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2015.08.24
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カテゴリ: 映画
図書館で『天気待ち』という本を手にしたが・・・
黒澤さんに影のように付き添ってきた著者が、黒澤さんと、その映画作りを語っています。
黒澤エピソード満載の本やないけ♪・・・ということで借りたのです。


【天気待ち】
黒澤

野上照代著、文藝春秋、2001年刊

<「BOOK」データベース>より
本書は、1991年7月から97年10月までの6年に亘り“キネマ倶楽部”というビデオ販売機構の会報に連載された「天気待ち」というエッセイが中心になっている。『羅生門』以来黒沢組にかかわる著者の、巨匠の逸話満載。

<読む前の大使寸評>
黒澤さんに影のように付き添ってきた著者が、黒澤さんと、その映画作りを語っています。・・・・黒澤エピソード満載の本やないけ♪

rakuten 天気待ち


著者インタビュー「黒澤映画の秘密」の一部を紹介します。
黒澤天皇と言われた由縁がわかるし、この本のキモみたいなところでしょうね。

<編集でみせる集中力>p312~316
Q:野上さんにとって、黒澤映画のユニークなところ、また黒澤さんの映画監督として余人をもって代えがたい才能というのは、何であるとお考えでしょうか。

野上 :それはまず、監督としての異常なほどの“集中力”。成瀬さんの話に繋がるけど、特に編集の時の集中力はすごい。話しかけても何も聞こえない。記録のわたしの立場からいえば、撮影よりも何よりも編集作業ほど大変なものはない。なにしろ撮った材料が多いから。

Q:編集作業に立ち会うのは何人ですか。

野上 :作品によって違うけど、わたしと編集技師とその助手さんの三人くらい。『乱』から後はイタリア人の助監督ヴィットリオ・ダレ・オーレ君も付いてたけど。

Q:編集は監督が一人でされるわけですか。

野上 :そう。とにかく編集は部屋が凍りつくぐらいの緊張です。いつ何が起こるかわからない。編集というのは本当にわからないんですよ、密室だから。密室殺人みたいなものでね。本当にあそこにいないとわからない。ただ、とにかく監督としては一番至福のときですよ。周りの人はみんな透明人間みたいなもので、監督の手となり足となるだけです。

Q:例えば、凝ることで有名な市川崑監督の編集とはかなり様子が違うんですか。

野上 :全然違うと思う。だって崑さんは編集機のそばに座って指示するけど、実際に切ったり繋いだりってのは長田千鶴子さんがやってるでしょ。黒澤さんの場合は自分がフィルムを手に持たなきゃできないんだから。

Q:それは日本映画の中でも稀なんですか。

野上 :もう今やね。

Q:1本の映画をあげるために、その編集作業というのは大体何日ぐらいかかるのですか。

野上 :撮影が終わってラッシュを見ると、その日の夜にやるんですよ。なにしろ、編集が好きだし、やっぱり気にかかるからでしょうね。ロケ現場にも編集機を持っていって編集することもあります。長期ロケの時などはね。

 結局、全部自分でやらないとだめなんですよ。そういうつくり方じゃないとああいう映画はできないということよね。全部自分でやらないと気がすすまない。。だから、撮影が終わるころには、大体つながっているのよ。

 それで、その後、また初めからやるわけだけど、本当に速いし、うまいですよ、やっぱり。それと、とにかく集中力ね、黒澤さんは。もう本当に何か読んでいるときなんか、何を言ったってわからない。悪口を言ったってわからない(笑)。

Q:何時間もぶっとうしで編集をされるわけですね。

野上 :ものすごい集中力だもの。

Q:徹夜なんていうのはあたりまえですか。

野上 :徹夜は基本的にまったくしない方針。だから、ラッシュを見てその日時間があればやるけれど、速いから大体夕方2,3時間かな。それに、例えばロケが中止になると、「じゃあ、今日編集しよう」ということになる。

Q:ほんとうに編集がお好きなんですね。

野上 :そうね。具体的にいうと、材料として画と台詞と音楽の三種類があるでしょ。台詞と音楽はシネテープ。キャメラが三台あれば、それが同時進行しているから画のフィルムも三本あるんですよ。音は基本的に一本だけど。それにまた、キープもあるわけですよ。つまり、あれもいい、これもいいと同じカットのOKが何本もあることね。ワン・テークはそこそこ10分以内だけれど、やっぱり長いでしょ。だから、全部のフィルムの量にするとすごいものになりますからね。その中のうちのほんの一部を使うんだから・・・。

 テープのエマルジョン・ナンバーがないから、編集の助手はもう大変なのよ。画のフィルムのふちに1フィートごとに入ってるエマルジョン・ナンバーを全部、音のテープに書き写すわけよ。じゃないと、どこかで切られたら、その音がどこのものか分からなくなるから。

 それに、テープにまた台詞を全部書きこむわけ。音は目に見えないから。それだけの準備をして、材料をそろえて、そこから監督の独壇場になる・・・・パーと見て、ここからあっち、あっちからこっちと切って繋いで、また見て、やり直して・・・・。それで、「はい、次」なんて言うから、どんどんフィルムを渡さなきゃいけないわけね。

