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2016.05.13
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カテゴリ: 歴史
図書館に予約していた『越境者の政治史』という本を手にしたのです。
ゲッ ぶ厚くて重たい本ではないか・・・予約本でよくあるケースだけど、めげずに読んでみよう。



移民

塩出浩之著、名古屋大学出版会 、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
北海道・樺太へ、ハワイ・満洲・南北アメリカへ。大量に送り出された日本人移民たちの政治統合は、日本およびアジア太平洋地域の秩序にどのようなインパクトをもたらしたのか。移民史・政治史の盲点を克服し、一貫した視点で新たな全体像を描き出す。

<読む前の大使寸評>
ゲッ ぶ厚くて重たい本ではないか・・・予約本でよくあるケースだけど、めげずに読んでみよう。
吉岡桂子委員が選んだ、骨太の近現代史という感じでんな♪

<図書館予約:(1/29予約、5/10受取予定)>

rakuten 越境者の政治史


昨今では中国富裕層の海外移住が問題視されているが、大使の関心は中国人の日本国籍取得となるわけで・・・そのあたりを見てみましょう。
p104~106
<内地開放と国籍法> より
 朝鮮人については、前述のように1876年以降認められていた内地雑居が継続されたのであるが、中国人については1894年、日清戦争の開戦とともに日清修好条規が効力を失っていた。中国人の入国は禁止され、日本国内の中国人は従来居住を許された地域(居留地、雑居地)での居住は認められたが、中国の領事裁判権が失われたため日本の裁判所の管轄下に置かれた。また府県知事には、中国人を国外に退去させる権限が与えられた(1894年、勅令137)。この規定は戦後も継続され、日本政府は1899年7月、条約国人の内地雑居を実施した直後にようやく中国人の処遇を改めた。

 ただし内務省が中国人の居住地を従来の居留地・雑居地に限ろうとし、外務省がこれに反対した結果、中国人は日本国内における自由な居住や営業などを認められながら、労働者に限って従来の居留地・雑居地以外での許可なき居住を禁じられた(1899年、勅令352)。この制限は、中国人労働者の流入への強い警戒を反映したものである。

 中国人労働者の移入規制は1920年前後に強化され、重大な政治・社会問題となった。日本政府は1918年の内務省令第1号(外国人入国の件)で、外国人に対する上陸禁止や退去命令を規定した。そして1921年以降、日本に渡航する中国人の無許可労働者が急増したのに対して、各地で入国禁止や国外退去が実施されたのである。

 その理由には低廉な賃金の中国人労働者から日本人労働者を保護するという目的が挙げられ、実際に日本人労働者による中国人労働者の排斥運動も起こっていた。注目すべきことに、内務省が主導したこの中国人労働者規制に対して、在日中国人団体や国民党政府だけでなく外務省も、日本自身がアメリカの日本人移民排斥に抗議していることとの矛盾を指摘して撤回を求めた。また実際、1924年にアメリカで日本人移民の入国を全面的に禁止する移民法が制定されるにあたって、排日運動側は日本の中国人労働者規制を正当化に利用した。

 しかし内務省は、以後も中国人労働者への規制政策を大きく修正することはなかった。なお朝鮮人は韓国併合以後、日本国籍保有者として日本本国に渡航できるようになったが、1919年以後は渡航証明書制度などによって規制され、渡航の自由はなかった。

 以上に見た外国人の日本入国に関する制度に続いて、以下では日本国内の外国人の権利について論ずる。外国人の権利に関して、特に重要だったのは第一に帰化権、第二に土地その他の所有権である。第二の問題は項を改めて論ずることとし、本項の最後では帰化権問題について述べておこう。

 内地開放の直前に国籍法が制定され(1899年、法律66)、日本に居住する外国人は内務大臣の許可があれば日本国籍を取得することが可能となった。帰化申請の条件には「品行端正」という漠然とした規定が設けられ、帰化した者(男性)は一部の高官や帝国議会議員などの公職に就くことを禁じられた。国籍法はこのように帰化権や帰化外国人のシティズンシップに一定の制限を加えただけでなく、日本国籍について父系血統主義の原則を定めた点で重要である。
(中略)

