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2016.10.18
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カテゴリ: カテゴリ未分類
図書館で『問題があります』という本を手にしたのです。
この本は、以前に一度借りたような気もするが・・・ま いいか。



佐野

佐野洋子著、筑摩書房、2009年刊

<「BOOK」データベース>より
中国で迎えた終戦の記憶から極貧の美大生時代まで、夫婦の恐るべき実像から楽しい本の話、嘘みたいな「或る女」の肖像まで。愛と笑いがたっぷりつまった極上のエッセー集。
<読む前の大使寸評>
この本は、以前に一度借りたような気もするが・・・ま いいか。

amazon 問題があります


洋子さんの読書遍歴を見てみましょう。

<本の始末>
 私は趣味が何もない。
 多少は運動をして身体をきたえねばと思った事もある。テニスを始めた日、顔をめがけて来たボールをラケットで受けたら、顔面にラケットのガットの格子がもち焼きあみみたいに、ベッタリと印刷された様に残り、周りの人間が大変喜んだ。私はラケットをまじまじと見つめてコートを後にした。スキーに一度だけ行ったことがある。斜面を下へすべろうとすると何故か私は後向きに斜面をずり上がって行った。不思議な才能があるものである。

 ビデオ屋で一度に7本のビデオ映画を借りて二日で見てしまうが、私はどうしても役者の名前を覚えられない。ハリソン・フォードとケビン・コスナーの区別がつかない。老化が進んでますます難儀であるが、数は増えても映画マニアと話が合わせられるほど頭の中が整理されていない。で、子どもの時から寝っころがって本ばかり読んでいた。
(中略)

 初めての給料で『リルケ全集』の一冊を手に入れ、毎月、小さな銀色に光る紫色の本を一つずつ増やしていった時の嬉しさは忘れない。それでも好きな本を好きなだけ買えなかった。私は古本屋をうろついた。中野の古本屋の小父さんは高いところの本を指さすと「あんな高いところのもんはめんどくせえ」と売る気がなかった。

 アレキサンドリア四部作はその店で買った。
 同じ店で、日本怪談全集の第4巻も手に入れた。他の巻は無かったのだ。
 『ファニー・ヒル』が発禁になった日、私はその店へ早朝にすっとんで行った。発禁になったイヤラシイ部分だけを読みたかったのだ。小父さんは「あんなものを売ったら、私の手が後に回る。あんたみたいな若い女の子が読むもんじゃない」と私の品性を見抜いた。小父さんは更に言った。「日本で出ているのは、原作の三分の一しか訳していない。あの本を最初に訳したのは鎌倉のお医者で戦前にすでに訳されている。発禁になっているものなんざあ、骨抜きになっているもんだ。アンタ、どうしても読みたかったら羽田の本屋に行きな、原書がある。黄色い表紙だ、何、たいして難しい英語じゃねェーよ」と大変にくわしいのだった。

 そして、家の中に入って「ホレ、うちで買ったって言うんじゃねェーよ」と、発禁本を持ち出して売ってくれた。私のせまいアパートに本棚が少しずつ増えていった。その頃まで、私は本を捨てるなどと考えもしなかった。
 何しろ趣味の無い人だから、本ばかり増えていった。
 家を建てる時、崖下を掘って書庫を作った。それでも本は増え続けた。その書庫に入って来た人に「下らない本ばっか並べちゃって」とせせら笑われた。当たり前だ、『野口英世』と『六本指の男』とカストリ雑誌が一緒くたの人間だ、中身が上等であるはずがない。
 趣味もなく酒ものまない私は本くらい好きに買えるようになった。本は増え続ける一方である。私は古本屋にダンボールにつめた本を売りに行った。
 「マンガ本と文庫本だけは買うよ」と言われ、他の本は明らかに迷惑そうであり、ほとんど金を払ってくれなかった。

 考えてみれば、私は研究者でも教養人でもない。本を残しても、読んだ本をもう一度読むことはほとんどないことに気がついた。
 本当に必要な時は図書館に行けばいいのだ。私は読み終わると、友達に、「この本あげる、返してくれなくてもいい」と言うようになった。すると友達も自分の本を「この本あげる、返してくれなくてもいい」と言う。「置くところ無いんだもん」と同じなのだ。
 「この本は返してね」と言われる本は、私も返したくない本だったりする。

 私は活字さえ読んでいればいいのだと気がついた。若いもんがウォークマンを聞きっ放しと同じ、バックグラウンド・ミュージックみたいなのだ。
 読んでも次から次へとすぐ忘れる。それに本は読んでみないとわからない、十冊読んでも「ああ読んでよかったなあ」と思う本より、「マ、一応読んだか」か「ああ金損したなあ」と思う方が多い。

 1年に1冊「ああ素晴らしい、世の中はやっぱり限りなく美しい、生きていてよかった。この本は人に貸すのも惜しい」という本に行きあたれば運がいい方なのだ。このごろは3年に1冊位かも知れない。



『問題があります』1





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Last updated  2016.10.20 17:37:13
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