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2015.07.12
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カテゴリ: アート
図書館に借出し予約していた『ヘンな日本美術史』という本を手にしたが・・・
大学図書館で『山口晃 前に下がる下を仰ぐ』も借りているので、山口晃ミニブームになった感もあるのです♪


【ヘンな日本美術史】
山口

山口晃著、祥伝社、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
自分が描いたということにこだわらなかった「鳥獣戯画」の作者たち。人も文字もデザイン化された白描画の快楽。「伝源頼朝像」を見た時のがっかり感の理由。終生「こけつまろびつ」の破綻ぶりで疾走した雪舟のすごさ。グーグルマップに負けない「洛中洛外図」の空間性。「彦根屏風」など、デッサンなんかクソくらえと云わんばかりのヘンな絵の数々。そして月岡芳年や川村清雄ら、西洋的写実を知ってしまった時代の日本人絵師たちの苦悩と試行錯誤…。絵描きの視点だからこそ見えてきた、まったく新しい日本美術史。

<読む前の大使寸評>
大使の場合、日中画力比較というふうに、ついナショナリズムが出てくるわけです。
・・・で、雪舟を題材にした日中比較を見てみましょう。

<図書館予約:(7/05予約、7/10受取)>

rakuten ヘンな日本美術史


大使の場合、日中画力比較というふうに、ついナショナリズムが出てくるわけです。
・・・で、雪舟を題材にした日中比較を見てみましょう。

<こけつまろびつの画聖誕生>p86~88
雪舟破墨山水図

 現代の絵描きでも、一応、画学校とか芸術大学などを出て真面目な石膏デッサンなり静物画が描けると言うと、どんなにふざけた絵を描いていても、やろうと思えばちゃんと描けるんだと云う、免罪符と言いますか、見る人を安心させる言い訳になります。

「四季山水図」は、そういう意味では一見「いい子ぶって」いる訳ですが、やはり見ていて非常に気持ちのよい絵です。上手が本当に上手になると、むしろ嫌味がなくなってくる。上手さが上手さを消していくとでも云う所があって、絵の透明度が高くなる事によって、素直に絵に入っていく事ができるのです。
 そういう絵を描く技術を持っていながら、しかもそれが当時の王道でありながら、それでもなお「破墨山水図」を描いたのが雪舟でした。

 大雑把に言ってしまいますが、いわゆる中国的な山水画は、日本人の私から見るとクドい感じがします。近景の樹木の描き込みや岩の凹凸と、遠景に溶け込む山々と大気の表現などが、透明感に溢れた大空間を現出させて実に見事なものなのですが、やはりうるさく感じられる。技術的にも凄いのですが、どこか執拗で「そこまで必要なのか?」と思えてしまうのです。

 これには実際的な側面も影響していると思います。日本で中国風の山水画を描くとなると、その風景は基本的に想像の産物です。

 けれども中国の風景写真なり、映像を見れば分かりますが、あの国には山水画に描かれたような風景が実際にあるのです。日本では信じられないような「」な形の岩山が実在し、彼らは空想やデフォルメではなく、見たものを元に描いていることが分かる。

 その上で、単なる「画工のスケッチ」に堕さぬよう、風景思想やら絵画理念やらを厳格な筆法で入れ込んでくるのです。余白にまで意味が満ち満ちて、放ったらかしの部分がまるでない。それが好きな向きには堪らなく、きらいな向きにも堪らない、感動と辟易をもたらす所以でしょう。一方、日本人の多くは、その風景を知らないまま画面を写し、思想に心酔してきました。

 大もと、すなわち中国における、絵と現実の風景との関係を知らずに、絵の方だけを模写した結果、日本人は、それを予期せぬ方向に変容させてしまったのです。これを私は「古屋の漏り」効果とか「ジュリアナ」効果とか呼んでいます。

 「古屋の漏り」と云うのは、昔話です。虎や狼が馬を盗ろうと忍び込んだ家で、そこのお爺さんとお婆さんが、虎や狼よりも「古屋の漏り」つまり雨漏りの方が恐ろしいと話しているのを聞いて、自分たちより恐ろしいものが来ると思って逃げ出したと云う話です。

 あるいは「ジュリアナ東京」などと云っても、若い読者の方はご存知ないかもしれませんが、80年代末に流行した「お立ち台」などで有名なディスコです。東京で流行ったとなると、地方でも真似をするのは必定でして、しかも「東京ではこれくらいやっているだろう」という曲解で、どんどん過激なキワドイものになっていったそうです。

 つまり、現場を離れて何かが伝わる過程では、伝言ゲーム的な意味のねじれが生まれます。しかも、元を知らない人間ほど、オリジナルに負けてはならじと過剰なものを付け足していく傾向にあって、結果的に常軌を逸したものになりやすいのです。

 その事が、絵の世界では図様の変容を生みます。中国で生まれた山水画もそれが大陸から日本に伝わってくる過程で、ある種の奇矯さを持つようになる。墨の濃淡で立体感を表現する破墨と云うのも、もともと本家の中国では邪道だと言われていた描き方です。

 中国の山水画においても、描き尽くされてしまうと、ある種のマニエリズム(技巧主義)化が起こって、さらにそれを過ぎると今度はミニマルな方向へ進むという振幅があって、その中から破墨のようなとんでもないものが生まれてきました。



<雪舟の生み出す恐るべき絵画空間>p95~97
雪1秋冬山水図

 「秋冬山水図」を見て感じるのが、雪舟の生み出す恐るべき絵画空間です。先程も申し上げたように、中国の山水画ですと繊細な筆致が空間をを生み出しているのですけれども、それに比べると「秋冬山水図」は格段に荒い。荒いのですが、筆致が的確です。それはもう絶望的に的確なのです。

 そして「鳥獣戯画」の時も申しましたが、やはり実物を見ますと透明感が全然違いまして、初めて見た時にはぞっとするような感覚を覚えました。とにかく、吸い込まれそうな深さに無性に怖くなった事を思い出します。
 何がそのような物凄い感じを引き起こすのかと云うと、その特異な空間性ではないでしょうか。

 その空間性が現れる要因を考えてゆくと、まずは絵を構成する単位の大きさによるのではないかと思われます。それが大きな視線の動きと流れを生み、一瞥でも含む所が多くなるのです。

 雪舟はこの絵の中で、手前の道、岩、崖くらいの単位でモチーフを大きくポン、ポン、ポンと配置していき、それらの存在感を破墨仕込みの荒く闊達な調子でグワシと掴まえます。そして掴まえられた荒ぶる気は、無骨ながらニュアンス豊かな輪郭線によって画面に定着される。
(中略)

 厳格な構図の静謐な画面の下では、張り出そうとする力と奥へ吸い込む力とが激しくぶつかっている。そこに垣間見える深淵に、私はぞっとするのです。


画聖と呼ばれる雪舟がとんでもない山水画を描いた経緯を、山口さんが皮肉たっぷりに解説したわけだけど・・・・
とかく権威にまで登りつめた御仁には、この種の皮肉が付き物のようです(笑)。

ということで、曇りのない目で、雪舟の画像を見てみましょう♪

bing 雪舟の画像 より
雪2

雪3



比較対象ともいえる南宋院体画よりピックアップしてみました。


聞くところによると、南宋院体画の伝統を継ぐ者として雪舟が評価されているんだそうです。とにかく彼の地では文化大革命で、文化が一度破壊されたので、文化的伝統を継ぐ人が逼迫しているんでしょうね。








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Last updated  2015.07.12 06:43:04
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