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2016.07.08
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カテゴリ: 歴史
図書館で姜尚中著『反ナショナリズム』という文庫本を手にしたのです。
・・・中韓のナショナリズムに往生こいているニッポンにとって有益なお話ではなかろうか、ということで借りた次第です。


【反ナショナリズム】
反ナショナリズム

姜尚中著、講談社、2005年刊

<「BOOK」データベース>より
 ナショナリズムの勃興、が早熟的に帝国主義的な膨張につながり、ウルトラ化の果てに破綻することでそのサイクルを終えた20世紀の日本にとって、中国と韓国のナショナリズムの脅威感は、国家に求心力を求めるネオ・ナショナリズムの拡がりを促すことになった。
 このナショナリズムの逆流が、歴史修正主義の装いのもとに過去の歴史の清算を迫る「従軍慰安婦」をはじめとする数々の戦争犠牲者たちの「証言」に強い反発を示したのは、ある意味で当然であった。

<読む前の大使寸評>
中韓のナショナリズムに往生こいているニッポンにとって有益なお話ではなかろうか、ということで借りたのです。

amazon 反ナショナリズム


網野善彦氏との対談を見てみましょう。
p288~291
一国主義史観を超えて より
姜:網野さんが今度お出しになった『「日本」とは何か』(講談社、2000年)を拝見して、目から鱗が落ちる思いがいくつもしたのですが、わたし自身に照らして、大変興味深かった点は、在日韓国・朝鮮人のあり方についてでした。まず在日は、第一次産業に従事している人が少ない、農民になっていない、つまり土地を取得できなかった。

 しかも網野さんのおっしゃる西日本と東日本のコントラストの問題でもあるのですが、だいたい関東在住の在日はサービス業に従事するものが多く、関西では多くが零細の製造業に従事しているのです。いずれもはっきり言えることは、第一次産業、農業に従事する人が少ないということです。しかもそうした土地をもっていないという在日のあり方が、わたしには何かずっと後ろめたい思いとしてこびりついていたのです。

 学生時代、1970年代ですが、大塚久雄さんの『共同体の基礎理論』を読んだときに、惹かれながらも何か違和感を覚えたのは、大塚さんの歴史観は、土地制度史観なのですね。ですから在日が土地を持たない、寄生している、いまふうに言えばパラサイトであるということが、大塚さんが描く土地を基盤にした共同体の解体過程としての世界史の展開から、自分たちは何か落ちこぼれているといった違和感があったのです。網野さんのご本を読んで、そうした土地制度史観、土地へのフェティズムから解放されるような気持ちがしたわけです。

網野:大変本質的な問題をご指摘いただいたと思います。土地をもたない者への蔑視は、中世前期、13~14世紀まではさほどでもないのですが、15~16世紀以降、江戸時代にはかなり定着していきます。江戸時代になると年貢、基本的な税金を出すのは土地をもっている者であるという考えが支配的になります。

 最近分かってきたことですが、明治以降、そうした考え方はさらに強固になります。そして、さらにそれは近代の学問の基本的な捉え方になり、歴史学にも、農業や工業などの生産活動こそが社会を動かす基本的な力であり、商業・流通は物を動かすだけだという考え方が定着してくるようになります。

 大塚さんはそのことを学問的に非常にクリアに主張されました。しかし、それは歴史の事実とはかなり大きく違うのです。今度出した本では、この問題を、縄文時代から江戸時代までまとまった形でかなりはっきりと書きました。

姜:その問題は、マルクス自身にも通底しているとお考えですか。アジア的生産様式とも関わると思うのですが、土地の所有形態とそれを基盤とする共同体編成の変遷が世界史を貫く基本的なモメントであるという点では、マルクスにも同じような土地制度史観へのバイアスがあるのではないでしょうか。

網野:マルクスはいろいろなことを言っていますから、別の解釈もできるかもしれませんが、少なくともいわゆる「マルクス主義」は完全に土地を基盤にした生産力中心の見方だと言っていいでしょう。今度書いた本でも一番抵抗があるだろうと思うのは、この問題でしょうね。なんと言っても「日本」は、江戸時代を通じて農業社会だというのが通説ですからね。でもこれは日本だけでなく、ヨーロッパの歴史学あるいは人文科学全体に、商業や金融に対する差別的と言ってもよい偏見があったと思います。

姜:資本主義の起源論争との関連で、流通・金融の役割を否定的に評価している点で、大塚さんによって理念型化された西洋近代像も歪んでいるのだと思います。しかし、その反照としての日本の近代像も、網野さんのおっしゃる地域的な多様性をナショナルに画一化してしまったという点で、歪んでしまったと言えるのではないでしょうか。

