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2015.09.05
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カテゴリ: アート
図書館に予約していた『ベン・シャーンを追いかけて』という本をゲットしたのです。
大使としては、ベン・シャーンの個性的な線描に惹かれているのだが・・・
ベン・シャーンが、ことのほか日本と韓国で愛されていることに驚いた次第です。


【ベン・シャーンを追いかけて】
ベン

永田浩三著、大月書店、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
 1898年に生まれ、1969年に亡くなったベン・シャーン。激動の二〇世紀を疾走したこの画家は、絵画だけでなく、壁画、写真、レコードジャケット、ポスター、舞台芸術で大きな業績を残し、さまざまな社会問題も描いた。『W・P・A・サンデー』『幼かりし日の自画像』『解放』『寓意』『ラッキードラゴン』『美しきものすべて』…。これらの作品に、わたしたちは物語を呼び起こされ、そして自分の人生を重ね合わせる。ベン・シャーンの絵は、なぜわたしたちをひきつけてやまないのか。その答えを探しに、ゆかりの地を訪ね歩いた。
【目次】
第1章 故郷リトアニア、そしてアウシュビッツ
第2章 ヨーロッパで見つけたもの
第3章 アメリカのアート・ジャーナリスト
第4章 世の不公正にあらがう
第5章 ベン・シャーンとヒロシマ
第6章 抵抗の画家と韓国を結ぶもの
第7章 ベン・シャーンを愛する国、日本

<大使寸評>
大使としては、ベン・シャーンの個性的な線描に惹かれているのだが・・・
ベン・シャーンが、ことのほか日本と韓国で愛されていることに驚いた次第です。

<図書館予約:(8/17予約、8/22受取)>

rakuten ベン・シャーンを追いかけて


線描画に注目して、この本を借りたのであるが、この本は読みどころが多いので(その2)として、読み進めます。

ベン・シャーンの家族について見てみましょう。

<シャーンの息子>p145~148
 5月25日。ついにニュージャージー州ローズヴェルト市のジョナサンさんの家を訪ねることになった。画家のYUKAKOさんがエスコートしてくれる。ちょうど町では、ジョナサンさんの個展が開かれていた。テーマは壁と希望。今回のわたしの旅とも重なる。囲われた空間にぽつんと人間が頭をのぞかせる。天井からわずかな光が差し込む。あらあらしい鑿跡が残る人間の首。どこかひょうきんだが、ゆるぎない意志があふれている。堂々としているというのは、こういう作品をいうのだろう。日本の彫刻家・船越圭さんとも通じるが、もう少しあたたかい気がする。

 ローズベルト・パブリックスクールの体育館。ここにベン・シャーンの壁画が残っている。画面左上には、サッコとヴァンゼッティの亡骸がある。二人の亡骸の下に自由の女神が小さく立っており、左には亀裂が走っている。自由・平等・博愛という精神はどこへ行ってしまったのか。ベン・シャーンの怒りがそこにある。

 その下には暗い船倉がある。かれらは船に乗って大西洋を渡り、アメリカにやってきた。入国審査のためには胸には番号のついたタグがついている。最前列には見覚えのある人物が。そうアインシュタインだ。かれもまた、ナチスに追われて新大陸に逃れた。1933年、ローズヴェルト大統領がニューディール政策を発表した年だ。アインシュタインは、1910年以降、くりかえしノーベル物理学賞の候補となったが、「ユダヤ人による相対性理論」などという差別的な批判にさらされ、受賞を阻まれつづけた。22年にようやく受賞したが、相対性理論ではなく、光電効果が受賞理由であった。アインシュタインは、差別・迫害を受けている研究者への支援を惜しまなかった。
(中略)

 壁画の真ん中には、縫製工場。ミシンが並び、衣服をつくる。洗濯屋としてアイロンをかける。そして労働運動。差別撤廃を求めて移民たちが立ち上がった。右は、新しい町づくり。現在のローズヴェルト市は、かつてはジャージー・ホームステッズと言い、ユダヤ人のコミュニティが形成された。人びとは暮らしやすい町を自分たちの手でつくろうとさまざまな提案をし実現させた。ベン・シャーンはこの町の議会議員を無償で3年努めたことがあった。

