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2016.03.02
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カテゴリ: 自然・環境
図書館で『動物たちの生きる知恵』という本を手にしたのです。
動物たちと先端技術との関係を物理学、工学のセンスで説いているのです。
これが大使のツボを突くわけで・・・・ええでぇ♪



動物たち

ヘルムート トリフッチ著、工作舎、1995年刊

<「BOOK」データベース>より
ダム作りの名人ビーバー、空調システムつきの砦を築くシロアリ、ロータリーエンジンの考案者バクテリアなど、進化の過程を経てエコロジカルな生態を育んできた動物たちと先端技術との関係を明快に解く。

<大使寸評>
動物たちと先端技術との関係を物理学、工学のセンスで説いているのです。
これが大使のツボを突くわけで・・・・ええでぇ♪

Amazon 動物たちの生きる知恵

この本は読みどころが多いので、(その3)として読み進めました。

p300~303
<鳥たちは何を見る?>
 ここ数十年、レーダー観測や、プラネタリウムをつかう実験、あるいは標識をつけた鳥や魚を追跡する実験のおかげで、大移動の謎も少しずつほぐれてきています。まず、渡り鳥は天体を見て飛んでいることが証明されました。そのきっかけとなったのがザウアーとクラマーの観察です。渡る時期の鳥を大きな篭に入れ、太陽や星をちらりと見せたら、鳥たちはいっせいに篭の中を動いて、旅立つ方角の桟にとりついたのです。その後ザウアーたちは、星空をいっぱいに映したプラネタリウムの中に鳥を放したり、鏡に写した星空を見せたりする実験で、渡り鳥が太陽や星をガイドにしていることをはっきり証明しました。では、天体を見てどうするというのでしょう?

 伝書バトも太陽を見て方角を知るようです。それに、生活のリズムを1時間狂わせると方角をほぼ15度だけまちがえるので(15度は1時間に太陽が動く角度)、なかなか精度のいい体内時計をもってもいるらしい。けれど、東西南北がわかり、時計をもっているだけでは十分とはいえません。

伝書バト

 自分が今どこにいるか判断できないと、1000キロも2000キロも先から鳩舎には戻れはしないはず。そこでケンブリッジ大学のマシューズは、伝書バトは太陽を見たらその軌道も計算して、南中するときの高さを(つまりは緯度を)はじき出すのではないか、と推測しました。が、ハトがどんなに賢くても、たぶんそこまでは無理でしょう。

 方位を知るだけなら、地磁気も助けになります。地磁気はたいへん弱いので、よほど敏感なセンサーが必要になりますが、ともかくセンサーがありさえすれば方向決めに利用できましょう。たとえば、伝書バトの磁気感知能力を乱そうと、軽い磁石を体にしばりつけて飛ばす実験をウォルコットとキートンがやってみたところ、晴れた日には太陽が目印になるのでコースのまちがいはしなかったものの、曇りの日にはコースをまちがえることがあったので、そういう磁気センサーを伝書バトはたしかにもっているようです。

 どんな器官が磁気センサーになっているかは、まだわかっていませんが、伝書バトのほかには、コマドリやミツバチも磁気センサーをもっているらしい。とはいえ磁気センサーは、東西南北はわかっても、自分の居場所を知るのにはほとんど無力でしょう。
(中略)

 それなら、鳥はいったい何をナビゲーションの助けにするのでしょうか?今まで誰も思いつかなかったようですが、ひょっとすると鳥たちは昼間でも星が見えるのではないか、と私は想像しています。

 昼間の空一面が輝いてみえるのは、大気中のチリが太陽光を散乱して、私たちの目にそういう散乱光が四方八方から飛びこむせいです。大気圏外なら光の散乱はないので、人工衛星から見た風景は、どんな時刻でも一面の星空になる。同じように、ものすごく深い井戸の底から見上げれば、横からの散乱光がカットされて、昼間でも星が見えます。つまり、散乱光さえうまくさえぎれば、晴れた日なら昼間でも星が見えるのです。

 では、鳥の目はそんなつくりになっているのかどうかが問題になりますが、どうもそうらしい。
(中略)
 もちろんこれはまだ想像の世界で、鳥のナビゲーションひとつとっても、まだ謎だらけです。聴覚はよくても視力や嗅覚があまり頼りにならないクジラの大回遊もほとんど謎のままですし、魚たちやウミガメの長距離移動も、今のところさっぱりわかっていません。


