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2015.12.04
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カテゴリ: 歴史
図書館で『闘魂硫黄島』という本を手にしたが・・・
いわば、中堅の軍事官僚が体験した参謀本部や硫黄島の防衛方針が綴られているわけで・・・戦記オタクの大使にとって興味深いのです。



闘魂

堀江芳孝著、光人社、2005年刊

<「BOOK」データベース>より
日米四万二千の死傷者を出して、砂浜を鮮血にそめた太平洋戦争最大の激戦場・硫黄島ーなぜ日本軍は東京の玄関先で孤立無援の死闘を展開したのか。そして硫黄島の攻防戦が世界的に有名になった理由はなにかー守備計画に参画して、飛行場を海に沈めることを主張した異色参謀が貴重な資料と体験で描く感動作。

<読む前の大使寸評>
いわば、中堅の軍事官僚が体験した参謀本部や硫黄島の防衛方針が綴られているわけで・・・戦記オタクの大使にとって興味深いのです。

rakuten 闘魂硫黄島


44年の春に、これだけ兵站の崩壊が見えていたら、終戦工作を始めるのが参謀本部の役割だろうが!・・・バカタレどもが!

<1944年春の陸海軍中央部の対潜対策> p33~34
 誰かが日本の財産から見て、毎晩四国の島ぐらいが沈んで行くことになるねと言っていたのを記憶している。

 保有船舶が580万トンあれば長期戦に堪えるなどという昔物語はすでにどこへやら、軍隊船に対するよりも石油船団、ボーキサイト船団および鉄鉱石船団に護衛の重点を国策上おかなければならないという、人道上まことに嘆かわしい状況に立ちいたった。

 陸軍はやっきとなって海上護衛問題を御前会議に持ち込むという非常手段に出たり、陸軍機の海上護衛を強化して鈴木宗作中将を団長とする大本営海上護衛視察団(江口海軍中佐と私が海上護衛総司令部より加わった)を沖縄-台湾-フィリピン-ボルネオ方面に派遣したり、鐘紡に潜水油送船の試作を命ずるといったてんやわんやの騒ぎとなった。

 九時に私の報告を聞くや荒尾大佐はすぐに東条総長に報告し、東条大将は電話で嶋田軍令部総長を呼び出し、前夜の沈没船舶に対する護衛問答が始まるのであった。

 東条大将は、海上護衛は全般戦争の鍵であるとして実に身体をすり減らして働いた。また海軍内には東条の鞄持ちなどと悪口をいう者が多数いたが、嶋田大将の協力ぶりもみごとであった。陸海軍中央部の不安と苦悩ははなはだしく、私から見ると、貧乏家の親爺(東条)がねじり鉢まきで親戚の重患者(現地軍)の所にかわいい娘(船)を看病に送ろうとするが、女房(嶋田)の懐はからっぽで汽車賃も出ない。

 そこで狼の群がる夜の魔道に泣きながら娘を出す。途中まではドラ息子の長男(連合艦隊)について行けといっても自分の用事で手が離せない。そこで孝心深い病身の二男(海上護衛総隊)が病床をたって玄関先まで見送るが、娘も二男もともに狼の餌食となるという風に見えて仕方がなかった。


戦闘の約半年前に、非情で英雄的な洞穴作戦が決定されたようです。

<水際作戦か洞穴作戦か> p108~111
 8月11日午後1時、海軍から浦部参謀、市丸少将、間瀬中佐、赤田大尉がきて、参謀室が会議場となった。陸軍からは兵団長、堀参謀長、西川参謀、吉田参謀と私が出席した。

 浦部参謀は海軍中央部の意向であると前置きして、「海軍で兵器資材全部を輸送するから陸軍から兵力を出し、第一飛行場の周囲にトーチカを何重にも作ってほしい。兵器は25ミリ機銃。数は約300個。第一飛行場以外には敵の上陸地は見当たらないから、ここに敵が上陸できなければ難攻不落となる」という説であった。
 浦部中佐は陸軍歩兵学校学生の過程を修了し、海軍きっての陸戦通であるとのことで実に好感の持てる紳士であった。