網野:そうですね。それは「民族」の問題に即しても言えることですね。これは、厳密な意味での「民族」ではありませんが、「遊牧民」「狩猟民」という捉え方があり、とくに狩猟・採取民は未開・野蛮と言われますが、これは、農耕民がつくり出した見方です。沖縄人もアイヌも驚くべく広域的な流通を担っていた交易民です。

 沖縄については前からかなりはっきりと分かっていましたが、アイヌについては最近の北方史の研究で明らかにされ始めました。たとえば、テッサ・モーリス=スズキさんが『辺境から眺める』(みすず書房、2000年)で、アイヌがいかに広い範囲の地域で交易を行っていたかを強調されています。そうした活動がこれまで人類史のなかで評価されてこなかったし、実際からかけ離れた認識が歴史像として共有されてきたということは恐るべきことであると言っていいかもしれません。

 日本の場合の海民がまさにそうで、実際には非常に豊かな海民の集落、海村・都市が、少なくとも江戸時代までは確認できるのですが、近代以降、海の交通の役割が衰退すると、田畑のない「貧しい漁村」というイメージが定着するようになります。商業も同様に著しく過小評価されてきました。先ほどの在日の問題もそうした観点から見ることができるし、あらためて考え直す必要があると思います。


次にアジアのナショナリズムを見てみましょう。
p313~318
アジアと日本のナショナリズム より
網野:これは姜さんに伺っておきたいことで、わたしが最近心配している問題のひとつですが、中国には台湾やチベット、ウイグルの問題があり、一方、朝鮮半島で南北統一問題がにわかにクローズアップされ、アジアでは、国民国家を形成し、つくり固めようとする動きがあるわけですね。そうした動向のなかで、金大中前大統領が確か「韓民族五千年の歴史」と言っていたと思うのです。これは大変にひっかかりました。

 あれは「檀君神話」を考えての発言でしょうね。とすると、古事記・日本書紀の神話を背景に明治以降日本が国民国家を形成したのと同じ道を、現代において進みつつあると言えるわけで、もしそれが定着していくとすると、事は重大だと思います。近代日本の大失敗の経験が生かされなくてはなりません。

姜:アジアにおけるナショナリズムの温度差のような問題があると思います。その関係からすると、『国民の歴史』の著書を「歴史修正主義者」と言えるかどうかはともかくとして、マッチョ的な表現をあえてすれば、かれらから見ると、アジアはナショナリズムの「発情期」であるのに対して、日本はナショナリズムについて見れば、つまり「男」として見ると「去勢」されているのではないか、まわりが「発情期」なのに自分たちは「去勢」されている、これで大丈夫なのか、というわけです。かれらの目には、アジアにおけるナショナリズムの温度差がそのような危機意識として映っているのではないでしょうか。

網野:これはまた刺激的な言い方ですが、確かにそういう言い方ができるかもしれませんね。

姜:西尾幹二さんの『国民の歴史』を読んで感じるのは、かれにあの本を書かせている内的な動機は、ものすごい被害者意識なのですね。韓国や中国とくらべると、あるいはわたしから見ても、日本の戦後史は非常に「幸運」の積み重ねとして現在まで来たと思うのですが、ところがかれらの当事者意識としては、それが被害者意識として鬱積してきているのです。その鬱積したものがいま、発露しているように見えます。

 その鬱積感がいったいなんなのか、不思議なのです。というのは、現実的には朝鮮半島だけに限定しても、1950年から1953年の間に内戦(朝鮮戦争)で約200万~300万の人が死に、1000万人が離散家族になっています。日本の場合は、太平洋戦争で300万人が死んでいるわけですが、人口規模が違いますから、全人口に占める割合から見ると、約2倍の人が死んでいる計算になります。しかも自分の土地が戦場になっています。

 中国の場合でも「満州事変」以降あれだけの人が犠牲になっています。そうした死者の数は別にして日本の戦後史を見ると、歴史の「僥倖」であったのか、支配者が「賢明」であったのか、かなり恵まれた環境にあったと思うのです。

 しかし、いまの「歴史修正主義」的な言説を唱えている人々のなかには、そうした恵まれたかに見える日本の戦後史に対して、とぐろを巻いた鬱積した気持ちがあるように見えるのです。しかしそれがいったいなんなのかということですね。網野さんはどうお考えになりますか。