 ローズヴェルトが亡くなったあと、人びとは大統領を顕彰して、町の名前をローズヴェルト市に改めた。市内に大統領の銅像も立った。つくったのはジョナサンさん。除幕式には父と息子が並び、ローズヴェルト夫人が出席した。

<シャーンの息子>p151
 車で10分のところにジョナサンさんのアトリエがあった。まるで自動車修理工場のようだ。たくさんの彫刻や道具が並ぶ。机のまわりにはたくさんの切り抜き写真が、ピンで留めてあった。アイデアを得るためだという。これは父ベン・シャーンのやり方から学んだものだ。

 ジョナサンさんは言った。
「父の本名はベンジャミン。しかし、若いころからベンと名乗り、終生ベン・シャーンで通しました。父はどんなメディアにも興味を示したひとです。アイディアをさまざまに生かす。まさにマルチメディアのアーティストだったと思います。わたしも新しい作品をつくりだすために、父と同じようなことをします。
 ローズヴェルト大統領が亡くなったとき、銅像をつくろうということになりました。父が、若い有望な作家がいるといって推薦したのが、わたしでした。父は読書家で、語学も何ヶ国語もあやつりました。わたしが大人になるころは、すでにからだを壊していて、ベッドで寝ていることが多かった。わたしは、新聞を読んでいる父のことが強烈に印象にあったので、それを作品にしました」

 あおむけに寝そべりながら、新聞を読むベン・シャーン。知性と意志の強さがにじみ出ている。年齢はまさにいまのジョナサンさんと同じころだ。二人はほんとうによく似ている。作品には、父への畏敬と愛おしさがあふれていた。


ベン・シャーンに影響を受けた日本人アーティストについて見てみましょう。

<焼津出身の画家たち、そして>p264~266
 シャーンはパリ画壇になじめず、イタリア・ルネサンスのジオットによって救われた。有元利夫にも、それと同じような啓示が訪れたのではないだろうか。
 有元利夫を尊敬する彫刻家に舟越桂さんがいる。有元の絵と通じるものがある。肉体はぼってりしていて不均衡だが、人間の精神というものがたしかにある。舟越さんの彫刻作品は、だれかに似ていた。そう、ベン・シャーンの息子ジョナサンさんの彫刻だ。ベン・シャーン、有元利夫、舟越桂、そしてジョナサン・シャーン。四人が連なる魂のリレーのようなものをわたしは感じた。

 小林敏也さんは焼津の出身。そして、もうひとり焼津を故郷とするアーティストがいる。2005年に踏切事故で亡くなった、石田徹也である。飛行機と合体して飛べなくなったひと、男子トイレの便器になったひと、階段になったひと、まるでガソリンを給油するような食事をするひとたち・・・・。独自の画風で、いま若者たちから熱い指示を集める。

 父親は議員を務め、平和運動にも熱心だった。小学2年生のとき、親に頼んで、東京の夢の島に行った。そこには第5福竜丸が展示されていた。そのときの印象を、石田は作文コンクールに出し、入選した。「まっしろ船君」という題の作文。「なぜ 人間どうし、水バクをつかって、ころし合うのかと思います。ぜったい、水バクを、つかってはいやだと、思います」と書いた。

 小学校5年生のとき、クラスの旗を描いた。そのデザインは、がっちり手を握るもの。ベン・シャーンそのものだった。

 自己紹介にも、「出身地、ラッキードラゴンに接してきた。ベン・シャーンのような、絵かきになりたいと思っていた」と書いた。武蔵野美術大学に進んだ石田は、ベン・シャーンを強く意識した絵を描いた。

(中略)
 亡くなる前、石田はこんな言葉を残している。

【聖者のような芸術家に強くひかれる。「一筆一筆描くたびに世界が救われていく」と信じ込んだり、「羊の顔の中に全ての人類の痛みを聞いた」りするような人達のことだ。】


ベン・シャーン

ベン・シャーン1

ラッキードラゴンラッキードラゴン
線描画の達人たち より
『ベン・シャーンを追いかけて』1







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Last updated  2015.09.05 00:09:30
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