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2015.08.26
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カテゴリ: アート
図書館に予約していた『ベン・シャーンを追いかけて』という本をゲットしたのです。
大使としては、ベン・シャーンの個性的な線描に惹かれているのだが・・・
ベン・シャーンが、ことのほか日本と韓国で愛されていることに驚いた次第です。


【ベン・シャーンを追いかけて】
ベン

永田浩三著、大月書店、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
 1898年に生まれ、1969年に亡くなったベン・シャーン。激動の二〇世紀を疾走したこの画家は、絵画だけでなく、壁画、写真、レコードジャケット、ポスター、舞台芸術で大きな業績を残し、さまざまな社会問題も描いた。『W・P・A・サンデー』『幼かりし日の自画像』『解放』『寓意』『ラッキードラゴン』『美しきものすべて』…。これらの作品に、わたしたちは物語を呼び起こされ、そして自分の人生を重ね合わせる。ベン・シャーンの絵は、なぜわたしたちをひきつけてやまないのか。その答えを探しに、ゆかりの地を訪ね歩いた。
【目次】
第1章 故郷リトアニア、そしてアウシュビッツ
第2章 ヨーロッパで見つけたもの
第3章 アメリカのアート・ジャーナリスト
第4章 世の不公正にあらがう
第5章 ベン・シャーンとヒロシマ
第6章 抵抗の画家と韓国を結ぶもの
第7章 ベン・シャーンを愛する国、日本

<大使寸評>
大使としては、ベン・シャーンの個性的な線描に惹かれているのだが・・・
ベン・シャーンが、ことのほか日本と韓国で愛されていることに驚いた次第です。

<図書館予約:(8/17予約、8/22受取)>

rakuten ベン・シャーンを追いかけて


ベン・シャーンの生い立ちや第五福竜丸とのつながりが、「はじめに」に述べられています。

<はじめに>p14~16
 線というものに、特別の関心を抱くようになったのは、いつのころからだろう。線は輪郭。線は境界。線はものを結ぶこともあれば、隔てることもある。

 20代の後半、日本画の天才と言われた菱田春草にひかれたことがあった。かれは、岡倉天心というプロデューサーのもと、横山大観らとともに明治期の画壇に革命をもたらす。それまでの線を廃し、「朦朧体」と言われる面の塗り分けによって世界を新たにつかえようとした。春草は、ものの境界に線などないとさえ思いつめることがあった。

 そして、ベン・シャーン。かれの線は、ひきつれ、かすれ、ゆがんでいる。ほかのだれも使わなかったような個性的な線で描いたものは、苦悩や不正義、悲しみだった。が、絵画から受ける印象はむしろ、まっすぐなものだ。すくすく、健康と言い換えてもいい。

 ベン・シャーンが描いた『サルトルのマルクス主義』(1965年)と題する本の表紙には、ベン・シャーンがあみだした線が典型的に引かれている。このひとは、いったいどのような経験を経て、世にも不思議な線を引くようになったか。

 ベン・シャーンは、1898年9月12日、ロシア帝国内のコヴノ、現在のリトアニア第二の都市カウナスに生まれた。両親はともにユダヤ人。父は才覚のある木彫職人、母は陶芸の職人だった。手仕事を生業とする両親のもとで、シャーンもまた、手でものをつくりだす人生を歩んだ。
 シャーン一家は8歳のときアメリカ合衆国に渡った。亡くなったのは1969年。70歳だった。シャーンは、20世紀を生き、その激動を絵や写真というメディアに遺した。 

 日本においてベン・シャーンという画家は、特別な位置を占めている。多くの画家やイラストレーター、作家、評論家、平和運動家が、かれに影響を受けた。亡くなってから、半世紀近くたっても、それは変わらない。最大の契機となっているのは、シャーンが1950年代後半から60年代前半にかけて精力的に描いた「ラッキードラゴン」シリーズである。ラッキードラゴン、つまり第五福竜丸が太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁で、アメリカの水爆実験に遭遇し、「死の灰」を浴びた事件のことを、画家人生の中心課題として描いたのは、ベン・シャーン以外にいない。

 わたしが最初にベン・シャーンに興味を抱いたのも、まさに第五福竜丸事件がきっかけだった。

著者はNHKのディレクター、プロデューサーを歴任し、「クローズアップ現代」の生みの親みたいな人なので・・・
この本の示す社会性に納得した次第でおます♪

ベン・シャーン

ベン・シャーン1

線描画の達人たち より

ベン・シャーンと日本との関わりを見てみましょう。

<ベン・シャーンが希望だった>p254~256
 ベン・シャーンを追いかける旅の最後は、やはり日本になる。わたしの足で歩き、出会い、そこから浮かび上がってくるシャーンの魅力と、喚起したものを見つけだしたい。

 美術評論家の桑原住雄さんは、アメリカの現代美術で、ベン・シャーンほど日本人に広く理解されてる画家はいないと言うが、まさにその通りだと思う。シャーンの息子、ジョナサンさんの書棚を見せてもらったら、父が残した本が並んでいた。シャーンが手にした『マルテの手記』は、ドイツ語版なのか、それともアンドレ・ジッドが翻訳したフランス語版なのかを確かめたかった。残念ながら『マルテの手記』はどこかに行って、見当たらないとのことだった。そこで気づいたことは、シャーンの死後、世界各地で展覧会が開かれたが、その大半は日本で開かれたものだということだ。図録を見ればすぐわかる。わたしが見たことがある、日本語のものがどかんと場所を占めていた。

 画家の富山妙子さん。1921年生まれの93歳。世田谷のアトリエ、火種工房を訪ねた。ぜんそくの発作におそわれながらも、自作をいまきちんと整理することに執念を燃やしている。富山さんは、金芝河の詩をテーマにした絵や、日本軍「慰安婦」被害女性をテーマにした連作、最近では光州民衆抗争を闘った洪成潭さんとのコラボレーションなど、日本人の戦争責任と民主化をテーマにしてきた。「慰安婦」問題については、もっとも早く声をあげたひとりだと思う。日本では稀有な、社会に発言する画家である。画家は時代の傍観者でよいのか、なんのために、だれのために描くのか、そのことを問いつづけてきた。

 富山さんとの話は、まず安部普三総理への違和感から始まった。「『慰安婦』問題にしても原発問題にしても、秘密保護法にしても、およそ文化にたずさわるひとで、安部さんに賛成する方はいないでしょう。いまの日本は1930年代とよく似ています。とくにナチスドイツと同盟を結んだときの日本の雰囲気と似ている。わたしはその時代を知っているからわかります」と言った。
(中略)

 富山さんは1950年代、鉱山・炭鉱をテーマにした作品を発表したあと、中南米などを歩いた。富山さんは移民画家としてのベン・シャーンに着目する。

《フランスに集まっている画家たちは、富裕な家庭の子弟であったり、あるいは奨学資金を得たり、よきパトロンに出会ったりし、恵まれた者たちである。
 それにくらべて、アメリカの画家たちの経歴は、皿洗い、掃除人、運搬人、ホテルのボーイなどさまざまな下積みの労働を経ながら、美術学校に通い学んだ者たちだ。
 アメリカの画家たちが描く「ソシアル・シーン」の背景には、旧大陸から棄民としてはき出された悲劇、人種差別のはげしいアメリカで下積みの労働をして生きるとき受けた体験が、大きな原動力となっている。黒人でなくても、大都会の片隅で孤独に生きる移民の深い生活のため息、ブルースにも似た悲哀をベン・シャーンや国吉の絵はただよわせている(富山妙子『解放の美学』1979年)》







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Last updated  2015.08.26 07:07:45
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