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2015.09.19
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カテゴリ: 中国
朝日新聞の記事「 書棚から見える中国 書店「万聖書園」
この本は、なかなか根性の入ったフィールドワークとなっているようです。



中国

阿古智子著、新潮社、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
焦燥、怨嗟、慟哭、絶望…「格差」が人間を破壊する!中国建国65周年、共産主義の理想は、なぜ歪んだ弱肉強食の社会を生み出したのか。エイズ村、農民工、学歴競争、役人汚職、ネット世論、反日デモ…中国社会の暗部に深く踏み込んだ研究者による衝撃レポート。格差社会の臨界点へと突き進む隣国を、ソフトランディングに導くことは可能なのか。日本人必読の書。
【目次】
第1章 エイズ村の慟哭/第2章 荒廃する農村/第3章 漂泊する農民工/第4章 社会主義市場経済の罠/第5章 歪んだ学歴競争/第6章 ネット民主主義の行方/第7章 公共圏は作れるのか

<読む前の大使寸評>
朝日新聞の記事「 書棚から見える中国 書店「万聖書園」 」で、この本の存在を知り図書館に予約を入れたら、二日後にゲットできたのである。ラッキー♪
この本は、なかなか根性の入ったフィールドワークとなっているようです。

<図書館予約:(9/15予約、9/17受取)>

rakuten 貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告


フィールドワークとしての筆者のスタンスが「はじめに」に述べられているが・・・・
中国の戸籍制度に着目するなど、しっかりしてるでぇ♪

<はじめに>
 北京で生活していた8年前、自転車でさまざまな場所に行った。外国人であることが目立たないように、ラフな格好でボロ自転車に乗っていると、警察に「農民工」と間違えられ、身分証の提示を求められたことがある。

 「農民工」とは、「農民」でありながら、「工人」(ワーカー)であるという、矛盾した概念である。中国には農業戸籍と非農業戸籍を区分する制度があり、農業戸籍を持ちながらも、都市に出稼ぎに来る人々を「農民工」と呼んでいる。暫定的に居住する許可を得なければ、農村に連れ戻される。

 北京では、重要な会議が開かれる時期に入ると、警察は規制を強める。許可証を持たない農民工たちは次々にバスに乗せられていた。パスポートも外国人居住証も携帯していなかった筆者も、危うく連れて行かれそうになった。

 中国の戸籍制度は一種の身分制度である。社会保障、土地所有、納税、教育や医療に至るまで、どこに戸籍地があるかによって、内容が変わってくる。中国において、経済成長が著しいにもかかわらず、所得格差が縮まらないのは、戸籍制度が主な要因であると筆者は考えているが、筆者が教えている中国人留学生のなかには、「今では移動は自由にできるし、戸籍は関係ない」と話す者もいる。都市部出身で、戸籍制度の恩恵を受けていると、この制度の持つ不平等さが実感として分からないのだろう。

 農業だけでは生活できない、或いは都市部で新たなチャンスを見出したいと考える農民たちは、農民工として都市に出稼ぎに来るが、戸籍所在地でない場所では、住民サービスを受けることができない。保険にも未加入の者が多く、医療や教育も十分に受けられない。学歴の低い単純労働者は、働いても、働いても、ステップアップできず、何年経っても、都市社会の主流には入っていけないのである。

 日本も、「ワーキングプア」に代表されるように、中国における農民工と共通する問題を抱えている。私たちはあまり気付いていないが、中国が経験しているような根の深い矛盾を、日本も抱え込んでいるのではないか。エスノグラフィック・スタディで中国の人々と関わりながら、そのような見方をするようになった。「自分がどこに立っているのか」を自覚しようとするなかで、中国ではなく日本を、そして自分自身を見ていることに気がついた。

 中国の問題は対岸の火事ではないのである。


まるで奴隷のような農民の実態がレポートされています。
p49~60
<戸籍制度が規定する「農民」>
 都市と農村の格差が縮小しない背景には、中国特有の戸籍制度がある。戸籍制度とは1958年から実施されている国民を「農業戸籍」と「非農業戸籍」に分ける制度である。重工業を重視していた計画経済時代、都市住民に対する食糧供給を安定させ、社会保障を充実させるために導入された。制度の一部は現在も継続しており、経済格差が拡大する中、財政力の弱い農村地域の戸籍を持つ者は、基本的な社会サービスさえ満足に受けることができない状態に置かれている。

 このような戸籍制度があるために、中国では、経済発展に伴って第二次、第三次産業が成長しても、農村戸籍によって規定される「農民」が減少し、都市戸籍をもつ「市民」が増えるという、自然な人口の移行が起こるわけではない。「農民」と「市民」が受給する社会保障の内容が大きく異なっていることもあり、都市と農村の格差は縮まらないのである。
(中略)

<不公平な農業税制度>
 農民工の中には、長く都市で暮らしている者や家族も共に移住している者もいる。しかし、中国の法律では、医療や教育など、基本的なサービスは戸籍地で受けることになっているため、移住先の都市では、彼らは「二級市民」に位置づけられるといっても過言ではない。経済格差が大きく、全国統一の社会保障を整備するだけの財政力もない13億人以上の人口を抱える国家にとって、安定した統治を行うためには、戸籍制度は捨てようにも捨てられない制度である。しかし、農民にとってはあまりにも差別的であり、各方面において不利な条件が与えられている。たとえば、そのうちの一つに、不公平な税制がある。

