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2016.10.12
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カテゴリ: 歴史
図書館で『宮本常一とあるいた昭和の日本23』という本を手にしたのです。
シリーズ本23のテーマは、「漆・柿渋と木工」となっていて・・・
大使のツボでんがな♪



23

田村善次郎監修、農山漁村文化協会、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
阿波半田の塗師、宮城県鳴子の漆かき、越前大野の木地屋と塗師、各地の柿渋屋、南会津の太鼓屋など、伝統工芸を受継いできた人々を訪ねる。

<読む前の大使寸評>
シリーズ本23のテーマは、「漆・柿渋と木工」となっていて・・・
大使のツボでんがな♪

amazon 宮本常一とあるいた昭和の日本23


今は廃れた半田漆器を姫田道子氏のレポートで見てみましょう。
p11~28
<半田町逢坂竹内家>
 池田から18キロほど下流の南岸に半田町があります。別のルートでは本州から船で徳島へ、徳島本線で吉野川を遡るのです。南岸を走り、吉野川にそそぐ支流の鮎喰川、穴吹川、貞光川、そして半田川の手前に停車駅があります。静かな木造の駅でした。

 半田町逢坂が私の尋ねる竹内久雄氏が住まわれるところです。出発前に「日暮れ前には必ず参ります。尋ねあてる楽しみがありますので、お出迎えの心配はどうぞなさらないで下さい」という意味の手紙を出したのです。駅を降りると急に心細くなり一刻も早くたどりつきたい、町を観察しながら歩いて行こうとする余裕もなくなってしまいました。
(中略)

<半田漆器を見る>
 翌日、二階の仕事場に案内して頂く。土間があり台所の横から中二階に上りました。
 この家が建てられたのは弘化4年(1847)と棟札にあるので竹内さんの玄曾祖父、政右ヱ門の代だといいます。下地塗りする場は一階で、二階が仕上げの上塗場です。

 福井県河和田塗の若い絵師がいった言葉を思い出しました。「塗師は仕事場を見られるのは裸を見られるよりつらい」と。けれども半田を訪れた一番の願いは、この仕事場を見せてもらうことでした。四坪が二部屋で、南面に腰高の窓がありました。懐中電灯に照らし出された屋根裏は、割竹が張ってあり、棟の骨組が見えています。煤にいぶし出された棟木、周囲の壁は土壁で、二部屋にはそれぞれ室らしい戸棚がありました。

 仕事の途中の下地塗をした、大名膳、皿鉢料理の台、重箱、硯箱、猫足の膳、大形鉢、栗の小鉢、会席膳などが雑然と積み重ねてありました。すべてが墨色に静まりかえっています。

 小さい道具類を一つ一つ手にとって聞くと、漆を濾した茶碗であり、砥石、研ぎ炭、かたまった漆刷毛、空の漆桶、膳と膳との間にさし込む竹ヒゴ、漆をひくヘラ、そして漆掻きの道具。そのほかに、椀の白木地や、黒塗りの六十物といわれる仏事用の漆器などは、別棟の蔵の二階へ置いてあるとのことでした。

 二人用の箱膳がありました。
 この二人用の箱膳は、美しい朱塗りの堂々たるものでした。仕上げの上塗りはまだしてありませんが、塗り方のがっちりした堅地のものです。蓋をとると、中に飯椀二個、汁椀二個、そして小皿さえも入るほどの広さのものでした。横側には引出しが三つ。ちょうど鏡台の鏡の部分を取りはずしたようで、妙になまめかしく、しかも重厚なのです。

 八寸膳よりやや上物の博多目の会席膳がありました。博多目とは卦引きカンナで薄くけずり、博多帯の縞柄の模様のような、線引き模様を施したものです。竹内さんはこれを雑の仕事と言われたが、雑とは安価で庶民の日常の用に広く使われたという意味です。