 なお、この国籍法によって日本国籍に帰化した外国人は1900年から49年の間に309人、随伴して日本国籍を付与された家族は141人で、合わせて450人に過ぎなかった。309人のうち最多の168人は中国人で、その他は宣教師やさまざまな職業の欧米人だった。

ウン 今のところ国籍法のガードが効いているようですね。

当時の中国人労働者規制について、見てみましょう。
p111
<第二章 おわりに> より
 内地雑居論争において、居留地制度の危険を理由に内地雑居に賛成した田口卯吉は、欧米からのヒトや資本の流入自体は政治的支配につながらず、経済発展をもたらすという移民・植民認識を有していたが、「国土国民の区別」という論法が示すように、雑居尚早論者や制限雑居論者は欧米人の投資植民地化による日本の独立喪失を強く恐れていた。

 その前提には、民族集団としての日本人が立憲政治の下で市民権を保有する「国民」としてとして日本の国家的独立や経済発展の主体となり、「国土」を専有すべきだという民族ナショナリズムがあった。またこの民族ナショナリズムは、「臣民」(日本国籍保有者)に含まれる北海道のアイヌや沖縄人、小笠原諸島の欧米・ハワイ系住民など属領の先住民を、「国民」たりうる存在として捉える視点を欠いたものであった。

 内地雑居論争では、中国人の雑居も争点となった。当時は開港地で中国人商人が欧米人商人と並んで勢力を持った一方、ハワイやアメリカでは中国人労働者が排斥され、代わって日本人労働者が導入されつつあった。しかし中国人雑居への反対意見は、このようなヒトの移動への観察に根ざしつつも、それ以上に中国人に対する同族嫌悪的な蔑視によるものであり、内地開放後には実際に中国人労働者が規制対象となった。


ここで、ややもするとナショナリズムに振れる大使を正す意味もあり・・・・
朝日デジタルで吉岡桂子委員の書評を見てみましょう。

越境者の政治史
<「移動」に焦点、「日本人」とは:吉岡桂子(本社編集委員)>
 明治時代から第2次世界大戦の敗戦まで、「日本人」はどこへ移り住んだのか。そして、地域の秩序にどのような影響を与えたのか?。
 北海道や樺太から、ハワイ、旧満州、朝鮮半島、台湾、南北アメリカと、移住先での国籍、市民権、参政権をめぐる動きと政治や民族意識のありようを包括的にとらえようとした本だ。

 前提となる日本人を、北海道アイヌ、沖縄人、小笠原の欧米・ハワイ系住民、樺太アイヌと、明治維新のおりにすでに日本政府が統治の対象にしていた「大和人」に分けて、考察する。この分解が、日本の移民や植民を考えるときにも、見落としがちな日本のなかにある「民族」の視点を取り戻してくれる。

 「日本人」が広く移住した時代は、日本が主権国家として国境を画定し、外国に触れ、富を外に求め、そして戦争とともにあった。
 日本が支配した旧満州で日本人は、「在満日本人」だったのか、「日系満州国民」だったのか。ハワイで最大の民族集団だった日系人は、米国に対して中国や朝鮮半島からの移民とも連帯する東洋人系市民だったのか、それとも帝国日本の植民者だったのか。
 敗戦後、日本や米国統治下の沖縄へ戻った「引き揚げ」を、戦勝者の連合国側は「送還」と呼んだ。人の動きに焦点をあてた問題意識が、領土の争奪とは異なる戦史を描くことにも通じている。

 著者の関心の出発点がナショナリズムだったとするあとがきを読んでなるほど、と思った。いま日本列島に積みあがるナショナリズムと「大和人」の民族意識の関係など、現在の課題を考えるヒントが潜んでいる気がしたからだ。
 対象に据えた民族と地域の変数の多さから、約500ページの大著となっている。ぐんぐん広がる領域を本書で着地させたあと、どこへ向かうのだろうか。読み終えてはや、次作が楽しみになった。






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Last updated  2016.05.13 00:06:54
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