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2016.05.20
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カテゴリ: 気になる本
図書館で内田樹著『街場の読書論』という本を手にしたが・・・・


今までこの本を見落としていたのが、大使の手落ちでおます。


内田

内田樹著、太田出版、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
本はなぜ必要か。強靱でしなやかな知性は、どのような読書から生まれるのか。21世紀とその先を生き抜くための、滋味たっぷり、笑って学べる最強読書エッセイ。

<読む前の大使寸評>
内田先生の説く読書論なら、読むしかないでしょう。
今までこの本を見落としていたのが、大使の手落ちでおます。

rakuten 街場の読書論


内田先生が「文学」の効用を語っているので、拝聴しましょう。

<「世界の最後」に読む物語>
 いくつか例外はあるが、全体として文学作品は売れていない。なぜか。
 身も蓋もない言い方をすれば、それは提供されている作品のクオリティが低いからである。悪いけど。

 出版不況にしても、新聞の購買者数の激減にしても、送り手側は「私たちはこれまでと変わらず質のよいものを作っている。だが、売れない。これは読者の質が落ちたからである」というロジックを使って責任を転嫁しようとする。でも、それは違うと思う。

 文学が売れないのは、決して読者のリテラシーが劣化したからではない。現に、世界的に評価の高い文学作品については、国内的にも高い評価が与えられている。

 もし、海外では高い評価を得ている作家が日本国内ではまったく顧みられていないという事実があれば、日本の読者のリテラシーだけが選択的に劣化しているという推論は成り立つであろうが、そのような事実のあることを私は知らない。

 村上春樹や、桐野夏生や、井上雅彦といった「物語作家」たちへの国際評価と国内評価のバランスを見る限り、現代日本の読者たちの鑑定眼は健全に機能していると判じて過たないであろう。

 それゆえ、読者の判断に対しては原則的には敬意を示すべきだろうと私は思う。これがこの問題を考えるときの前提だと思う。作品の送り手側は、まずこの前提を呑み込んでもらわなくてはならない。

 こんなことを言うと、出版社の人は、「」と反論するかもしれない。
 しかし、こうした考え方そのものが、出版をビジネスと考えることから派生する一種の病のように思われる。

 たしかに出版がビジネスであるなら、できるだけ短期間にできるだけ多くの収益を上げる書物がもっとも望ましいものだ。どれほど無内容でも、愚劣でも、市場の需要がある限り、それは「正しい出版活動」だということになる。

 だが、それはあくまで商品として書物を見た場合の話である。
 書物はもともと商品ではない。
 書物が商品として市場で売り買いされるようになったのは、せいぜいこの200年のことである。書物の歴史はそれよりはるかに長い。「本来商品ではないもの」の価値や機能をその商品性によって考量しようとするから話が見えなくなるのだ。

 例えば、ある書物に対する実需要がどれほどあるかは売り上げだけではわからない。図書館に収蔵されて数百人数千人に読まれても、買われただけで読まれずに捨てられる本も、どちらも売り上げ数を見れば同じ一冊である。だが、この二つの書物について、「市場のニーズはどちらも同じだった」と言うことはできない。言ってもいいが無意味である。出版事業がほんらい目指すべきは「読者」であって、「購入者」ではないからである。
(中略)

 ビジネスマインデッドな出版人は軽々に「市場のニーズ」という言葉を口にする。だが、彼らが見ているのは「すでに存在するニーズ」か、せいぜい「その予兆が感じられるニーズ」にすぎない。「まだ存在しないニーズ」を創り出すような書物こそ最良の書物であるという考想は彼らの脳裏には去来しないのである。

 すぐれた文学作品は同時代の辞書には存在しない語彙にリアリティを与え、誰も知らなかった概念の意味を理解させる。読者を彼らが閉じ込められている思考と感性の閉域から連れ出し、「異界を見せる」。

 文学も哲学も、あるいは自然科学の書物も、その価値は「世界に対する衝撃度」によって考量されるという点では変わらない。

 人々が安住している世界の亀裂を開け、見たことも聞いたこともないものがそこから吹き込んでくる。それは恐怖や不安の経験でもあるし、同時に開放と愉悦の経験でもある。それを可能にするのが「文学」や「思想書」の力である。


『街場の読書論』1
『街場の読書論』2





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Last updated  2016.05.20 10:24:02
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