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2016.04.18
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カテゴリ: 映画
図書館で『仕事道楽』という新書を手にしたが・・・
ジブリ映画におけるプロデューサーの役割が興味深いので、借りたわけでおます。



仕事

鈴木敏夫著、岩波書店、2008年刊

<「BOOK」データベース>より
「この会社は毎日何が起こるかわからないから、ほんとに楽しい」。高畑勲・宮崎駿の両監督はじめ、異能の人々が集まるジブリでは、日々思いもかけない出来事の連続。だがその日常にこそ「今」という時代があり、作品の芽があるー「好きなものを好きなように」作りつづけてきた創造の現場を、世界のジブリ・プロデューサーが語る。

<読む前の大使寸評>
映画プロデューサーとは何なのか?・・・感性とソロバンが両立できる人だとは思うけど。

Amazon 仕事道楽


映画の監督やプロデューサーの役割がよくわかるエピソードが語られています。
p108~112
<『火垂るの墓』のエピソード> より
 いま『火垂る』にふれましたが、ジブリ作品でただ一本、公開日までに完成しなかった映画がある。それが『火垂る』なんです。これはつらい思い出なんですけどね。

 公開当時にこの映画をご覧になっている方はおわかりですが、途中に未完成シーンがあります。一部の人はこれは映画的効果だと思ってくださったりしたんですが、じつは完成していない。けっこう騒ぎになりました。

 『火垂る』は『トトロ』と二本立て興行になるわけですが、いろいろ経過があって、『』は新潮社が製作するということで初めて成り立った企画でした。それが遅々として進まない。新潮社としてはなにしろ初めて作る映画ですから、公開日に間に合わないかも知れないと心配した。

 あるとき、新潮社の幹部の人がぼくに相談しに来た。「新潮社が初めて手がけた最初の映画が公開に間に合わないとなると、これはスキャンダルだ。なんとか高畑さんを説得したい。どうしたらいいか」、ぼくにアイデアを出してくれと言う。ぼくは高畑さんの言い分もわかるし、その新潮社の幹部の方にもお世話になっている。困り果てましたよ。

 ここで思い出したのが、日ごろ高畑さんが言っていること。高畑さんですから、フランス流の考え方なのかもしれませんが、彼は「映画の監督は自分からやめてはいけない」と言うんです。自分からは絶対にやめない。やめるのは唯一、プロデューサーから解任されたときで、これは受け入れざるをえない。これが高畑さんの考えなんです。

 そうすると、今回の『火垂る』は新潮社社長がプロデューサーである。最高権力者のプロデューサーが頭を下げて頼めば、なんとかなるんじゃないか。プロデューサーから言われたら、高畑さんも受け入れざるをえないだろう。そういう儀式をしたらどうか、と言ったわけです。

 ただ、そのとき、まちがっても「質を落として間に合わせてくれ」と言ってはいけない、「質を落とさないで間に合わせてほしい」と言わなくてはいけない。これは大事なポイントですよ、とアドバイスしました。

 その当日、高畑さんが朝からそわそわしていました。ぼくに「鈴木さん、いっしょに行ってくださいよ」と言う。ぼくは当時、そいう立場にないので、「何を言っているんですか」とあしらっていましたら、その日になって、急に同行することになってしまいました。本来行くべき立場の人が進行遅々というなかで、高畑さんと険悪になってましてね、「」と頭を下げられてしまったんです。そう決まって、高畑さん「」。ぼくはここで釘を刺しました。「」と言った。そうしたら「」。思わず苦笑しました。

 新潮社に着いて社長室に入り、社長と三人、しばらく世間話をしたあと、高畑さんは「」と言う。これが彼の主張です。ぼくはなにしろ自分の役割がありますから、ただうなだれていた。社長「」。そうしたら高畑さんが間髪容れず、「」。このタイミング、間のとり方が絶妙でした。不謹慎ではありますが、見事!と思ってしまいました。

 いま考えても新潮社社長には申しわけないし、二度とあってはならないことと思いますから、話を面白くしてはいけないのですけれど、こういうときの高畑さんはすごいのです。

 ちなみに、その後は、間に合わないときは公開を延ばします。


トトロの大成功が語られています。
p80~83
<営利を目的にしないものが最大の収益を> より
 『トトロ』は興行面、収益面でも貴重な示唆を与えてくれた作品でした。じつは「」という姿勢でのぞんだのに、結果として最大の収益をあげる作品になった、ということです。
 宮さんがいつも言う映画づくりの三つの原則があります。
 「おもしろいこと」
 「作るに値すること」
 「お金が儲かること」

 映画とはまず、おもしろくなければいけない。次に、いいテーマでなければいけない。最後に、商売なんだからちゃんと儲けなければいけない。彼は若いスタッフに向かって、この三つの原則を必ず言う。でも宮さんは、『トトロ』のときだけ、この原則を破ったんです。誤解をおそれずに言うなら、彼はこの映画で儲からなくてもいいと思った。

 それはこういうことです。昔の撮影所時代の監督と違って、現代の監督は大変です。一度こけると、もう二度とチャンスがないかもしれない。お客に来てもらうために必死のサービスをする。そのストレスは想像を絶する。内容的にいくら成功しても、興行がだめだと作品の評価までだめになっちゃいますから。でもこのときは二本立てでした。兄貴分であり仲間でもある高畑さんもいっしょである。自分だけですべてを背負わなくてもいい。それが宮さんを気楽にさせた。

 じつは、トトロの登場をまんなかにしようという話もこれに関わっているんですよ。宮さんが「そうかあ、まんなかかあ」と納得したとき、もう少し言葉があったんです。「二本立てで『火垂る』もあるから、それでもいいかな、鈴木さん」と。

(中略)
 さて、こうしてできた『トトロ』は、その年の映画賞をほとんど総なめにするという高い評価をえます。同時公開の『火垂る』も文芸映画として大絶賛を浴びた。しかし、4月半ばという中途半端な封切時期のせいもあって、興行成績も決してよくなかった。というより、ジブリ全作品のなかで、この『トトロ』と『火垂る』はいちばんお客さんの来なかった作品なんです。もともと二本とも地味な印象があったために、配給会社がしり込みし、徳間社長の強引な売込みでやっと実現するという経過があったくらいなので、興行界からの期待は薄かった。

 話はここからです。『トトロ』が大人気を得るのはテレビ放映からでした。日本テレビの金曜ロードショーで放映されたときの反響はものすごかったですよ。そこで思わぬ副産物が生まれる。トトロのぬいぐるみです。最初から企画されていたと勘違いしている人が多いんですが、あれは映画を作ったときの商品じゃない。テレビ放映のあと、映画封切2年後くらいに、初めて登場するのです。






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Last updated  2016.04.18 00:20:33
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