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2015.08.07
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 政治学者・五百旗頭真さんがインタビューで「力と利益と価値、米外交の3原則を複眼的に見据えよ」と説いているので、紹介します。

五百
(五百旗頭真さんへのインタビューを8/06デジタル朝日から転記しました)




Q:戦後70年は敗戦、占領、安保と米国と向き合う70年でした。
A:開国を迫られたペリーの黒船以来、日本にとっての運命的な関わりは、米国が多いですね。日露戦争の講和はセオドア・ルーズベルト米大統領のあっせんでした。そして、連合国による占領も、マッカーサー最高司令官のもと、米国主導でした。

 占領とは、占領された側にとっては苦々しいもので、『よい占領』というものはありません。しかし、日本占領は『もっとも少なく悪い占領』でした。米国は真珠湾攻撃の後すぐに、日本の事情に通じた専門家を集め、3年かけて対日占領政策をつくりました。

 天皇制と官僚機構を残して、間接統治を行った。ニュートラルな技術集団として、官僚機構を使ったのです。既存の軍や警察、バース党などの機構を全部排除して大失敗した最近のイラク占領とは対照的です。そもそも、日本の場合は、明治の自由民権運動や大正デモクラシーなど、自前の民主主義経験もあった。戦後日本は日米の共同作品だと思います。

Q:日本人の対米観には、あこがれと反発が共存しています。
A:米兵が演習場に入った農婦を射殺したジラード事件や、沖縄での少女暴行事件のようなとんでもない事件が起こると、日本側の怒りが爆発する。在日米軍がいることで対外的な安全性は増すけれども、国内に問題が残る。しかし、大きな枠でみると、米国との関係は、知的交流や草の根交流など市民社会同士の絆は太く、相互理解の進んだ関係を築けています。

 日本が独立を回復したのは朝鮮戦争の最中で、沖縄返還もベトナム戦争の時期でした。米国の軍はともに決定に反対でした。ところが、米国の政治指導者は、軍事的便宜を乗り越え、日米の長期的友好を優先する判断をしました。米国は、日本政府が本気で望むことに対しては、案外ていねいな対応をしています。

    ■     ■
Q:一方、日米は対等でないとの批判もありますが。
A:世界一の超大国と対等な国などありません。軍事的な面でみれば、ずいぶん長い間、米国と日本は大人と赤ちゃんのようなものでした。戦後日本は、安全保障を米国に頼り、経済発展に専念してきた。『同盟』という言葉が、外交文書で使われるようになったのは、1970年代末の大平正芳内閣のとき。

 米国がベトナム戦争で傷ついて国力がどん底になり、他方、日本がGNP1%の枠内で着実に防衛力を整備し、無視しがたいレベルに達した。さらに冷戦終結後、北朝鮮危機や中国の台頭をにらんで、橋本・クリントン時代に日米安保を再定義し、東アジアの安定のための公共財として位置づけられたのです。こうして日米関係は、米国のアジア政策の中軸となりました。

 ただし、課題が依然としてあります。米外交に、日本は非常に幻惑されやすいのです。
Q:幻惑されやすいとは。
A:米外交は一つの原理で動いているわけではありません。私の恩師である故高坂正尭(まさたか)・京大教授は、国家を『力の体系』『利益の体系』『価値の体系』であると考えました。米国は、この三つを強烈に持っています。

 第1次世界大戦に参戦したウィルソン大統領は、『民主主義のための戦争』と説きました。米外交は、はばからず価値を前面に立てる。また『ドル外交』という言葉があるように、経済的利益もよどみなく追求します。経済は相互利益をもたらすものであり、平和の基礎だと考えている。忘れてはいけないのは、力の側面です。 米国はアジアにおいて一つの国が排他的に支配することを嫌う。戦前のロシアや日本、現在は中国が問題ですね。三つのレベルで米外交を複眼的に見ることが必要です。

Q:オバマ外交には、あまり「力の体系」を感じませんが。
A:力の面では、オバマは甘い政権でしょう。カーター政権(77~81年)がベトナム戦争の傷に苦しんだように、オバマはアフガニスタンとイラクの戦争を終えその傷を癒やす役割を担っています。しかし、米外交は振り子の原理で動く。次の政権は、力の行使に敏感な政権になるでしょう。

