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2016.07.03
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カテゴリ: 歴史
<『日本滞在日記』>

ロシアの全権大使が見た鎖国時のニッポンが興味を惹くわけだが・・・
この本が1994年まで非公開であったこともまた、謎の多いロシアである。



レザーノフ

ニコライ・ペトロヴィチ・レザーノフ著、岩波書店、2000年刊

<「BOOK」データベース>より
 1804年9月、長い航海の末長崎に到着したロシアの全権大使レザーノフ。通商を求めて交渉するが、日本側の対応にいらだちを募らせるー半年余りの日本滞在中の日記。
 本書は長年出版が禁じられ、1994年に初めて公刊された。開国への胎動のうかがえる日本社会や、日露交流史を考える上で、興味ぶかい数多くの事実に満ちている。

<読む前の大使寸評>
ロシアの全権大使が見た鎖国時のニッポンが興味を惹くわけだが・・・
この本が1994年まで非公開であったこともまた、謎の多いロシアである。

rakuten 日本滞在日記



長崎へのファースト・コンタクトのあたりを見てみましょう。
p43~48
長崎来航 より
九月二十六日
 十時、大きな船が近づいて来るのが見えた。奉行が乗っているといわれたので、船が到着するまでに、おおいそぎで着替えをすませた。しかしこれに乗っていたのは、二人の役人、ひとりの検使とその副官であった(手付行方覚左衛門と菊沢左兵衛)。

 彼らはたくさんの通訳たちと一緒に艦に乗り込んできた。船室に入るよう促すと、ずいぶんともったいをつけて、部屋に入ってきた。彼らの周りには紙のランプ(提灯)が置かれていた。私が指示した場所に着いたあと、通訳を通じてオランダ語で、来航の目的、私の官位、乗組員の数、衛兵の数、これが蒸気船なのかどうか、その他細かいことを尋ねてきた。

 これに対して、私が隣国ロシア帝国から天神公方(将軍のこと)の元に派遣された使節であり、我が皇帝が、貴国の陛下と友好関係を結ぶことを喜ばしく思っていることを証明するため、ロシア領の海岸で救出された貴国の臣下たちを返還しに来航し、さらに隣接する偉大な両国間に、永遠の友好関係を結ぶための公式手続きをし、互いの利益のため通商関係を確立することを私に委任したのだと、答えた。

 さらに貴国の陛下に対する献上品以外は一切商品を持ってきていないこと、船が戦艦であること、そして上官と乗組員の数を告げた。

 役人たちは漂流民たちを呼び、彼らのリストを作成し、さまざまな質問をして、その答えを書き留めた。

 そのあと彼らは、オランダ人をここに連れてきてもいいか尋ねてきた。彼らを受け入れることにした。1時間後オランダ人たちが番船(海上警備船)から招き寄せられた。この番船は役人たちが乗っていたもので、ここでオランダ人たちは待っていなければならなかった。そして通訳の責任者(大通詞石橋助左衛門)が彼らのもとに行って、呼び出さないうちは、中に入ることができなかったのだ。

 やっと私たちは長崎商館長ドゥーフと彼の秘書たち、ムスケチーフという船長と会うことができた。私たちのところに入ってきて、挨拶の言葉を交わそうとした時に、突然通訳の責任者が、ドゥーフに儀礼の詞を大声で伝えた。通訳は膝をつき、お辞儀をした。オランダ人たちも同じことをしなければならなかった。

 検使の前で彼らは腰を曲げ、手を膝にあてながら、首を横向きにし、通訳の長い演説が終わったかどうか、そしていつ立ち上がることを許してくれるかどうかをじっと見守っていた。役人たちと話す時はいつも同じことがくり返された。オランダ人たちは、こうした自分たちの卑下した態度を私たちに見られてしまったことをひどく恥ずかしがっていた。
 私は役人たちの反対側に置かれた椅子に座り、衛兵たちはうしろに立っていた。商館長に座るように言い、挨拶を交わし、彼らの生活ぶりについて尋ねた。彼の話では、オランダ人は出島に閉じ込められ、なんの説明もなく厳しい監視下におかれ、外国船が来たときだけは、いつも呼び出されるということだ。