 私もこの膳が好きになり、また値段が安そうですし、側面に使った檜の曲木の角の切り込み方も工夫されて面白い。竹内さんの話では昭和38年ごろまで、夫婦協同でひと仕事百枚単位で、八寸膳や会席膳を塗りつづけたということです。それほどこの膳に対する需要があったのでしょう。
(中略)

<木地椀が消える>
 「半田塗という名称は明治時代、小学校の地理の教科書にも収録されていたから、日本中に知られていた。特に郷土の人々には、日常の食生活にかかすことができない膳、椀中心の生活必要品が主体であったから、半田漆器の名は非常に親しみ深いものであった」
 これは竹内さんが見せてくれた昭和40年2月の徳島新聞の記事です。

 ところが竹内さんの仕事場には、膳などはあっても椀は見ることができません。私はそれが気になりました。どうしてお椀がないのかしら。竹内さんのお話では、椀をつくっていたのは、専ら敷地屋という半田では唯一の漆器問屋だったらしい。そして半田周辺の山や、半田の町なかに住んでいた木地師たちがつくった椀木地は、すべてその敷地屋に納められていたといいます。独占でした。

 また明治20年代の記録では、逢坂には40軒の塗師屋がありましたが、そのうちのほとんどが、敷地屋の賃仕事をしていたといいます。たぶん半田のお椀の大多数は、そういう家々によってつくられたのでしょう。
(中略)

<木地の道>
 車で降り立ったところは、中屋といわれる山の中腹で陽が当たり、上を見上げると更に高い尾根がとりまいています。

 「あそこは蔭の名(みょう)、おそくまで雪が残るところ、馬越から蔭の嶺へと尾根伝いに東祖谷山の道に通じています。昔、木地師と問屋を往復する中持人が、この下のあの道を登り、そして尾根へと歩いてゆく」
 と竹内さんは説明して下さると、折りしも指をさした下の道を、長い杖を持って郵便配達人が、段々畑の柔らかな畦道を確実な足どりで登って来ました。平坦地から海抜700メートルの高さまで点在する半田町の農家をつなぐ道は、郵便配達人が通る道であり、かつては木地師の作る椀の荒挽を運ぶ人達の生活の道でもあったのです。

 東祖谷山村の落合までは直線距離で25キロ、尾根道を登り降りすると40キロ。陽の高い春から秋にかけては、泊まらずに往復してしまう中持人もいたとか。さすがプロです。しかも肩に担う天秤棒にふり分け荷物で13貫(約50キロ)という重量があり、いくつも難所があったのに町から塩、米、麦、味噌、醤油、衣料、菓子類までも持ってゆき、そして半田の里にむけての帰り道は木地師が作った木地類を持ち帰ります。運賃の駄賃をもらう専門職でした。

 また半田から南東の剣山の麓近くの村、一宇村葛籠までは、峠を越え尾根道をゆき渓谷ぞいの道を歩いて25キロ。竹内さんはここで昔、木地師をしていた小椋忠左ヱ門さん夫妻をさがし当てました。51年の1月と51年の秋に二度訪れております。おそらく阿波の山でこの方ひとりが半田漆器と敷地屋とに、かかわりを持った最後の木地師ではないかと思われます。


四国西南部の田舎へ車で帰省するたびに、半田町(現、つるぎ町)を通過する大使であるが、まだこの町に滞在したことはないのです。
鄙びたこの町が昭和初期までは半田漆器の町として栄えたようだが・・・今はむかしのお話になったようですね。

「あわ文化学校」というサイトで半田漆器を見てみましょう。姫田道子さんがレポートしていた最後の塗師・竹内久雄氏は2013年に亡くなったそうです。

「あわ文化学校」半田漆器
半田漆器

半田そうめんで有名な、徳島県の北西に位置するつるぎ町(2005年に半田町・貞光町・一宇村が合併)に2003年まで職人さんがおられた伝統工芸「半田漆器」。
最盛期は明治時代中期で、江戸時代の享保年間(1716~1736)から約280年の歴史があるそうです。
2013年11月、半田漆器最後の塗師・竹内久雄氏が亡くなりました。





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Last updated  2016.10.12 07:49:43
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