回る器官が発見されていたそうです・・・・びっくりやで。
p109~111
<回る器官>
 手足がつけ根でぐるぐる回る、そんな動物はいません。機械でいうと保守と修理が問題だから、つまり栄養を送りこんだり老廃物を除いたりができないからです。血のかよった回転部品は、どうやってもつくれない。けれども、自動車のタイヤのように、血がかよわなくていいのなら、回る器官もできるはず。

 現実にそんな器官をもつ生き物がいます。チリの磯に棲むイソハマグリ科の二枚貝には、妙なつくりの胃があって、胃の中につっこんである棒が、繊毛のはたらきでぐるぐる回るのです。長さ2センチで太さが2ミリほど、結晶質でたいへんかたいこの棒は、飲みこんだプランクトンの外皮をこわすのにつかいます。チーズかくはん棒というか、乳鉢・乳棒のセットというか、こんな器官も発明していた自然の技には、ただもう恐れ入るばかり。

 この本を書いている最中に、モーターそっくりの器官がバクテリアで見つかりました。自然が発明したほんものの回転器官として、確認されたのは初めての例です。主役のバクテリアは、名前はたぶんおなじみの大腸菌。長さ2ミクロン、太さ1ミクロンほどの小さな細長い生き物で、水の中では1秒間に体長の20倍くらい泳げます。

 かりに人間が1秒間に体長の20倍を走れるなら、時速は120キロ! たいしたスピード狂で、私などはこういうところにすぐ目が行ってしまうのですが、まあふつうの研究者は興味がないんでしょう、論文にはひとことも書いてありません。

 冗談はさておき、大腸菌は、べん毛を波うたせて泳ぎます。ずっと大きい単細胞生物や多細胞生物にも、べん毛で泳ぐ連中がたくさんいる。推進の原理は、ウナギが全身をくねらせて泳ぐのと同じです。ウナギとちがうのは、動力を生みだすしくみがべん毛自体にはないところ。フラジェリンというタンパク質分子がつながり合っただけの、太さ0・01ミクロンの糸ですから。つながりを超音波でこわしても、分子たちはまたひとりでに集まってべん毛をつくるのがおもしろいところ。

 泳ぐ大腸菌を一匹だけいつも視野にとらえる特別な顕微鏡で見たら、べん毛が、なんと船のスクリューのように回っているのがわかりました。べん毛自体はとうてい見えないのですが、特殊な生体物質をぬった小さな板をべん毛にくっつけて、動きをめに見えるようにできるのです。この板の回転方向と、体の回転方向をよくよく調べたら、べん毛が根元でぐるぐる回っているのが確かめられたというわけです。
(中略)

 ともかくこれは、生物学の一大発見といえましょう。連結器、回転子、ベアリング、動力伝達装置の完璧にそろったロータリーエンジンを、動物界はとうの昔につくり上げていたのですから。


p313~314
<訳者あとがき> より
 原題をWie das Leven leven lernte―Physikalische Technik in der Natur(生物は生きる術をどうやって学んだか―自然界の物理技術)という本書は、生物のすばらしいつくりや機能を、環境がつきつけた物理・化学条件に注目して解き明かした本です。鳥は空を飛ぶのに人間は飛べないとか、アメンボが水に浮くとか、よく考えれば不思議な現象のあれこれを、わかりやすく説明しています。

 カッコウの雛は、さっさと旅立ってしまった親を追ってまちがいなく何千キロの空を渡る・・・。どこかで耳にはしても深く考えたことはないこうした話の謎ときは、なかなかおもしろいものです。なお邦題は、登場する生き物のうち多数派の顔を立てて、『動物たちの・・・』としました。

 著者ヘルムート・トリブッチは、もう25年ほど「地球の未来を支えるのは太陽だけ」と確信して太陽光エネルギー変換にのめりこんでいる研究者であると同時に、自然と人間とのかかわりをとことん考える哲学者でもあります。1968年にミュンヘン工科大学で学位を得たあと、カルフォルニア大学のカルビン教授(61年ノーベル化学賞)の研究室にしばらく滞在してクロロフィルの研究をしました。ふつうの人なら定職につくところ、滞在研究を切り上げてすぐに、本書冒頭にあるとおり、南米をぐるりと旅して自然観察を続けました。その産物のひとつが本書、もうひとつの産物が、古代遺跡の謎にせまる『蜃気楼文明』(工作舎、1989年)です。

 生物のはたらきを紹介した本は世にあふれていても、私たち人間の科学技術との関係にまで踏み込み、さらには応用についても考えをめぐらす、そんな本はめったにありません。物理学と化学をすみずみまで知りぬいている著者ならではの快作だといえましょう。


『動物たちの生きる知恵』1
『動物たちの生きる知恵』2







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Last updated  2016.03.03 22:13:38
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