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2015.09.18
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カテゴリ: 自然・環境
ほぼ正方形の装丁と掲載した写真が・・・わりと哲学的テイストで、ええでぇ♪

この本はINAX BOOKLETシリーズの一冊であるが、製造業企業の余技にしてはよくできていると感心するわけです。



土

井波律子、他著、INAX出版、2002年刊

【目次】(「BOOK」データベースより)
土・泥の意味は?/世界の土・泥の言葉/土と泥・中国の神話・文学を繙く/写真構成1 土泥の貌/座談会 土泥の想像力・地球からみた土、人間からみた土/写真構成2 土泥のちから/土泥年表/土泥の利用

<読む前の大使寸評>
ほぼ正方形の装丁と掲載した写真が・・・わりと哲学的テイストで、ええでぇ♪

この本はINAX BOOKLETシリーズの一冊であるが、製造業企業の余技にしてはよくできていると感心するわけです。

rakuten 土泥礼讃


土に関わる識者の座談会を見てみましょう。
松井孝典:地球惑星物理学
神崎宣武:民俗学
小林澄夫:「左官教室」編集長
井本英一:民族学、比較文化学


<約4億年前に土は生命から誕生した>
Q:約46億年前に地球が誕生し、その後、約4億年前に地球上に土が誕生したとされています。地球史という観点から見ると、土はどのような変遷を辿ってきたのでしょうか。

松井:ひと言で土といいますが、じつはその定義のしかたによって、いろいろな土がありますから一概には言えません。今おっしゃった約4億年前に誕生した土というのは、地球の生物圏に存在する土壌のことです。地球の表層を覆っている、有機物をたくさん含んだ土のことを土壌と定義している。

 しかし、大気に接している地表の物質を土壌と定義づければ、地球の歴史のもっとも古い時代に、地球の表面にあった土も土壌といえる。専門用語で古土壌、「パレオソル(paleosol)」といいますが、今は岩になっています。当時の地表には微生物がいるわけじゃないから、先ほど言った生物圏の土壌とは違います。

 また、月や他の地球型惑星の表面を覆っているものも、ふつう土といっていますが、あれは現在の地球でいう土ではない。月面着陸した当時は「ルナ・ソイル(luna soil)」といっていましたが、紛らわしいので今は「レゴリス(regolith)」という用語を使っています。レゴリスは、小惑星や隕石の衝突によって天体の表面に無数のクレーターがつくられたときに、周囲に飛び散った粉体が堆積したものです。

 火星の表面を覆うのも同じくレゴリスです。このレゴリス中には生命が存在しません。ですから地球上の土壌とは、定義が違う。このように、どう定義づけるかによって、土の捉え方が違ってくるんですよ。

Q:今回取り上げようとしているのは、生命体とのかかわりのある土ですから、定義としては土壌ということになるんですね。

松井:4億年前以降に誕生した、生物圏の一部である土壌ということになります。これは、海から生命が上陸したのち、微生物の働きと風化作用によってつくられたもので、有機物がたくさん含まれている。よく「」という言い方をしますが、植物が芽を出すという意味では正しいけど、土から生命が生まれてきたわけではない。理論的にも実際にもまったく逆で、生命が土を生んだというべきです。

 生命は38億年ぐらい前から存在していますから。生命がいる惑星でないと、皆さんの知っている土壌は生まれないわけです。

Q:4億年に及ぶ長い歴史のなかで、土は変化してきたのですか。

松井:画期的な変化は、約1万年前に現生人類が農耕牧畜を始めて、人間圏を形成したときでしょうね。それまでの生物圏にはなかった、いわば人工的な生態系をつくり出したわけです。それによって土壌ももちろん変わりました。

 しかし、地球史全体からみてもっとも大きく変わったのは、人間が加速度的に物質の移動の時間を速めるようになったということです。現在の我々の1年を地球時間に換算すれば、10万年に相当する物質やエネルギーの移動をわずか1年でするようになっています。