 南シナ海における中国の現状変更を認めないと、オバマ政権は遅ればせながら立場を明確にしました。単に言葉だけではないかと思いがちですが、次の政権が自由に行動する根拠を与えているのです。戦前、日本が満州を侵略したとき、スチムソン国務長官は不承認政策をとった。日本の軍部は、高をくくったが、結局その後、中国をめぐって日米は戦争に突入した。米外交の原則を軽く見るのは危うい。

Q:日米関係と中国との関係は今後どうなるでしょうか。
A:日本からみると、日米同盟は巨大な存在です。しかし、米国にとっては、あくまでも多くの国際関係のひとつ、ワン・オブ・ゼムなんです。

 歴史的に見ると、中国がアジアの大国でした。 米国にとって、アジアの中心大国に復帰する中国の絶対値はプラス・マイナスを含めて大きくならざるを得ないでしょう。しかし、だからといって、日米関係を軽視するほど米外交は幼稚ではありません。だからこそ、日米同盟はとりわけ重要だとの判断が基調です。

    ■     ■
Q:米国は、日本の指導者をどう見ているのでしょうか。
A:戦後ワシントンであつく歓迎された首相は、ことごとくアジアとの関係をうまくこなした人です。岸信介は57年の訪米前に東南アジアを回り、やっかいだった戦争の賠償問題に道筋をつけました。佐藤栄作も、訪米前にアジア・太平洋諸国を巡った。中曽根康弘は、就任直後に韓国を電撃訪問した。

同盟の価値は、日本がアジアでよき世話役を務めているからこそ高まります。周辺国といがみ合ってばかりいると、米国が仲裁のコストを払わねばならない。いま日韓関係が悪いことが日米同盟にマイナスなのは、明らかです。

 日本外交にとって、米国とアジアは二者択一ではありません。日米同盟は大変な資産であり、ますます大事にすべきですが、アジアをぞんざいに扱ってはいけない。20世紀の日本は、米中両国と戦争をして国を滅ぼしました。そこから学ばねばなりません。

 かつて私も参加した小渕恵三首相の諮問機関『21世紀日本の構想』懇談会は、東アジアにおける協力関係を一段と強化すべきだとして『隣交』を提案した。 日米同盟+アジアの『隣交』です。中国とは少なくともけんかをしない、利益を共有できる関係を保つことです。

Q:日中間は、歴史問題が大きな障害となっています。


Q:それは可能でしょうか。
A:第1次安倍政権から福田康夫政権にかけて、中国の指導者が、戦後日本の平和的発展を評価し、日本の開発援助に感謝を表明した時期がありました。その後またいがみ合いに戻ってしまいましたが、あの信頼関係を再構築せねばなりません。

Q:我々自身も、戦後日本に自信を持たねばなりませんね。
A:戦後日本は『力の体系』一辺倒の国家を反省し、『利益の体系』一辺倒で経済大国になったように見えます。しかし、大切に育んだ価値もあります。青年海外協力隊は今年で50年になりますが、日本の開発援助は、欧米とはひと味違って、途上国の底辺まで入り、現地の人と同じ目線で国造りに努力してきた。

人に優しい日本の価値外交です。価値外交とは、民主主義や人権などの理念を振りかざすだけではありません。こういう生き方が、国際世論調査における日本の高い評価を支えています。その資産は今後も大切にしたいものです。

     *
五百旗頭真:43年生まれ。熊本県立大理事長。神戸大教授、防衛大学校長を歴任。著書に「米国の日本占領政策」「占領期 首相たちの新日本」など。

<取材を終えて>
 小泉首相による自衛隊のイラク派遣、戦争をめぐる政府見解を否定した田母神俊雄・航空幕僚長の発言など、節目節目で五百旗頭さんは批判的見解を明らかにしてきた。 ときにはバッシングも浴びたが、筋を通した。背景にあるのは、冷徹なリアリズムと、歴史から謙虚に学ぼうとする健全なナショナリズムである。 保守主義が本来持っているはずの美質が、そこにある。(編集委員・三浦俊章)


米国との間合い 百旗頭真2015.8.06


この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップ に収めておきます。





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Last updated  2015.08.07 06:08:13
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