 私はただちにこれに反撃を加えた。
 「サイパンでもグアムでも、海岸砲が何分間の生命を保ち得たか承りたい。タラワの海岸トーチカがどれだけの効果があったか教えてほしい。ペリリュウ島が長持ちした理由をご存じですか。穴の中に隠れて狙撃したからですよ。他に手はないのです。何百機という飛行機と何百門という艦砲に主面きって対抗しようなんて話になりませんよ。今までの戦訓からそれを教えているではないですか。まして25ミリ機銃あたりをトーチカに入れて敵の艦砲射撃に対抗することは、児戯に類することである。40センチの主砲でトーチカそのものがふっ飛んでしまいますよ。

 敵を揚げないとか水際撃滅とかはでなことをして、この硫黄島が何日もちますか。陸海軍三位一体の敵に陸兵だけで戦闘するんですよ。もし海軍にそれだけの資材と兵器があるあらば摺鉢山と元山の方、つまり飛行場の両側に洞穴を作ることに用いてほしいです」

 私は非常に興奮してこういいきった。
 兵団長は「堀江参謀の意見に同意します」と決断を下した。
 浦部参謀は内地の情勢その他を語り、熱烈火を吐く語気で兵団長の翻意を懇請した。特に「海軍裨益の堀江参謀の反撃を受けるとは意外でありました」と笑った。

 私は「サイパン、サイパン、グアムとペリリュウの戦訓を知らなかったとしたら、双手をげて賛成したでしょう。今となっては私の良心が許しません」といって断じて折れなかった。

 やがて参謀室で早い夕食となり、浦部参謀と私とは個人的に大変親しくなったが、その夕はこのトーチカ論争は物別れとなった。浦部参謀は今晩ゆっくり考え直してほしいと私の肩を叩いて引き揚げて行った。

 翌12日朝早く、兵団長は参謀室の前に現れた。
 「堀江参謀、トーチカの件は戦術的には君のいうとおりだが、海軍が持ってくれるという兵器資材、特にダイナマイトとセメントは馬鹿にならんぞ。機銃だって300挺もあれば大変なものだ。そこでどうだ。半分を海軍の説どおり使用し、残りをこっちで使うという条件にしたらどうだろう」
 という。
 「閣下がこのチャンスを政治的に利用されるなら結構だと思います」
 と私は答えた。
 海軍に電話するや、浦部参謀と市丸少将が自動車でとんできた。参謀室が再び会議室となった。赤田大尉を除けばメンバーは昨日と同じであった。

 兵団長は「トーチカ作りは陸軍がやるのですから提供者のご希望にそって半分、あと半分は陸軍の使用にまかせるという折衷案でいかがでしょうか」と切り出した。

 浦部参謀と市丸少将は軽く頭を下げた。一言も発するものはない。しばらくして、浦部参謀が昨日約300個と申しましたが必ず300個以上むしろ350個分お届けするように帰って処置致しますといった。兵団長と私と浦部参謀はお互いに顔を見合わせニコリとしたが、誰か発言しそうなものだと腹のさぐり合いのような時間があり、一同お茶を飲み、煙草に火をつける者も出た。

 兵団長だったか私だったか、とにかくどちらかがこう提案した。

 「海上輸送を含む提供者は海軍。飛行場の南海岸と西海岸に合計して165個のトーチカを作る。他の兵器資材は陸軍で使用する。毎日陸軍は1千名の作業員を出す。吉田参謀が築城指導に当たる」

 一言も発する者なくこの提案は受理され、トーチカ論争は終止符を打った。実際には原少佐の指揮する歩兵第145連隊第1大隊を主力とする千名前後のものが半年かかって135個まで作ったそうである。


