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2015.07.10
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『ほっこりぽくぽく上方さんぽ』という本を手にしたが・・・
関西案内として、いけてるんやないけ♪

京阪神の微妙な違いや見所を知るとなれば・・・
関西ネイティブのお聖さんの本がいいんじゃないでしょうか。

関西の戦時、終戦時ころといえば、関西ニューカマーの大使にとってはミッシングリンクであるが、この本でその穴を埋めようという意識がはたらいたのかもしれません。


【ほっこりぽくぽく上方さんぽ】
田辺

田辺聖子著、東京美術、1999年刊

<「BOOK」データベース>より
お聖さんと一緒に出かけませんか?上方の心懐かしきたたずまい、現在のぬくもりに触れる旅へ-。あたらしい関西案内。
【目次】
1 始まりはミナミ/2 大阪ベイエリア/3 キタを味わう/4 ちょっとそこまで…/5 南へ、神の国へ/6 京都慕わし/7 上方モザイク

<読む前の大使寸評>
京阪神の微妙な違いや見所となれば・・・
関西ネイティブのお聖さんの本がいいんだろうね。
ちょっと古い本なので、楽天ブックスに画像が無かったけど。

rakuten ほっこりぽくぽく上方さんぽ


お聖さんの生誕地あたりを見てみましょう。

<私の『私の大阪八景』>よりp153~156
 戦後十数年たった頃、私は同人雑誌に「私の大阪八景」を連作のかたちで、時折、連載していた。昭和30年代後半だ。途中、39年1月に至り、芥川賞を受賞したこともあって、最後は書き下ろしで一作書いて、文芸春秋から『私の大阪八景』として出版してもらった。
 八景、いうけど、五景しかあらへんやないか、と友人たちにいわれたが、いや、こういうもんはカズが合わんでもエエのや、と煙に巻いてやったことをおぼえている。おみやげの名物饅頭の包み紙なんかに〇〇八景なんて印刷するときはカズが合わないと困るが、小説はまだ続きがあるのかと思わせるほうがよい、などと私は与太っぱちをいっていたが。―

 五景をいま並べてみると次の如くである。
 その一、民のカマド<福島界隈>
 その二、陛下と豆の木<淀川>
 その三、神々のしっぽ<馬場町・教育塔>
 その四、われらの御楯<鶴橋の闇市>
 その五、文明開化<梅田新道>

 ―小学校六年生の女の子トキコが戦時下に女学生になり、女専生徒になり、終戦を迎え、やがて社会へ出てゆく、つまり、女の子と<戦争>の相関図というか、最後の章は終戦直後の天皇巡幸を梅田新道でお迎えした話で終わる。五景でとどめたのは、たぶんもう、息切れしたのであろう。

 このトキコは、私と等身大でもあるが、当時の一般的コドモ像の抽出されたものでもある。
 藤本義一さんは<ウチの嫁はんと同じ名ァやな>といったことがある。そういえば夫人は統紀子さん、これはウチのオッチャンもよく知っている。昔、神戸にいたころ、そのころはFAXなんて文明の利器などありはしません、原稿が出来ると、オッチャンを拝み倒して車で伊丹空港まで走ってもらっていた。航空便を利用するのである。

 昼間なら私がタクシーを飛ばしてゆくが、夜は食事の用意をせねばならない。診察室から出てきて、やれやれとビールを飲もうとするオッチャンに、<ごめん、いってきて!今なら最終便に間に合う>と叫ぶ。オッチャンは憤然、色をなすがしかたない、早く飲みたい一心で車を引き出して走らせる。そういうとき、伊丹の最終便で混雑する受付で、義一氏のお原稿をやっぱり送りにこられた統紀子夫人に会うという。

 <やあ、お互いにエライ目ェに合いまンなあ、人使いの荒い相棒で・・・>
 と挨拶して別れたよし、<要らんこと、いわんでもエエ!>と私はぷりぷりしたものであった。現代から思うと、<過ぎし日露の戦いに・・・>という感じであるが。

 戦争下の小学生といっても四六時中、戦争浸りになっていたわけではなく、昭和12年の日支事変(当時そう呼んでいた。戦争ではなくて事変であって国民はほとんどみな、シナの一部で紛糾があるらしいが、いずれ止むやろう、とタカをくくっていた。まさかそれがきっかけとなってずぶずぶと泥沼にはまり、8年に及ぶ塗炭の苦しみをなめさせられようとは、誰一人思いもしない)のはじまったのは小学4年生であった。まだ大阪下町の路地には、チョボ焼き、一銭洋食、紙芝居、しんこ細工、しがらき・わらび餅などの屋台や金魚売りが来ていた。

