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2015.10.27
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カテゴリ: 歴史
図書館で『実証 古代朝鮮』を手にしたが・・・
この本は漢字についてかなりの割合をさいていて、大使のツボがうずくわけです。



古代

井上秀雄著、日本放送出版協会、1992年刊

<「BOOK」データベース>より
一衣帯水の隣邦、朝鮮半島の歴史と文化その特徴と独自の発展過程の原因はなにか。現地踏査と綿密な資料分析で説く古代朝鮮文化史。
【目次】
第1章 ぬりかえられた古代朝鮮史-歴史と文化の特徴(古代国家の成立と地理/物質文化からみた特徴-墳墓と都城/神話と伝説にみる政治の理想像と民族性/精神文化の受容と国際交流)/第2章 王権をめぐる民族の興亡(連合体制国家への道/小国家の群立と統合/三国抗争と隋・唐王朝/解明された南北国時代)/第3章 よみがえる栄光の古代文化(異体文字の世界/城郭の変遷/律令の官制と祭祀/それぞれの王者像)

<読む前の大使寸評>
この本は漢字についてかなりの割合をさいていて、大使のツボがうずくわけです。
漢字文化圏では、日本語だけに訓読が発達したが、これが漢字習得にとって決定的に重要だったようですね。

rakuten 実証 古代朝鮮
実証 古代朝鮮 byドングリ


漢字文化圏に括りのある大使としては、東アジアの文字文化のあたりが気になるのです。異体文字というものも興味深いのです。
異体字異体字


<5~6世紀の文字文化の交流>
 次に、百済「武寧王陵第一誌石」の異体文字を通じて、その文化交流の経路やその意義を考えてみたい。

 百済の金石文で現存最古のものは、武寧王陵から出土した二つの誌石である。第一誌石は、525年に作られ、その表面に武寧王の死去と埋葬の年月日を刻んでいる。52文字中、寧・将・年・歳・月・朔・冠の7字の異体文字がある。これらの異体文字の源流を探ると、次の三つのグループにわかれる。第一は南北両朝の通用字形、第二は北朝系の字形、第三は南方系の字形である。

 第一の南北両朝の通用字形は、将・歳・朔の3字である。当時の中国の字形の伝播経路をみると、南朝では楷書風の字形が好まれ、新しい字形が作られた。新しい字形は、皇帝など身分の高い者がまず使用し、しだいに身分の低い者や地方に伝わった。北朝では、南朝の新字形を受けいれるが、その受容にあたって、そのまま受けいれたものと、変えられた字形とがある。そのまま受けいれたものを南北両朝の通用字形といい、変えられた字形を北朝系の字形という。
(中略)

 百済は武寧王代には、北方の高句麗や靺鞨(まつかつ)と争い、漢江流域の争奪に明け暮れていた。中国王朝との国交は、南朝の梁のみで、北朝とは使節の交換が行われていなかった。また墳墓の形式なども南朝様式といわれ、百済のこの時期の文化は、すべて南朝文化の受容と考えられてきた。しかし、第一誌石のこれらの6字の異体文字をみると、南朝の字形ではなく北朝系の異体文字が使用されている。このことからいえば、百済の文化は、南朝一辺倒でなかったことが知られ、6世紀前半の文化交流の経路を見直す必要がある。

<東アジアの文字文化> p146~151
 中国周辺の諸民族中、今日まで漢字文化圏にとどまっているのは日本だけである。日本では文字として漢字およびその変形である仮名しか使用しなかった。日本人がはじめて漢字に接したのは、後漢の光武帝が建武中元年(57)に奴国(福岡市)の王に「漢倭奴国王」の金印を与えたときからである。

 次いで『三国志』倭人伝によれば、景初2年(238)以後、倭国の使節が魏の都(洛陽)や帯方郡に往来し、国書を交換したという。また、漢族の諸国とも文書の交換が行われていたらしい。しかし、このときの倭王の国書や文書は具体的に記録されていないので、詳しいことはわからない。

 国書の具体的な例は『宋書』倭国伝に魏の詔書にこたえる倭の武王の上表文がみられる。この上表文は、みごとな漢文として後世永く賞賛された。

 この時期の日本内部では、漢字が伝達機能をまだもっていなかった。当時日本の国内では、文字は意志の伝達ないしは地方行政として利用されず、せいぜい文字の呪術性を利用していた程度とみられる。

 この上表文から5世紀の北九州の倭国には、文字文化にかなり熟達した外交担当者がいただけでなく、倭国の漢字文化の浸透度は、その王名からみても、高句麗・百済に次ぐものといえよう。

