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2016.01.27
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『ラストワルツ』という本を手にしたのです。
おお 村上龍の最新のエッセイ集ではないか♪・・・

大きい活字で詩集のような装丁が、ちょっと鼻につくが・・・・装丁には目をつぶって借りたのです。



村上

村上龍著、KKベストセラーズ、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
寂しくても依存しないで生きる。最後のワルツを踊る孤独な二人のように。「停滞と衰退」の国に出口はあるのか?伝説のサバイバル・エッセイ最新刊!

<読む前の大使寸評>
つい最近『オールド・テロリスト』を読んだのだが、この本のタイトル『ラストワルツ』が意味深に聞こえるのです。

rakuten ラストワルツ


「反体制派」や反原発が語られているが、これらは『オールド・テロリスト』という小説のモチーフとなっていましたね。
p53~58
<今、「反体制派」はどういう役割を負っているのか>
 最近、「よくわからないこと」が多すぎる。たとえば、エジプトなど「アラブの春」と呼ばれた民主化運動は、現在いったいどうなっているのだろうか。エジプトでは、独裁者が民衆によって倒され、イスラム同胞団を中心とする新政府ができたが、経営運営などに失敗し、結局は軍によって失脚させられた。

 何がどうなっているのか、よくわからない。このところもっともホットなトピックスだった「地球温暖化」だが、温暖化は起こっていないし、二酸化炭素の排出量などまったく関係ないと指摘する科学者も多い。それが事実だったら、電気自動車などの開発はムダということになるのだろうか。

 「アベノミクス」という経済政策にしても、将来どのように評価されるのか、まったく不明だが、成熟した先進諸国にはすでに「経済成長の余地そのものがない」という経済学者もいる。アメリカでは景気が持ち直して、FRBが続けていた超金融緩和政策がゆるやかに解除されていて、そのせいでブラジルなどの新興国から資金が引き上げられ、現時点では世界的な株安になっている。欧州では、ギリシャなどが典型だが、金融引き締めが続いていて、かつ金融崩壊を防ぐために銀行などに国が資金を提供することで、投資家は潤っているが、中産階級から貧困層に転落する一般市民が増え続けている。

 ただ、はっきりしていることがいくつかある。まずアメリカの覇権が揺らいでいるということだ。アメリカは、基準通貨であるドルをいくらでも印刷できるのでとりあえず今のところ何とかなっているが、ドルの信認そのものが揺らぎ、決済通貨をドルから他通貨に変える国が増えつつある。

 長い間、アメリカの軍事力は国際政治の中核を成していたが、イラクやアフガニスタンでは多大なダメージを受け、オバマ大統領は結局シリアを空爆できなかった。リーマンショックのような経済危機が再び起こる可能性があると予言する専門家も多いし、日本の成生活保護と似たシステムで、貧困層に食糧を提供する「フードスタンプ」の加入者が激増しているらしい。経済格差はほとんど頂点に達していて、やはり中間層が消失しかかっているという。

 ◇
 歴史的に、文化人というか、インテリというか、そういった人種は「反体制派」が多かった。基本的に政府は国民を騙そうとするので、高等教育を受け、海外留学経験のある人々などに、その嘘を暴露しようというモチベーションが生まれるのは、当然のことだった。

 ただ、今、「反体制派」というのはどういう役割を負っているのだろうか。反体制派のもっともラディカルな人々は、かつて革命を目指した。革命といっても、左右両派が存在する。昭和初期に資本家に対抗し、時の政府を暴力で倒そうとしたのは、おもに右翼だった。

 中国を中心として東アジア市場の利権を求めて欧米列強が台頭し、北にはロシアの脅威があり、急激な工業化を急ぐ日本では、農業が疲弊の一途を辿り、最大の輸出品である生糸産業が世界恐慌で破綻すると、大不況が訪れた。当時の右翼にもいろいろなタイプがいたが、彼らが「世界恐慌」をどのくらい理解していたかはよくわからない。だが、その余波は、日本を直撃し、右翼は、資本家や政治家が悪の元凶だという認識のもとに、数々のテロを決行する。

 今、反体制派というと何となく左翼というか、リベラルというか、一昔前までは社会主義者たちを連想したが、かつては右翼が反体制運動を主導する時代があった。

 今はどうなのだろうか。反体制派はいったいどこにいて、どんな主張をしているのだろうか。わかりやすいのは「反原発」「脱原発」を目指している人たちだが、その中には小泉純一郎元総理や、細川護煕元首相も含まれる。二人は「反体制派」といえるだろうか。そもそも「反原発」「脱原発」は「反・体制」なのだろうか。現在、ほとんどの原発は稼動していない。福島第一の事故の恐怖がまだ消えていないので、各原発の再稼動に対する国民的合意は得られていない。わたしは、個人的に原発はすべて廃炉の方向に持っていくべきだと思う。


村上さんの弱気、あるいは嫌気が語られています。
p187~189
<メディアの内部に「わかってない人々」が増えている>
 歳はとりたくないものだ、というのは明言だが、もし歳を取らなければ、きっとわたしは死んでしまっただろう。もう無理はできないと感じることが増えたので、いろいろなことをセーブし、自重するようになった。

 30代のような生活を続けていたら、とっくに病気になるか、海外で事故に遭って死んでいたと思う。この国で、いやほとんどの世界で、いつまでも若いというイメージの老人が人気がある。要は、若者と同じようなスタイルで生活し、行動する老人だ。そういった老人にだけはなりたくない。

 だいいち、今の若者の生活スタイルも一定ではない。ほとんど死人も同然、といったまったく活動的ではない若者もいる。いや活動したくても、年収200万では働く以外何もできない。活動している若者もいないわけではない。彼らの多くは海外に目を向け、途上国のアンフェアな実態に驚き、社会活動を開始する。

 もちろん日本に目を向ける若者もいる。東日本大震災の被災地域で医療に従事したり、起業したりしている。だが、当然非常に少数だ。そういった正統的な活動に従事する若者と、まったく活動できない若者の格差がどんどん大きくなっていく。今のシステムでは、その格差は埋めようがない。

 今、わたしが20歳だったら、どういう行き方をするのだろうか。日本を離れている可能性もある。何か目的を見つけることができるだろうか。どうやって生活していこうとするだろう。社会状況が、わたしの20歳のころとまったく違うので、たぶん小説は書けないだろう。小説のモチーフが生まれるような、想像力が刺激され、鍛えられるような環境がない。わたしは、自分が生きてきた状況と、現在との「落差」によって小説のモチーフを得ている。時代の亀裂のようなものがあり、そこに物語の芽が生まれる。だが、今は亀裂が存在しない。小説も書けないとしたら、20歳のわたしはどうやって生きればいいのだろうか、まったくイメージできない。


老境にさしかかった村上さんが、厭世的な心境を語っていますね。
こういう心境から『オールド・テロリスト』という小説が生まれたと思うが・・・
村上さんは、この小説から希望の芽を読むべし、とでも願うのだろうか?

村上龍著『ラストワルツ』1 byドングリ
オールド・テロリスト





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Last updated  2016.01.27 08:28:41
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