 奉行たちは、2百年以上日本に忠義を尽くしている国家として、オランダ人たちの助言なしにはなにも出来ない、他の国の船はいつもはるか遠く碇泊させられているのに、私たちは非常に近いところに投錨させられていると語った。

 彼から昨年二艘の船が来航したことを知らされた(1803年7月)。1艘は、イギリスの、そしてもう一艘はアメリカのものだったが、この時オランダ人たちはたいへんな苦労を強いられたという。艦長のスチュワルトはかつてバタヴィアの会社に勤めたことがあり、日本にも滞在したことがあった。彼はイギリスの東インド会社に冒険することをそそのかっし、英国旗を掲げた一艘の船に乗ってカルカッタから来航した。

 彼は、失敗した場合のことを考えて、彼の出発後、少し経ってからこんどは米国旗を掲げたもう一艘を派遣するように命じていた。バタヴィア政庁はその時イギリスと友好関係にあったので、ドゥーフはなんとか保護しようと努力したのだが、3日後には日本の領海からイギリス船は追い出されてしまった。結局はアメリカ船も同じ目に遇ったという。このことから彼は、日本人がどんな国にも来航を許さないことを納得させようとした。彼は私たちが、通商許可書(信牌のこと)をもらえたことに驚いていた。

 彼の話ぶりから、私たちの来訪を快く思っていないような感じがした。こんな辺境の地で仲間たちは資金援助を受けているのか質問した。これに対しては、自分たちはとてもひどい状況にあり、だれも援助をしてくれないと答えた。

ロシアの全権大使に与えた厚遇に対して、オランダ人のひがみ、あるいは悲哀が見えるようで・・・・オランダ人も辛いぜ。

やっと、上陸許可がおりたようです。
p150~154
梅ケ崎上陸 より
十二月五日
 朝7時、入江全体がさまざまな色の幟や紋章をつけた船に囲まれた。入江の両側にある要塞の上でも兵士たちが動きまわっていた。要塞には肥前の紋章がついた派手な幟が沢山ぶら下がっていた。兵士たちが乗る番船は、ほとんど町から来たものだった。船で太鼓が鳴り響いた。そして7時ふたりの検使(行方覚左衛門と清水藤十郎)と、たくさんの通訳たちと役人たちを乗せた船が近づいてきた。少し離れたところに碇泊し、自分たちの到着を告げた。

 艦に来るように命じた。彼らは8時に艦にやって来た。奉行からの挨拶と、上陸に同意したことに礼を述べたあと、私の部下を屋敷の下見のために派遣してはどうかと提案してきた。さらに家具やその他のものを運ぶために数艘の荷船が用意されており、そこでは昼食も食べることができるし、食料も用意されていると知らせた。これに対して礼を述べ、「そんなに急ぐ必要がないと思うので食事は自分の船でとります」と答えた。

 フォッセとフリードリッヒ少佐、ロムベルグ中尉、医師のラングスドルフが私たちのボートに乗り、屋敷の下見に赴いた。

 彼らは戻ってきて、屋敷がたいへん静かで綺麗に片付けられていると報告した。奉行に礼を言うように命じ、昼食をとったのちすぐに出発するので、船が一艘欲しい旨を告げた。さらに出発の準備をするので、休憩したいと検使に申し出た。彼らはお辞儀をして、後甲板に引きさがり、十時からそこでずっと待つことになった。昼食を終え、午後1時半出発すると彼らに告げた。

 大きな船が我らの艦に向かって曳航されはじめた。
 湾全体が、兵士たちや私たちの出発を見物するためにやってきた長崎の住人たちを乗せた船で一杯になっていた。

 船はふたつのデッキがついた肥前のものだった。船の下見と、椅子とテーブルを並べるために部下を送った。テーブルに国書が入った小箱を置くため、羅紗を敷くように命じた。

 作業がすべて完了したあと、後甲板に向かう。儀杖兵が行進を始めた。
 ふたりの検使に船のお礼をするよう奉行に伝えてもらいたいと言った。我々の艦に、日本の役人たちが乗り込み、艦からタラップが日本の船に下ろされた。
(中略)