著者が語る思い出の人を見てみましょう。
p231~234
<市丸海軍少将>
 海兵第41期とのことであるから、陸軍の第26期に相当するわけである。海軍が生んだ名パイロットで、未亡人の話では海軍予科練習生の設立委員長をし、初代部長として5ヵ年追浜にいたらしい。生前は詩、和歌、俳句を趣味としていた。少将は寡黙謹厳といったタイプで、陸海軍の会議においても特別の場合以外発言せず、最後にイエスかノーだけを返答した。

 数回少将の司令部を私は訪れたが、参謀たちに話をさせて本人は余り口をきかない。そうかといって決して無愛想ではない。もともと木更津からの出先の航空隊で名パイロットの司令官であるのに。一機の飛行機もなく地上戦闘に従わなければならない心中はどんなものであったろうか。しかも第27航空戦隊そのものの兵力はごく少数で、防空隊と警戒隊と設営隊が主力であった。

 陸海軍の兵力配備の会議に当たり、私が各地区隊に海軍を平等に分配して地区隊長の指揮下に入れるのが良策であると発言したときは、いつも黙っている少将が、「海軍には海軍の習慣があり、死なばもろともの見地から、玉名山から南波止場付近にまとめて戦闘させて下さい」と発言した。この発言にはきわめて鋭い人間愛がこもっており、私は沈黙し、兵団長はこれを了承したので海軍主力は南地区隊と東地区隊の中間地区に集結することになった。

 電報によれば3月16日、少将は幕僚を連れて北地区の兵団長の洞穴に合流し、総攻撃に参加した。生還者の話では、3月17日、少将は兵団長以下と離ればなれになり、陸軍師団通信隊の軍曹と二人になって手榴弾を持って南海岸の米軍トラックの中に入って行き、その後、残存海軍部隊を洞穴内に集めてさらに抵抗を続けたという。少将の最後はそれ以上は分からない。

<陸戦参謀、赤田海軍少佐>
 8月、私が硫黄島に行き海軍司令部で初めて会ったのだが、テキパキとした攻撃精神に燃えた青年で、当時大尉であった。

 中学校の教練や海軍兵学校仕込みの陸戦では、物になりませんから教えて下さいと積極的に質問してきた。私が軍艦の戦闘を基礎にした戦術思想は陸戦と違いますからね、というと彼は「そこなんですよ」といって真剣に陸戦に取り組もうとしていた。

 私が「海軍は陸軍と違って金持ちで非常に多くの兵器を持っている。これをどう使うかがあなたの存在価値を左右するものであり、硫黄島の持久度と戦果に影響するところが大きいと思います」というと「そこなんですよ」といって身体を乗り出して顔色に決意を示していた。岡崎参謀とは仲はよかったが、考え方と態度は対照的であった。「海軍が持っている対空砲のうち百門だけでも陸軍にまわせば対地用として大いに役立つと思うのですが」と私がいったら、「それはしかし」としばらく息をつき、「ずいぶん変わった考えをお持ちなんですね」といっていた。

 浦部参謀と私が激論を交わしたときは彼は一言も発しなかったが、後で「陸軍の考え方は海軍とはまるっきり違うのには驚きました」といっていた。私は彼に非常に好感を持ち、何か弟を持ったような親しみを覚えた。

 3月16日、市丸少将と一緒に兵団長の洞穴に合流するまで生きていたことは明らかであるが、その後のことは分からない。


栗林忠道中将といい、市丸少将、赤田少佐といい・・・貧乏くじを引いたようなしんがり戦に殉じたわけであるが・・・
問題は、終戦工作のできない参謀本部のお偉方にあったと言われていますね。

著者の堀江参謀は栗林忠道中将とともに硫黄島の守備計画を立てたそうで、戦後は、在日米空軍に勤務し、米海兵隊終身名誉会員だったという異色な人のようです。





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Last updated  2015.12.04 09:34:44
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