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2016.08.02
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カテゴリ: 気になる本
日曜日の朝日新聞に読書欄があるので、ときどき切り取ってスクラップで残していたのだが、これを一歩進めて、無料デジタル版のデータで残すことにしたのです。
・・・・で、今回のお奨めです。

・蔡英文 新時代の台湾へ 
・海をわたる機関車

***************************************************************

【蔡英文 新時代の台湾へ】
蔡英文 新時代の台湾へ より
蔡英文

<中小企業群が担う強靱な経済:諸富徹(京都大学教授・経済学)>
 著者は、台湾総統選で国民党候補に圧勝し、本年5月に台湾初の女性総統に就任した。いま、世界でもっとも注目される政治家の1人だ。彼女は、前回の総統選(2012年)に敗北した責任をとって民進党主席を辞し、台湾各地をめぐる旅に出る。その過程で彼女が考えたこと、感じたこと、そして何を大切にしているかを私たちに伝えてくれる、優れたエッセイだ。

 本書の根底を貫くテーマは、台湾経済のあり方だ。それが、政治を規定する。記憶に新しい2年前の「ヒマワリ学生運動」は、馬英九政権による対中「サービス貿易協定」強行採決への反発がきっかけだった。その非民主的プロセス、中国依存への急傾斜、大資本への利益誘導といった内容が、中小企業や農業への打撃、社会的格差の拡大を懸念する台湾社会を震撼させた。

 経済のグローバル化がもたらす矛盾が、学生による立法院占拠という形で、一挙に噴出したのだ。だが著者は、それは必ずしも民進党への信認を意味しないと戒める。ゆえに、反対に留まるのではなく、「協定」とは異なる台湾経済の新しい姿を構想する。

 その担い手は、イノベーション力、研究開発力、技術力に優れた中小企業群だ。十分な就業や公平な富の分配に配慮し、質の高い成長を目指す。台湾産業の高度な技術力を、情報通信技術(ICT)と結びつけ、都市のスマート化を図る。省エネ・再生可能エネルギー産業を興し、農業・観光・住宅・ケア産業でもイノベーションを主導し、新しいビジネスへつなげる。

 著者は、独立志向を強めて両岸関係を不安定化させた陳水扁政権の二の舞いを避け、その現状維持を図る。だが、大陸に依存しない強靱な台湾経済・産業の創出は、結局のところ、台湾の独立性を経済面から担保するのだ。優れた戦略家だが、読後感はどこまでも爽やかだ。人々との対話から学ぼうとする著者の真摯な姿勢ゆえであろう。

◇

蔡英文著、白水社、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
一度は総統選に敗北しながらも、市民との対話を通し、未来を模索し続けた3年の軌跡。新たなリーダーシップの形と台湾の希望がここに!台湾初の女性総統による、初の著書!

<読む前の大使寸評>
大陸に依存しない強靱な台湾経済・産業の創出に期待しています。
日台は協調して、大陸の政権が自滅するのを待つのがいいかも(オイオイ)

冗談はさておいて・・・
台湾はだんとつの親日国であるわけで、お互い協力して覇権大国・中国に対峙すべきなんでしょうね。

<図書館予約:(7/31予約済み、副本4、予約3)>

amazon 蔡英文 新時代の台湾へ


***************************************************************

【海をわたる機関車】
海をわたる機関車 より
機関車

<後発の強み生かす、拡大の野心と失敗:吉岡桂子(本社編集委員)>
 日本と中国が世界のあちこちで高速鉄道の輸出競争を繰り広げている。その勝敗は、経済力のみならず国力の物差しのように語られる。ときに、線路の敷設は利用者の視点を離れ、地域を「支配」する概念に変換されていく。鉄道は、ナショナリズムを目に見える形で刺激する。

 『海をわたる機関車』は、日本が明治以降、後発としての強みを生かし、先進国から技術の模倣と収斂を続けて独自の技術を高めていく過程が、当時の国際環境とあわせてつづられている。トップを走っていた英国は、職人的な製品の造りこみにこだわる。生産システムや技術の急な変化についていけなくなり、しだいに政治力頼みとなって米独に追い越されていく。

 著者はあとがきにこう、書く。「盗用」「模倣」と批判される中国の高速鉄道だが、「導入した複数の技術を徹底的に模倣し、すり合わせていくという手法で技術を蓄積する」代表例は、日独だと。時代はめぐり、いま、鉄道輸出に力を入れる日本に対して、国際市場を「正確に認識」し、「成功体験を乗り越え」るように促す。

 その機関車も飛行機も十分には造れなかった明治のころから第2次世界大戦敗戦にいたるまで、日本の版図拡大の野心と失敗を、交通網の視点で描いたのが『帝国日本の交通網』。副題を「つながらなかった大東亜共栄圏」とするように、補給、物資を流通させ、支配を実現するはずの鉄道、海運、港湾、航空のネットワークの貧困ぶりを、時刻表や路線図、統計などを用いて具体的に記す。

 たとえば、1942年に浮上した「大東亜縦貫鉄道」構想。日本から朝鮮半島、中国、シンガポールからビルマへ続く構想は、車両や線路の規格の違いを配慮しないばかりか、長大過ぎて沿線を管理しきれなかった。一貫輸送はできないまま、「砂上の楼閣」に終わる。南洋まで支配を広げても、軍需に汲々とする輸送では地域を「有機的に結合」できず、生活を維持できなくなって敗走に転じた日本をあぶり出す。

 さて、大国の野心を隠さない中国は、かつての「大東亜」と地理的な重なりも持つ広い地域を「シルクロード経済圏」と定め、勢力の拡大を狙う。冒頭の高速鉄道の積極的な輸出も、その一部である。ただ、彼らとて、自国の利と国威のみにとらわれて現地の生活に思いが至らなければ、交通が本来もつ結合効果を生み出せず、「砂上の楼閣」に終わるだろう。

 両書とも、薄っぺらなナショナリズムを超えて、現在に歴史をたぐりよせて考える機会をくれた。前者は機関車、後者には著者秘蔵の当時の乗り物の絵はがきの写真が数多く掲載され、楽しめる。

◇

中村尚史著、吉川弘文館、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
鉄道が急速に発展した明治時代、機関車はいかにして日本にもたらされたのか。イギリスの独占ではじまった機関車輸入は、アメリカ・ドイツの参入によって多様化し、自国技術の確立に結実していく。19―20世紀転換期に出現した第一次グローバル化の時代を背景に、世界的な機関車産業の動向と、日本鉄道業の発展の歴史を統一的な視点で描く。

<読む前の大使寸評>
大使は鉄ちゃんというわけではないのだが・・・
吉岡桂子・編集委員が選んだ本なら外すわけにはいかないのです。

<図書館予約:(とりあえず、予約カートに入れておこう)>

rakuten 海をわたる機関車


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Last updated  2016.08.03 22:47:23
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