 中国政府は、2006年に廃止するまで、農業税を徴収していた。このように農業に対して特定の税を設ける国は、世界のなかでも非常に珍しい。たいていの国では、サラリーマンから徴集するのと同様に所得税を、工業製品などと同様に農産物に対して流通段階における消費税などを課している。しかし、中国の場合、所有農地の面積と平年の農業生産量にしたがって一定の税率の農業税を課し、それ以外にもさまざまな費用を徴収していた。

 また、都市のサラリーマンの所得税は月額1600元(約2万2000円)を超えた分に対して累進課税されていたが、農業税に対しては免除額を一切設けていなかった。したがって、凶作の年でも、耕作放棄している場合でも、全額徴収されていた。

 農民たちが疑問を抱くのも無理はない。その上、農業税の他にも、「三提五統」と呼ばれる公共事業等を進めるための費用が徴収されており、三提五統にも該当しない項目についても、さまざまな名目で集金が行われるようになったため、1990年代後半には、過剰な負担に耐え切れなくなった各地の農民たちが納税を拒否するようになった。

<烏蘭蘇村の農民たち>
 2001年12月、筆者は農民の貧困の実態を把握する為、中国人ジャーナリストの王南と共に内蒙古自治区赤峰市の烏蘭蘇村へ向かった。

 烏蘭蘇村は中国でも最底辺に位置する人口900人程度の貧しい村である。人々はトウモロコシ、小麦、アワ、ヒマワリの種、大豆の栽培を主な生業としているが、農作物価格が調査した時点で、7割以上の家庭が借金を抱えていた。多少なりとも現金収入を得るため、都市に出稼ぎに出る者も増えており、ところどころ荒れたまま放置された農地があった。

 筆者は村に滞在した間、王秀の家に世話になった。王秀は身長180cm近い大男で、日焼けしてどす黒くなった顔には、皺が何本も刻み込まれ、50代後半だが、60代後半ぐらいに老けて見える。顔を合わせる度に親しみを覚える訛りで「」と筆者を呼び、にやっと笑うと皺が何重にも重なり、なんともいえない温かい表情になる。

 王秀ら村の人たちは、毎日朝から夜遅くまで、村の状況を事細かに話してくれた。王秀は、村の仲間たちと共に上級政府や党の関係機関を訪れ、腐敗した村の役人たちによる公有林の違法伐採や公金横領や税・費用の不正徴収に対する損害賠償を求めているという。話を聞くうちに、戸籍や農業税などの差別的な制度だけではなく、さらに役人たちの目に余る腐敗・不正が、彼ら農民を苦しめていることがわかった。

 「土皇帝(村の最高権力者である劉芳・共産党支部書記を村人たちはこう呼ぶ)は、日がな一日マージャンをし、遊び疲れると村の食堂で、つけで飲み食いしている!」
(中略)
 村人たちは、劉書記ら役人たちの腐敗や不正に関する話を、口々にまくしたてた。

 冬の烏蘭蘇村は緑が一切見えず、黄土色一色の大地が広がる。村人たちによると、100年ほど前には、山々に白樺や松の木が青々と茂り、岸辺の湿地帯にアシが密生する水量の多い川が流れていたという。しかし今では川の水は涸れ果て、草が所々生えているだけだ。村の姿が変わり果ててしまった原因は、自然環境の変化だけではない。村人たちが大切にしていた公有林が違法に伐採されたからだという。

 村人たちの案内で樹木がほとんどない禿山に登ると、羊飼いが羊の群れを前に進ませていた。筆者がのどかな情景に見とれていると、村人の楊文和が地面に残された車輪のあとを指差し、鋭い目を向けた。

 「これが、劉書記らが公有林を破壊し、木材を運び出した証拠です。切り株を数えれば5000本どころで済まないことは明らかでしょう。我々は5万本に上る木が伐採されたと見ているが、林業局は認めようとしません。これだけの木材を売り捌いたら、一体いくらになるのか。すべては劉書記たちの懐に消えてしまったのでしょう」 

<農民負担問題>
 華中師範大学教授の項継権の研究チームが、湖北省京山県で農民負担の状況を詳しく調べているが、それによると、負担増加の原因は、(1)地方の役人が成績を上げようとして、義務教育普及、産業構造調整、公共設備の建設などに関して無謀な目標を設定した、(2)財務管理の混乱、接待費や公務員給与の膨張、公金の私的流用などによって生じた損失を補填しようとした、(3)未徴集分の税・費用を解消しようとしたからである。

 失政のつけを農民に押し付けたところで、ただでさえ重い税負担に苦しむ農民たちに払えるわけがない。中国語で「釘子戸」と表現される、「釘のようにしがみつき、頑固に納税を拒否する農家」が増えた京山県では、1998-2000年、未徴収の農業税が全体の25%にものぼった。

 1999年の同県の財政収入は約8500万元であったが、2000年7月末には1億2700万元の借金を抱えるまでになり、県下の郷鎮や村の借金も累積していたため、公共事業は大幅に滞った。道路や水利施設が未整備のまま放置され、農産物価格が下落する中、耕作請負の任務を放棄し、都市に出稼ぎに行く者が増加した。

 この頃、京山県では約6700ヘクタールの耕地が荒れたまま放置されていたという。同県内の曹武鎮では、全耕地面積の5分の1が耕作放棄の状態で、約100万元の税金を徴収することができなかった。税金の上納義務を果たさなければ、地方の役人は出世できなくなるどころか、処罰される恐れさえある。そのため、高利貸しから資金を調達することが常態化し、返済額が雪だるま式に膨らんだ地域もある。








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Last updated  2015.09.19 00:12:31
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