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2015.09.12
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『農山村は消滅しない』という本を手にしたが・・・・
日本創生会議の増田座長が発した「地方消滅」という言葉の衝撃が冷めやらぬ今、この新書での反論に期待したいのである。


【農山村は消滅しない】
農山村

小田切徳美著、岩波書店、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
増田レポートが「どっこい生きている」地方にショックを広げている。このままでは地方は消滅するのか?否。どこよりも早く過疎化、超高齢化と切実に向き合ってきた農山村は、この難問を突破しつつある。現場をとことん歩いて回る研究者が丁寧にその事例を報告、地方消滅論が意図した狙いを喝破する。

<読む前の大使寸評>
日本創生会議の増田座長が発した「地方消滅」という言葉の衝撃が冷めやらぬ今、この新書での反論に期待したいのである。

rakuten 農山村は消滅しない


著者は1970年代以降に、三つの空洞化が進んでいると説いています。
いや非常に分かりやすい説明になっています。

<三つの空洞化> よりp16~22
 確かに、農山村では、地域の空洞化が進んでいる。それを、筆者は「人・土地・むらの三つの空洞化」として繰り返し問題提起している(小田切徳美『農山村再生』2009年)。そのポイントを、改めてまとめてみよう。

1.人の空洞化
 農山村における過疎化は、高度経済成長期に著しく発現した。最初の過疎法は、1970年に「過疎地域対策緊急措置法」として制定されている。「緊急措置」が必用なほど人口減少の勢いは激しかったのである。この現実は当時の文献が雄弁に語っている。例えば、「過疎」という造語が生まれたとされる中国山地では、地元新聞社が人口流出を次のように活写している。

「この10年間に村の人口は3,4割も減ったというところが続出している。それまでが「過剰人口」だといえばそれまでだが、村に残った人たちの質的エネルギーを換算すれば、村の力は10分の1にも減ったといってもいい。しかも残った人たちが「隣がいつ町に出るやらわからず、いらいらして仕事が手につかない」と話すのを聞いた。集落の生活基盤が、用意のないまま土台から変わっているのだ」(中国新聞社編『中国山地(下)』未来社、1968年)

 民俗学者の宮本常一氏もまた、この時期の急激な変化を記録していた。

「とくに耕地もせまく、労働条件のわるい瀬戸内海の島々などの離村者は、目ざましいといえる。広島県江田島のごときは、昭和36年1月から9月までの間に、1300人が島外に去ったという。1ヵ月に145人ずつが、村をすてたことになる」
「青年団の使命感の中には、郷土をよりよいものにしようとする気持ちがつよかった。そして、農村の未来になってたつ意気込みがあった。そういうものが、急にうすれてしまってきた。都市の発展のほうが目ざましく、自分たちの少々の力で農村の建て直しなど、ありようもないという絶望感がそうさせてきたのである」(宮本常一『村の若者たち』家の光協会、1963年)

 この文献の中で、宮本氏は氏らしく、「それだけに一方では、村にのこる者に対するいたわりとはげましが必用なのである」と地域から出ない少数の若者の苦悩や孤立感に寄り添おうとしている。
 この二つの記録からも直ちに理解できるように、人口移動はあたかも何もかも飲み込む泥流のようなものであり、それに抗することは不可能であった。再び『中国山地』の言葉を借りれば、「ここ100年の間、基本的にはほとんど変わらなかった農村の生活が、この10年間、いっきょに変容の波にのまれた。その波にのまれながら、流れていく方向がわからない」(『中国山地(下)』)という状況にあったのだ。

 しかし、1970年代の低成長期に入り、都市からの吸引力が衰えたことや政策支援によって農山村の生活条件の整備が進んだこともあり、以前の雪崩のような人口流出は沈静化した。ところが、過疎化はその後、さらに第二幕に突入した。人口の社会移動により、人口ピラミッドは大きくいびつ化し、出生者数よりも死亡者数が多い人口自然減社会が始まったのである。制度上の過疎地域に限定しても、そのような変化が生じたのはそう昔のことではなく1988年のことである。

 2011年度の数字で見れば、過疎法指定市町村合計の人口減少数は13.7万人であるが、その62%が自然減であるのに対して、社会減は38%である。現時点では、過疎地域の人口減少は高齢化による人口自然減が全体をリードし、農山村の「人の空洞化」は続いている。

2.土地の空洞化
 このような高度経済成長期の「人の空洞化」は、その後「土地の空洞化」に連鎖する。しかし、それが顕在化するまでにはタイムラグがあり、約20年後の1980年代後半以降のことである。

 その要因は複合的であるが、この時期が農山村に残った親世代の農業からのリタイア期に重なったことが重要である。それは次のように説明されよう。1960~70年代の人口流出期にも地域に残った当時の中高年齢層は、その後の農業機械化によって、後継者世代がいなくとも農業が継続できていたのである。それでも、この時期になると、彼らは70~80歳代となり、さすがに営農は困難となった。
(中略)

 このような状況が次々と明らかにされる中で、農林水産省により新たに発掘された言葉が、実は「中山間地域」である。その初出は1987年のことである。日本農業の宿アは、それまでは「担い手過剰」、そして「農地不足」であった。しかしこれらの地域では、今まで経験したことがない「担い手不足」という状況が生まれていた。そうした現象は、過疎化が進んだ山間地域で顕著であった。

