国行脚をつづけた精神の逞しさと、民衆を信じつづけたひたむきさにあった。


宮本常一の恩師ともいえる渋沢敬三を見てみましょう。

<渋沢敬三>よりp52~57
渋沢

■生まれながらのプリンス
 渋沢敬三は、宮本常一が生涯の師と仰いだ人物。研究者として、アチック・ミューゼアムの主宰者として民俗学に確かな足跡を残しているが、その生涯は極めて特殊である。

 明治29(1896)年、「日本近代資本主義の父」といわれる渋沢栄一の嫡孫として、東京・深川に生まれた。いわば「財界のプリンス」として生をうけた敬三だが、幼い頃から好奇心が強く、聡明さを発揮している。
(中略)

 しかし、敬三には生涯逃れ難い問題があった。当主相続問題である。大正2(1913)年、栄一との関係がうまくいかなくなった父・篤二は廃嫡。おのずと当主相続の矢面に立たされた。渋沢家当主として生きること。そのことを伝えるために「お頼みする」と羽織袴の正装で75歳の栄一が頭を下げたという話は有名で、19歳だった敬三は栄一の姿に涙し、反発する術もなく、その願いを聞き入れた。そうして生物学への道を閉ざしたのであった。

■柳田も一目置かざるを得なかった男
 第一銀行、東京貯蓄銀行の取締役に就任後、昭和16年には第一銀行副頭取になった敬三は、翌年には日本銀行副総裁、つづいて昭和19年には総裁辞任に伴い、総裁に就任、そのまま終戦を迎える。戦後の幣原内閣では大蔵大臣を務めたが、内閣退陣後の昭和21年8月、GHQの公職追放令によりその該当者になる。
(中略)

 「金融緊急措置令」により地位も財産も捨て去った敬三は、昭和26年に追放解除になるまで、思う存分、民俗調査に打ち込んだという。もちろん宮本は度々旅先に同行しており、うち昭和25年に対馬調査に始まった八学会連合はひとつのピークで、「モノグラフ」や「文字資料」など先に挙げた手法やスタンスの集大成だったともいえる。

 もちろんこれだけの学界を組織化し指揮ができるのは敬三をおいて他になく、彼の手腕が如何なく発揮された活動であった。この時期こそもっとも幸せな時期だったかもしれない。

 敬三はしかし、常に謙虚でいることを心掛けていた。「資料を学界に提供する」という姿勢はその表れであろう。宮本に語った言葉、「学者になるな」ということにも符合する。さらに、日本民俗学の創始者・柳田国男が見落としてきた「落ち葉」を拾うことに心をくだいた。そうしながらも柳田を怒らせなかったのは、やはり敬三の日頃の謙虚さからであっただろうし、そこにかえって懐の深さを思わせる。

 そして何より敬三は、プロジューサー的立場に徹した。誠実な人びとに対し、決して悪いようにはしないという彼のスタンスは、思想・信念を超え、敬三のもとに集まってくる多くの人びとを虜にし、彼らと師弟の関係を結んだ。実業界で、学界で、ある時は表に立ち、ある時は裏にまわり、さまざまな人を助けた。恐らくは、それを自らに課された役目と悟り、果たすべき使命と捉えたのだろう。

 その姿からは、今の時代には見られなくなった「ノーブレス・オブリージュ」の精神が見える。そうして多くの人びとが堅い信頼関係を築きあげるなか、特に宮本とは30年も同居するほどの縁となり、「俺は君の防波堤だよ」とまで言わせたのだから、敬三が宮本に寄せる期待と信頼はまた特別なものだったに違いない。


1960年代に、著作者としての名声がゆるぎないものとなったそうです。

<忘れられない日本人を訪ねて>よりp90~93
 雑誌「民話」(未来社)の編集委員として活動。そこに隔月で連載「年よりたち」を執筆した(1958~59年)。これまでの旅で出合った老人たちとのライフヒストリーで、昭和35(1960)年7月、これらは単行本にまとめられた。この本こそ、宮本の実力を世に知らしめた代表作『忘れられた日本人』である。

 先に挙げた対馬の「梶田富五郎翁」をはじめ、篤農家の歩みや村の衆の談義など、古い時代の民衆の生き方を収録した。中でも67頁でも挙げた「土佐源氏」は、高知県梼原村に訪れた際、80歳をこす盲目の老人から聞いた印象的な話で、一見、平凡な人生を送った民衆にも、情愛深く、奔放に生きた現実があったことを、ヴィヴィッドに描写する様が話題を呼び、事実か創作かといった論議を含めて、多くの読者をつかんだ。「民衆はしいたげられて生きてきた」という思い込みをくつがえす、宮本の面目躍如たる作品である。

 日本人にはこんなにもさまざまな生き方があった―。そのことを広く知らしめた宮本はまた、この著作中で昔よく見られた「世間師」について著している。「世間師」とは旅などで見聞を広くし、経験豊かな人のこと。宮本の姿もまた、旅で得た知識や知恵を説いて回る「世間師」と重なり合うものだった。

 さて、昭和35(1960)年9月には、全国各地の島への旅で見聞きしたたくさんのことを、あまねく書き連ね、集めて編んだ『日本の離島』を刊行した。そして、昭和36年度の日本エッセイストクラブ賞を受賞、著作者としての名声は、ゆるぎないものとなった。






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Last updated  2015.06.29 21:23:34
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