 しかし、5世紀の大和の漢字文化の理解度は誤字の多い稚拙な漢文の隅田八幡の銅鏡銘程度とみられる。武王の上表文に匹敵する漢字文化を大和の知識人がもつようになるのは、『日本書紀』や『懐風藻』の編纂される8世紀を待たなければならない。

 日本の国字・国文は、次のような経緯をへてできあがった。国文の特徴は、漢文と文体を異にし、助詞などの虚辞を加えることである。まず文体の国字化は史部流にはじまり、次いで虚辞を漢字の間に加える宣命書へと発展する。

 国字の場合は新羅文字・契丹文字・西夏文字などのような結合文字ではなく、高句麗文字・チェノムにもみられる省略文字の系統である。

 国字化の過程は、まず文字の意味を日本語風に読む訓読が異常に発達した。次いで訓借文字が著しく発展したなかで、万葉仮名などの音借の漢字が定着した。平安時代初期(9世紀)には万葉仮名を草書風にくずしたものがあらわれ、平安時代中期にはほぼ、ひら仮名が定着してくる。カタ仮名は奈良時代(8世紀)以後、学僧が仏典の読み方や注解などに漢字の略字を用いたことからはじまる。

 新羅の金石文では、漢字を使用しながら新羅語を表記しようとした吏読的な書法が早くからあった。朝鮮では漢字を日本のように訓読することはなく、すべて音読である。そして、その漢字音も日本のように呉音・漢音・唐宋音とわかれていない。朝鮮の漢字音はベトナム語と同様、一音一字であるが、7世紀以降の唐代音ないし、11世紀の宋代音が多い。

 また、漢文の音読法も、日本で後世返り点や送り仮名をつけて読むような読誦法でなく、漢文の語順にしたがって漢字音で音読し、その間に助詞・助動詞などをあらわす音を送り仮名ふうに補って読んでいる。換言すれば、日本では漢文を日本語化してしまったのに対し、新羅では漢文を生かしながら吏読を補足したといえる。

 このような漢文の日本化と朝鮮化との違いは、中国文化の受容の仕方の違いとして重視しなければならない。とくに11世紀は、契丹族の侵入があったとはいえ、高麗文化の全盛期で、中国王朝の政治支配が直接高麗におよんでいなかった。それにもかかわらず、この世紀に、高麗が積極的に宋の言語文化や文字文化を受容している。

 新羅語の流れをくむ朝鮮の漢字音のなかには、唐の長安音が多い。これは、新羅と唐との間には670年代に苛烈な戦闘が行われたが、その間も含めて新羅が積極的に唐の文化をとりいれたためである。これに対し、13世紀から14世紀にかけてのモンゴルの高麗支配では、唐や宋ほどの影響を与えていない。

 朝鮮語と日本語とは、言語や文章の構成できわめて類似したところが多い。吏読の書体は宣命書と一見きわめて類似したものになっている。違うところは、宣命書では漢字まで和訓で読んでいるのに対し、吏読では漢字を唐音や宋音で読んでいるところだけである。 
(中略)
 漢字を変形して民族文字を作ったのは、朝鮮がもっとも早く、次いで日本である。この種の民族文字は、契丹文字や女真文字や西夏文字などに展開していく。これとは別に、中国周辺の諸民族では、漢字文化圏を脱却して、別の文字文化を作りはじめた。それはモンゴル文字にはじまり、17世紀のベトナム文字にいたるまで広くみられる。

 東アジアの文字文化は、支配階級の漢字・漢文の使用と、国民の民族言語を基盤とした民族文字の形成との、二大潮流がみられる。東アジア諸地域の支配者は、漢字・漢文を使用することによって、支配者間の連帯意識を強めるとともに、国内の政治的・社会的権威を維持・発展させようといてきた。そしてその権威づけとして、漢字文化を高度な文化として称賛し、その立場にたって、歴史書が編纂されてきた。

 これに対して、民族言語を基盤とする独自の文字への憧れは、文字文化が国内政治や国民生活に使用されはじめると、ただちにあらわれた。支配者たちは、民族言語の文字化を低級な文字文化と規定し、その使用を極力おさえようとしていた。しかし、国民の文化意識の高いところでは、民族文字が早くから普及し、漢字・漢文は国際関係の分野にのみとどめ、国内政治では、民族独自の文字文化を発展させた。


漢字文化圏では、日本語だけに訓読が発達したが、これが漢字習得にとって決定的に重要だったようです。・・・・韓国の悲惨な漢字状況を見るにつけ、そう思うわけです。

なお、韓国の悲惨な漢字状況については 漢字の世界 に取りまとめています。

異体字同定一覧 史料編纂所データベースより






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Last updated  2015.10.27 00:08:42
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