 山間地域とその周辺部では何が起きているのか。政策サイドがこのような問題意識で地域を特定化するために「中山間」が使われ、新たに定義された。この言葉は、元々は「中ぐらいの山間部」という意味で、中国山地の特定の地域を指す言葉であったのが、この段階で新たな意味に生まれ変わったのである。

3.むらの空洞化
 1980年代後半に顕在化した「土地の空洞化」に加えて、1990年代初頭には、「むらの空洞化」が新たに生じることになる。ここで「村」ではなく「むら」とするのは、行政村ではなく集落を表現するためである。
 その「むら」の変化を、社会学者の大野晃氏は次のように明らかにした。舞台は、1991年の高知県の山村である。

「集落にこの世帯(独居老人世帯)が滞留し、そのため社会的共同生活を維持する機能が低下し、構成員の相互交流が乏しくなり各自の生活が私的に閉ざされた「」的生活に陥り、(中略)以上の結果として集落構成員の社会的生活の維持が困難な状態となる。こうしたプロセスを経て、集落の人びとが社会生活を営む限界状況におかれている集落、それが限界集落である」(大野晃「山村の高齢化と限界集落」『経済』1991年7月号)

 フィールドワーカーの目には、集落内の人口規模縮小と高齢化が進み(人の空洞化)、農林地の荒廃(土地の空洞化)に引き続き、集落機能の著しい停滞(むらの空洞化)が確かに捉えられていたのである。「限界集落」という刺激的なネーミングやその定義、さらに一面的なその展望にかかわる氏の認識は批判せざるを得ないが、集落の実態を農林業の態様だけではなく、生活レベルで明らかにした点は、評価されるべきであろう。



<「超高齢化社会」の挑戦> よりp35~22
 80歳を超える代表者は、この地域を次世代につなぐことを何よりも意識し、それを自分たちの役目として日々活動している。また、それを受けて、同席した後継者(当時44歳)は次のように自らの思いを述べている。やや長くなるが、その発言のすべてを紹介したい。
「この地域の農地は基盤整備が済んでおり、機械化作業ができるという点でも私たちにとって非常に価値があり、それを親の世代の人たちが守ってきてくれたことに対してとても感謝している。できれば道をもう少し整備すれば他出者も帰りやすくなると思う。農業に関しては、共同作業や共同機械利用の仕組みをつくってもらっているので、自分たちの世代にとっては、やりやすい立場・条件にある。

 しかし、先々は、地元に住んでいる者だけでは集落を維持できなくなる心配もある。そのために、例えば、まちづくり組織等を活用して、今は農業に直接的にかかわっていない一般住民や都市住民、民間企業、会社等々、多くの人々や外の力も活用しながら地域をサポートできるような仕組みが必要と考えている。

 自分自身はこの歳(40歳代)になって、地域への愛着がわいてきいた。ベストセラーになっている『国家の品格』(藤原正彦、2005年)にもあるように、田園風景は人の情緒を育むのにとても大切だと思うし、かけがえのないものとして自分たちが守り、必ず子どもたちに残してやりたい。自分もこの風景の中で働いている親や隣人の姿を見ながら育ってきたし、育てられてきた。日本人にとってかけがえのないものだとも思う。

 昨今、世間では盛んに国際化が叫ばれているが、英語を勉強するよりも田んぼに入って草取りをして、人間性そのものを豊かにすることの方が、国際化にふさわしい人間を育てると思う。各地方でしかできないことを残していくことが、結果的に町や国のためになるのではないか。ここは小さな集落であるが、ここを見捨ててしまうことは国をも見捨てることと同じこと思う。小さいながらもこの地域にできることもきっとあるはず。これからも集落に愛着を持って接していくことで、自分にできることをやっていきたい」

 今はこの集落に住まない後継者でさえも、地域をバトンタッチして、さらに次の世代につなぐことを意識している。先に論じた、集落の強靭性はこのようにして維持されている。

 なお、2014年の現在もこの集落では変わらずに生活と営農が続けられている。集落代表者は90歳となっている。


ここで、ネットから木下斉氏の論説を紹介します。
人口統計だけを軸にした「地方消滅」論は、本質から目を背けさせてしまうことにも繋がりかねないとのこと・・・この短絡には注意しておきましょう。

2014/10/27 「地方創生」論議で注目、増田レポート「地方が消滅する」は本当か? 木下斉 より
安倍政権は、今国会を「地方創生国会」と位置づけ、国会では地方活性化に向けた政策についての議論が始まった。「地方創生」という考え方に大きな影響を与えたとされているのが、「2040年までに896の自治体が消滅する」と予測した日本創生会議(増田寛也座長)の発表である。これに対し、数々の地方都市の街づくりのプロジェクトにかかわる、木下斉(きのした・ひとし)氏は、「地方消滅という言葉が一人歩きしている」と警鐘をならす。地方が抱える課題とは何か。木下氏に聞いた。


 元総務大臣の増田寛也氏が代表を務める、日本創生会議が「地方消滅」を唱えたことで、「人口減少社会」、そして「消滅可能性自治体」の議論が大きくクローズアップされています。そして、安倍政権は、今国会を「地方創生国会」と位置づけ、地方活性化に向けた政策について議論するとしています。
(以降、ネット参照)









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Last updated  2015.09.13 00:14:53
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