網野:わたしにも、それは十分掴みきれていません。しかしまさしく「幸せ」「僥倖」によって敗戦後までなんとか維持できた国家の枠組み、「国体」がなしくずしに崩れようとしている状況そのものに対する、かれらなりの「危機意識」があるのだと思います。さきほど「発情期」とまで言われましたが、中国にせよ韓国・朝鮮にせよ、強烈なナショナリズムが、現在、表に出ています。アメリカはまたアメリカ流に強力なナショナリズムがあるのに対して、現在の日本は、確かに「能天気」なところがあると言えるだろうとは思いますよ。

 このままでは「日本」が“負けてしまう”という危機感が西尾幹二さんや西部邁さんにあるのだと思います。石原慎太郎さんも同じでしょう。しかし、このように「勝とう勝とう」とする方向で、古い「国体」や伝統まで引きずり出してナショナリズムを鼓吹するのは、明治以降の日本の近代の歴史に対する反省もない、アナクロニズムだとわたしは思います。変な勝ち方を一時的にするよりも、負けたほうがよいのです。

 今度の『「日本」とは何か』についても、多分かれらは無視するだろうと思います。西尾さんの『国民の歴史』には、わたしの名前は、ほとんど出てきません。ただ1ヶ所、わたしが「日本」という国名にこだわっているのを西尾さんが、「唯名論」だと批判されていますが、まともに批判されたことはありません。

 しかし、ナショナリズムに歪められた歴史像は、なにも日本だけではなくて、たとえば、「倭寇」の問題について、韓国でも中国でも、「日本人」の悪行のひとつであると言っています。舟山列島あたりの博物館に行くと、そうした展示があるということを人づてに聞きました。この本でも触れましたが、「倭寇」は、列島西部、済州島、朝鮮半島南部、中国大陸南部にまたがる、国家や国境を越えた海の民の活動であって、日本国による朝鮮半島・中国大陸に対する暴虐と見るのはまったくの誤りだと思います。韓国の若い歴史家でも、倭寇に朝鮮半島の人間は加わっていないと、まじめに研究して主張されている方もいますが、実証的に見てそれは成り立たないようですね。また「倭寇」を日本国が支援したことはなく、とくに「後期倭寇」は日本人よりも中国大陸の人が多かったと言われています。

 それにもともと「倭寇」と「日本人」とは違うのです。別にわたしが日本人だから言うわけではなく、「倭寇」は国境を越えた海の世界の問題で、そうした視点が中国や韓国の歴史学にはいまのところあまりないようですね。そうした視点なしに、中国や韓国の方がナショナリズムの視点だけで批判をすると、逆に西尾幹二さんや石原慎太郎さんの餌食になるわけです。これは、竹島、尖閣諸島などの問題と、直接かかわってきますからね。

 ただ、金大中前大統領が、おそらく「檀君神話」に関連して「五千年の歴史」と言われたときにはわたしもドキッとしましたね。


そうだ『「日本」とは何か』という本が積読状態にあることを、思い出したのだが・・・
久しぶりに読んでみるか♪


【「日本」とは何か】
日本とは
網野善彦著、講談社、2000年刊

<Amazon紹介>より
日本中世史に新たな地平を拓いてきた網野善彦が、編集委員として参加している全26巻の日本通史「日本の歴史」の第00巻として著した日本論である。
これまで自明なこととして扱われていた「日本」の起源と地理的範囲、日本列島に限定されていた縄文文化や弥生文化を、北方アジアや朝鮮半島との関係から見直し、基本的用語を問い直す必要があるというのである。また、主従関係、貨幣制度、差別意識などの地域的相違を明らかにすることで、「均質な日本人」という常識の盲点を指摘している。さらに、記紀神話の豊葦原瑞穂国から、班田収受や公地公民といった律令制度、中世の荘園、江戸時代の士農工商制度、明治の地租改正、戦後の農地改革に至る土地所有制度の変遷をたどることによって、日本は農民中心の農耕社会とする従来の日本社会史に疑問を投げかけている。
有史以来、日本列島は北方アジア、朝鮮半島、琉球列島、中国大陸とダイナミックな交流があり、列島内部でも活発な地域間交流があったことが、現在の「日本」を形づくっているとする。
網野史観の全体像を1冊にまとめた格好の入門書といえる。(堤 昌司)

<大使寸評>
父の蔵書を引きつぐものであるが、2000年刊行と比較的新しい本であり、「日本人論」では欠くべからざる本であったのが嬉しい♪

Amazon 「日本」とは何か






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Last updated  2016.07.08 17:15:30
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