 小学校の下駄箱の上には「一銭ヲ笑フ者ハ一銭ニ泣ク」という格言がかかげられていたが、私は無駄遣いの天才で、一銭も度重なれば十銭になる、連日十銭を屋台のオッチャンに散じてしまう放蕩者で、たびたび家へせびりに帰っては、<なんぼ使うたら気ィすみますねん、そらおそろしい子ォや>と母に叱られていた。まだまだ泰平の世であった。

 夏休みには浄正橋に出る角の<上の天神サン>の境内でラジオ体操が行われ、7月の25日は天満の本宮と同じく夏祭があった。町内の家々には軒に<献灯>と書かれた提灯を吊り、しかるべき素封家などは、家紋を白く染めぬいた浅葱色の幔幕を張った。

 神輿は練り歩かれることはなく、しかし毎年、天神サンに飾られて、宵宮から本祭の間じゅう、派手な祭囃子が鳴りひびいた。コンコンチキチン、コンチキチン(祇園囃子よりもっとスピードアップして勇壮である)のお囃子は、天満の、船渡御と同じ。境内いっぱい、そして鳥居までの広い道すじにも店が出て、金魚すくいやりんご飴、山吹鉄砲、と面白かったこと。

 やがて夏は夢のように過ぎ、早や、祭りのあと仕舞といわれる地蔵盆であった。どこの路地の奥にも、子供たちを護って下さるというお地蔵さんが祀られていて、町内の糸道のついたおばさんが三味線を弾き、唄う。女の子は天花粉にまみれた白い顔で長袖の浴衣など着て踊る。

 ~かんてき割った、叱られた。おかしてたまらん、トッテレチンリン・・・
 という意味不明の歌詞ながら全大阪中の地蔵盆で唄われ、踊られていたもの。この祭りを最後に秋が来て、大阪の空にも赤トンボがとぶ。
(中略)

 福島西通と、堂島大橋の間のほぼ中間、市電通りに面して私の家、<田邊写真館>があった。今は自動車関係の店らしい。このへんの空襲は昭和20年3月13日・14日、次いで6月1日、7日、15日、26日、7月7日。ウチは6月1日、消しにくい油脂焼夷弾が雨あられと降った。一望灰燼の焦土を「大阪八景」に加えるべきか。

なるほど、関西弁の文章となると、お聖さんがピカイチではなかろうか?♪

お聖さんの第二の故郷が神戸になるんだそうです。

<神戸・浮き寝のかもめ鶏>よりp359~362
 翌朝も快晴。私たちは復興成った生田神社へお参りする。倒壊した生田サンの拝殿の写真を見た時は世も末だと思った。石の大鳥居は根元からこなごなに倒壊、石灯篭も石の玉垣も、境内の歌碑のたぐいも殆ど倒れた。

 それが1年半ばかりで復興した。さすがに生田サンや、とみな感心した。神戸150万市民の発祥の地やから、
<これはがんばらんとあかん、と思いました。生田神社は神戸のシンボルですからね。大体、神戸という地名は、生田神社から出ているんですよ。生田神社を守る家が、昔、44戸あった。それが神の戸、かんべ、神戸となった。神戸の中心である生田神社がしっかりしなくてはあかんやないか、と思うたら、燃えてきました>

 加藤隆久宮司はいわれる。今日は白いお召し物に紫の袴というご神職のいでたち。
 生田神社は三宮のネオン街のただ中にある。古典で有名な生田の森は、こんどの震災でも無事で、社殿の背後に濃い緑があるのはうれしい眺め、あざやかな朱塗の本殿、拝殿、楼門、そして鳥居。

生田

 神社建築は美しい。白壁に朱の柱、朱の垂木、梁長押、青い連字窓、清浄潔白でしかも花やか。生田サンの神紋は桜で、お祭には関係者は桜の造花をかざす。それもいかにも女神のご祭神にふさわしい。
(中略)

 災害に強い神社にしなければならぬというので、再建された拝殿は、耐震性高強度鋼管コンクリートの大柱が用いられている。加藤宮司さんは何でも歌になさる。
 <「黒鉄の真鉄の柱ならぶさま まさめにみつつ胸せまりくる」>

 祝詞調で朗々とうたいあげられるので耳に快くはいりやすく、震災の衝撃の現実感があった。神社にはみるからに森厳で近寄りがたいところもあり、それも日本神道の幽邃を示唆して有難いものであるが、生田神社の、
 <神社いうもんは市民のコミュニティセンターやから>
 という方向も神戸らしく、明快で親しみやすい。







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Last updated  2015.07.10 00:48:17
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