 艦から離れるとまもなく、マストの支索に水兵たちが立ち、三度「ウラー」と叫んだ。私は儀杖兵に日本船からも三度叫ぶように命じた。その後また艦の方から私に向かって三度「ウラー」の声がかえってきた。航行中ずっと鼓士が行進曲を演奏した。岸辺には旗や槍を持った兵士たちが二列に並んでいた。


日本滞在が長くなると、貿易や民俗などいろんな情報が得られたようです。
p277~281
警固兵たちとの交流 より
三月十五日
 為八郎との話の中で、塩二千袋、米をある量購入できるかと尋ねたところ、彼は、それは問題ないし、これについては彼が手配できると確約した。

 さらにオランダ人たちが、銅と楠をたくさん持ち出しているのか尋ねた。これに対する彼の答えは、次のようなものだった。

 去年は銅を八千貫、楠は一万二千斤持ち出している。銅はここでは一斤が2.5マスで売られている。しかしオランダ人たちは、古い協約によってかなり廉価で購入している。奉行は商人たちに対して、国庫から足らない分を支払っている。

 鉄についての私の質問に対し、彼はここにはたくさん良質なものがあり、1斤は1マスするが、かなり高いと答えた。

 私はさらに質問を続けた。
 「紙や絹の織物を入手することができますか?」
 「おそらく、そんな難しいことではないでしょう」と彼は答えた。
 魚膠(宝石の接着剤)を持ってくるのはどうかと持ちかけると、日本でもたくさん作られているという返事がかえってきた。オランダとの貿易の品目について尋ねると、為八郎によるとオランダ人が持ってくる品物は次のようなものだった。

 羅紗、更紗、単色の絵模様をプリントした更紗、モロッコ革、釘、乾燥チョウジのツボミ、ニクズク、ナツメグ、砂糖、さまざまな毛織物、鉛、錫、水銀、ガラス食器、シャンデリア、辰砂、山蝋、石臼、ツチハンミョウ、中国の根、アンモニア水、ビャクダン、インジゴ(インド藍)、ラザリ、胡椒、時計などだが、他にもたくさんの品物がある。その中には鉄もあったという。

 オランダ人は3年間にわたって鉄を持ってきたが、品質が悪く、日本人たちに合わなかったため、いまでも使われないまま放置されているとのことだ。

 白銅について、オランダ人たちがこれを持っていくかどうか尋ねてみたが、そんなことはないという。

 赤か青の染料の見本を手に入れてもらえないか頼んでみた。なぜならば彼から、日本にはインド藍にも負けない青色の染料があると聞いていたからだ。

 モロッコ革について、去年オランダ人がそれを6千持ってきたというのは本当かどうか聞いてみたが、それは正しくなく、3千だけであり、しかもこのモロッコ革はたいへん粗悪なものだという。モロッコ革を供給することはそう簡単なことではなさそうだ。

 「明日中国のジャンク船がここに来ます」と彼は言った。
 「何を積んでくるのか」
 「乾鮑です。これは貝の一種です。それと乾魚、ナマコ、コンブか、海草類です」
 紀伊の国と駿河で、良質の銅が採掘されるというのは本当かと聞いた。
 「良質なものがとれます。しかしその他にも、北国の方で、仙台から松前の間にある出羽と加賀でも大きな鉱山が発見され、そこからも良質な鉄を手に入れています」

 もし私たちが必要になり、彼がほんとうに協力してくれるのなら、特別な褒美を与えることを約束した。彼は、大名が到着したらずっと私のそばにいたいと思っていますと答えた。

 残りの時間は警固兵たちと過ごした。おかげで自分の辞書の語彙を増やすことができた。できるかぎり風俗や習慣、統治形態などについて質問してみた。


 ウーム 良質な情報と協力者を探すのは、悪く言えばスパイのような行為かも知れないわけで・・・






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Last updated  2016.07.03 22:03:09
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