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2016.07.24
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カテゴリ: 歴史
図書館で『日本戦後史論』という本を手にしたのです。
なんか一度借りたような本であるが…ま いいかということで借りたのです。



日本

内田樹著、 徳間書店、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
日本人にとって戦後とは何なのか。いま起きている問題の根底にあるものは何か。タブーなしの徹底対談!
【目次】
第1章 なぜ今、戦後史を見直すべきなのか(戦後史を見直す動きは時代の要請/日本の歪んだ右傾化 ほか)/第2章 純化していく永続敗戦レジーム(ほんとうの民主主義がない日本/なじみやすかった対米従属と対米自立 ほか)/第3章 否認の呪縛(「敗戦の否認」の呪縛/「何かの否認」により成り立つ国家 ほか)/第4章 日本人の中にある自滅衝動(事実認識が正確にできないようになってしまったのはなぜか/極論を楽しんでしまう日本人の気質 ほか)

<読む前の大使寸評>
なんか一度借りたような本であるが…ま いいかということで借りたのです。

rakuten 日本戦後史論


対米従属のメカニズムあたりを見てみましょう。
p39~44
<対米従属が生きる道と信じる人たち>
内田:戦後日本の国家戦略は「対米従属を通じて対米自立を果たす」という大変トリッキーなものでした。何度もあちこちで書いていることですけれど、僕はこれを「のれん分け戦略」と呼んでいます。丁稚が手代、番頭、大番頭と出世して、ある日大旦那さんに呼ばれてこう言われる。「お前も長いことよく忠実に仕えてくれた。ありがとうよ。これからはもう一本立ちして、自分の店を持ちなさい。明日からはお前も一国一城の主だ」。そういう展開を日本人はアメリカに対して期待しているんです。政治家も官僚も学者もメディアも。みんな、そう信じている。

 これはあるいはかつて中華皇帝に朝貢していた華夷秩序の周辺国として、身にしみたマインドなのかも知れません。宗主国に対して「従順なふり」をしていると「いいこと」がある。臣下の礼を取っていると、中華皇帝からさまざまな下賜品が下され、「王」の位を賜り、自分のいるあたりの辺土は自治して構わないという一札が頂ける。そのコスモロジーが日本人の中にはしみついている。

白井:ところが困ったことに今はグローバル資本主義の時代になって、周縁的領域だからどうでもいいやというふうに放っておいてはくれません。やれTPPに入れとか、司法制度をアメリカ流に改革しろだとか、無茶なことを押し付けられる。日本の有権者を見ていてほんとうに唖然・呆然とすることが多いんですけれども、2年前の選挙のときもTPPについて「聖域なき関税撤廃ということになったら、われわれは交渉から撤退する」と自民党は公約した。こんなスローガンを信じる人間がこの国にたくさんいるということにあらためて衝撃を受けました。
(中略)

 でも、これって日本の保守支配層のお家芸、伝統的な行動様式だなと思います。絶対に勝てない太平洋戦争にズルズル入っていって、ミッドウェー海戦以降早く降参するしかないのに国体護持の方策を考えて小田原評定を繰り返している間にぐずぐず長引かせた。戦死者300万人のうちの200万人は最後の1年で死んでいます。国体護持という言葉は何やら荘重な響きがありますが、内実は、支配層の自己保身を言い換えただけにすぎません。

内田:もちろん自己保身のために国を売る人たちもいるでしょうが、TPPにはなんだかもう少しパセティックな理由があるような気がします。自己破壊というか破局願望というか。日本人って、けっこう「全部ぐちゃぐちゃになる」という状態が好きなんですよ。制度をちょっとずつ手直しするより、一回全部壊して、ゼロから作り直す方が好きなんです。

 1922年に山縣有朋が死に、田中義一が29年に死んで、戊辰戦争以来陸軍を支配していた長州閥が終わります。それまで陸軍は長州出身者のための特権的なキャリアパスがあったわけですが、それがなくなる。すると、その空隙を狙ってそれまで冷や飯を食わされてきた軍人たちが一気に陸軍上層部にのし上がってくる。これがほとんど「旧賊軍」の藩から出てきた人たちなんです。真崎甚三郎は佐賀、相沢三郎は仙台、相沢に斬殺された永田鉄山は信州、東条英機は岩手、石原莞爾は庄内、板垣征四郎は岩手。いずれも藩閥の恩恵に浴する立場になかった軍人たちが1930年代から陸軍上層部に駆け上がってきます。

 だから、あの戦争があそこまで暴走したのは、「賊軍のルサンチマン」が少なからず関与していたのではないかと僕は思っています。結果的にこの人たちが戊辰戦争から75年かけて薩長勢力を中心にしてえ築き上げてきた近代日本のシステムを全部壊すことになった。大日本帝国に対する無意識的な憎しみがないと、なかなかあそこまでいかないのではないか。

 戦争指導部はたしかに多くの戦術的失敗を繰り返しましたけれど、それほど無能な作戦立案者や司令官を輩出させたというところに、僕は無意識的な悪意を感じずにはいられないのです。彼らはどこかで日本全体の国益を見失って、もっと「狭い」何かに殉じようとした。だいたい、皇道派と統制派の戦いというのは、ポスト争いですからね。

白井:相沢事件は思想的な背景のある事件じゃなかったんですか?

内田:ポスト争いなんですよ。教育総監というのは帷幄上奏権を持つ枢要なポストなんです。統帥権というのは、ご存知の通り、戦略の決定、作戦の立案、軍の組織編成・人事職務の決定にかかわる権限です。憲法上、形式的には天皇に属するけれども、実際には軍内部で案を作って上奏し、それがそのまま裁可される。これが帷幄上奏権と呼ばれ、この権限を持つのが陸軍参謀総長、海軍軍令部総長、陸海軍大臣、そして陸軍教育総監です。

 帷幄上奏によって軍事にかかわるすべての勅令は下り、政府も帝国議会はこれに介入することができなかった。軍の組織や予算に手を着けようとした政治家たちはことごとく「統帥権干犯」として、つまり天皇の大権を侵すものとして軍と右翼の攻撃を受けた。

 戦前は軍事費が国家予算の50~70%を占めていたわけですから、帷幄上奏権保持者は事実上総理大臣よりも大きな権力を行使できたわけです。その総理大臣より上のポストに、軍内部での「出世競争」を勝ち抜きさえすれば達することができたわけです。ポスト争いが熾烈になるのも当然です。受験秀才として陸士陸大を首席に近い成績で出れば、この帷幄上奏権に手が届く。長州閥がなくなった陸軍は、皮肉なことに、戦前日本で最も「能力主義」なキャリアパスが用意されていた組織だった。

 この人たちはたしかに陸軍部内での出世競争には異常な執着を示しましたが、それは日本の国益を増大したいとか、烈々たる愛国心に駆られてというのではなかったと思います。むしろ、雌伏半世紀でようやく「薩長藩閥に借りを返す」機会が訪れたというふうに感じていたのではないか。薩長が作った明治の体制を一度根本から作り替えなければならない、こんなシステムは一度壊さなければならない、そう思っていたのではないか。

 この人たちが満州事変を起こし、昭和維新を呼号して2・26事件を起こし、日中戦争を始め、対米戦争を始めた。


「旧賊軍のルサンチマン」とは、かくも深くて暗いものだったのか…との思いがするわけです。
まあ 戊辰戦争時の薩長の仕打ちが過酷すぎたということなんでしょうけど。





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Last updated  2016.07.24 07:31:46
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