 集中してて、しかも速いからたいへん。次はあのカットに行くだろうなというのを予想しておいて渡すんだけど、どこをどうやっているのかもよく見えないわけよ。あそこで切るからあっちへいくのかなと思って、渡すでしょ。もし違っていたらバーンなんて突き返されるし。

 まあ、何ていうのかね・・・・手術かな、医者と看護婦みたいに。「メス!」「カンシ!」・・・・ああいう感じですかね。ただそばに立ってて、フィルムを渡したり、フィルムがひっかからないようにほどいたりしているだけだから、なんてことないように思うかもしれないけど、なかなか大変なんですよ。監督が何かの拍子にどこかに足をひっかけたりするでしょ。「痛い!」なんてことになると、あの雰囲気の中では生きた心地がしないですよ、本当に。

Q:聞いているだけで鬼気迫るものがありますね。

野上 :とにかく黒澤さんの場合は、それが最終的な一番大事な演出だから。黒澤さんの演出というのは、いつもおっしゃっていまっすが、「まず編集の材料を撮る」ということなんです。わたしは、これを『羅生門』のころからずっと毎回聞かされている。「材料を撮るために撮影している」って。

 要するに、撮影のときは画を作って、録音のことはあとまわし。それで悪いところがあれば、音は音で何とかする。それで、監督にとっては最終的にたった一人で一番本当の演出をするのが編集作業なんですよ。

 全部の材料をすべて手にして、最近になると音楽のテープまで持って、とにかく一から百までの全部ができるのが編集だから。われわれはとにかくそばにいて、コトリとでも音を出さない。邪魔をしないかぎりはいいわけよ。でも、邪魔をしてはじめて存在がわかるんだけどね(笑)。


『羅生門』のモノクロ映像の美しさについても触れています。

<太陽を撮る>p78~81
 いまさら感心するのも妙な話だが、黒澤さんは実にキャメラのことをよく知っている。キャメラマンと相談しながらにしても、どのカットもぜんぶ自分でファインダーをのぞいて構図を決めるし、レンズのサイズまで選択するほど、それは詳しい。だからキャメラに収まる画面の範囲なども明確に頭に入っているようである。

 たとえば雪の日の撮影の時などスタッフは、うっかり足跡でもつけたら大変とヒヤヒヤしながら作業をするのだが、黒澤さんは平気で、ずかずかキャメラの前に出て行く。周囲が「ああっ、あんなでっかい足跡を・・・」という顔をすると「大丈夫だよ、こんなところは入ってねえよ」と自信たっぷりである。よくわかるものだなあ、と私などはそれだけで参ってしまう。

 だから普通のキャメラなどもさぞ好きだろうと思われがちで、外国などへ行くと超一流のキャメラをおみやげにもらったりするのだが、実はこっちの方にはまったく興味がない。一度もシャッターを押したことがないという珍しい人である。

 黒澤さんが、『七人の侍』以後、複数のキャメラを使うようになったことは知られているが、それまでは1台のキャメラだったから『羅生門』も当然、1台だった。
 宮川一夫さんは、いったんキャメラが据わったら最後、ファインダーをのぞきっぱなしの人である。そのわきに体を寄せて黒澤さんが座り込み、二人でファインダーの取り合いのかっこうで、いつもどっちかがのぞいていた。撮影助手の平さん(本田平三)が「わしら、のぞく時あらへん」と、ぼやいていたほどである。

 黒澤さんが今でも助監督たちを怒鳴ることのひとつは「キャメラをのぞけ!」である。「キャメラをのぞいてみろ。そんなところに通行人おいたってキャメラからは見えないだろ。無駄なことするな!」とくる。

 助監督さんだってキャメラをのぞきに来ないわけではない。しかし黒澤さんのように構図を正確に頭に入れるのはなかなかできないことなのだ。

 前置きが長くなったが、『羅生門』の美しさは、あの構図のシンプルさと光と影の絶妙の感覚だと思う。
 盗賊の三船敏郎が大木の下で眠っている時、通りかかった馬上の女を見る。
「あの風さえ吹かなければ」という一陣の風が女を見送る盗賊の胸の葉影を揺らす。あの不吉な美しさ。
(中略)

 黒澤さんは、太陽が好きである。自著『蝦蟇の油』にも『羅生門』の太陽について書いている。
「この作品の大きな課題の一つは、森の中の光と影が作品全体の基調になるから、その光と影をつくる太陽そのものをどのように捕まえるかという問題があった。私は、その問題を、太陽をまともに撮る事で解決しようと思った。」―そのころは、まだキャメラマンも太陽をじかに撮るのは恐れていた。太陽光線がフィルムを焼くとさえ考えられていたそうだ。しかし宮川さんは大胆にもキャメラを太陽へ向けて振り上げ、梢越しに輝く太陽をとらえた。

 盗賊が女を抱いて無理矢理、接吻するあの場面は色々なアングルから撮った。二人をイントレ台(組み立て式の台。D・W・グリフィス監督『イントレランス』で使われたことからできた名称)の上に載せ、梢ごしの太陽をバックに仰角のカットも撮った。


著者は記録係(スクリプター)として、黒澤監督と関わったのだが、記録係の作業が語られています。

<記録>p108~111
(文字数制限により省略、全文は ここ )








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Last updated  2015.08.24 00:03:11
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