神崎:それは具体的に言うと、どういうことですか。

松井:わかりやすい例で言えば、こういうことです。現在、日本はオーストラリアから鉄鉱石を買って、2週間から1ヵ月ぐらいかけて船で運んでますよね。そんなことをしなくてもオーストラリア大陸は、いずれ日本列島とぶつかるわけですよ。

小林:エー!(笑)

松井:つまり地球上には、地球固有の物質の移動時間というものがあるわけです。その固有の移動時間を速めているのが、我々現生人類がやっていることなんですね。地球システムの循環のタイムスケールを、ものすごい勢いで速めている。

 それはすべてについていえます。遺伝子操作も同じで、もともと進化というのは現象としては遺伝子操作そのものなんですが、それを恐るべき速さでやるから問題なんです。

 ところが科学や技術を知らない人は、それは科学技術が悪いんだと発想する。自然科学は本来いいも悪いもないんです。なのに現在我々が直面する文明の問題の原因を全部科学に押しつけて、近代科学が悪いという。とくに最近、環境問題に関連して自然保護運動をやっている人たちが大勢いますが、彼らは自然や自然科学が何なのかということをあまりにも知らない。そういう意味であえて挑発的に言っているんですが、誤解されると困るけど。

Q:ところで、現生人類が登場したとされる旧石器時代に、すでに「大地母神」信仰があったといわれています。それは人類が土に対して、早くから特別な思いを抱いていたということなのでしょうか。

ヴィーナスヴィーレンドルフのビーナス像

井本:3万年くらい前の、ヨーロッパの旧石器時代の遺物に、地母神像が出てきます。皆さんよくご存じの、胸と腰が大きく膨らんだ女神像で、ヴィーナス像とも呼ばれています。「母なる大地」を崇めるのが大地母神信仰ですが、ではこれは農耕生活が始まってから出てきたかというと、必ずしもそうではないんですね。狩猟採集をしていた旧石器時代にすでに見られます。

 この「母なる大地」への信仰は、人間は死ぬと魂が山に戻って野獣になる、という考えになっていきます。たとえば私が死にますと、イノシシになって、イノシシが死ぬとウサギになり、次はオオカミになるというように、あらゆる人がそれぞれの動物に変わっていって、ずっと循環していく。
(以降省略)

土壁が見直されてきたようだが、建築方法の見直しとまではいかなくて、わりと高級な家屋向けというのが辛いところか?
<土壁と泥の不思議な魅力> よりp33
Q:最近、また土壁が復活してきています。小林さんは雑誌『左官教室』の編集を30余年やってらして、そのあたりの動きをどう見てらっしゃいますか?

小林:東京オリンピック前までは、日本の住宅はみな、竹で木舞を組んで泥を塗るという土壁がふつうでした。その後、壁材が石膏ボードに変わって、塗り壁は衰退していった。東京オリンピックを堺に、住宅の建設現場の音が変わってしまったという印象が強いですね。カンナをかけたり、クギを打ったり、壁を塗ったりする手作業の音が、石膏ボードや合板を打ちつけていくマシンガンのような機械音に変わって、とにかくうるさくなった。暴力的な音の洪水です。

 この仕事を始めた頃は、コンクリートと鉄とガラスでつくる現代建築や住宅を扱ってましたから、土壁とつきあうようになったのは、ここ14、5年のことです。

Q:全国を旅して、さまざまな土壁の美を再発見されています。
土塀版築土塀

小林:東京がイヤになって。都市が好きじゃないですから。日本全国どこへ行っても、都市は均質化されて同じ顔をしてますからね。

 僕が塗り壁に惹かれるようになったのは、たまたま奈良の葛城古墳や山辺の道で、納屋の泥壁を見たのがきっかけです。野良のはずれにぽつんと建っているシンプルこのうえない小屋なんだけど、これがなんともいえず美しくて、味わい深いんですね。

 泥壁の泥には、色土や砂利や砂や藁などが混ぜられてますから、その微妙な色合いや質感が美しさを生んでいるんだと思います。単純素朴のようでいて、決して単一でも均質でもないところがすごい。今の都市とは対極にあります。





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Last updated  2015.09.18 15:18:37
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