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2016.10.21
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『宮本常一とあるいた昭和の日本23』という本を手にしたのです。
シリーズ本23のテーマは、「漆・柿渋と木工」となっていて・・・
大使のツボでんがな♪



23

田村善次郎監修、農山漁村文化協会、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
阿波半田の塗師、宮城県鳴子の漆かき、越前大野の木地屋と塗師、各地の柿渋屋、南会津の太鼓屋など、伝統工芸を受継いできた人々を訪ねる。

<読む前の大使寸評>
シリーズ本23のテーマは、「漆・柿渋と木工」となっていて・・・
大使のツボでんがな♪

amazon 宮本常一とあるいた昭和の日本23


須藤護氏のレポート「越前漆器を訪れる」で木地屋のくらし見てみましょう。
p171~173
<木地屋のくらし>
 周囲の山々の紅葉はすでに色あせて、民家の背後に、そして比較的なだらかな山の斜面に植えられたスギやヒノキが、緑色をはっきりと浮き出させていた。昭和60年、車窓から見る越前の景色は、すでに冬の到来を告げていた。

 福井から約1時間で大野盆地に入る。4万石の城下町大野の東方には両白山地が高くそびえ、その裾野のあたりまでうっすらと雪化粧しているのが見える。

 越美北線は昭和41年の電源開発によってつくられた九頭竜湖駅が終点であるが、私はいったん越前大野駅で降りることに決めていた。大野には漆器の産地として知られる越前河和田や加賀の山中へ送り出す木地の工場があることを聞いていたからだ。大野市の市史編纂室を訪ねて概況をうかがったあと、室長の田中先生に案内されて桜井木工所を訪ねた。
 市役所への途中に出会った人や、市史編纂室でたずねても、木地工場の現状は具体的にはわからなかった。そのとき田中先生が「桜井さんの所ならまだやっているかもしれない」といって案内してくれたのだが、このひと言で大野とその周辺の木地業が、この地方の産業の主役の座を、すでに降りていることを感じた。そして北陸の初冬の空のように、何か暗い、重くのしかかってくるものがあった。

 後に聞いた話であるが、越前大野には桜井木工所のほかに丸裕、笹島木工所、山口製材所といった木地工場があり、このほかにも数軒の工場があったが、近年閉鎖したという。プラスチックやその他の製品におされて、工場の経営も楽ではないとのことであった。

 幸いなことに桜井木工所は御主人の桜井武さん(昭和2年生)と弟さん、息子さん、そして奥さんの4人で作業していた。典型的な家族労働である。

 その夜、話をうかがった桜井さんは、年のわりには昔の木地屋の生活をよく知っていた。子供の頃に両親とともに山に入り、両親の仕事ぶりを見て過ごした体験があったからだ。また母親のスエさん(明治38年生)も話をしてくれたので、いっそう山の暮らしを頭の中に思い描けるようになった。
(中略)

 木地屋の集団には親方とよばれる人がいた。親方は地元の山主から、この地方の木地の原木であるトチ、ケヤキ、ミズネが多く自生している山を買い、その山に職人を入れて木地を挽かせるとともに、若い職人の養成もしたようである。

 親方は加賀の山中の出身者が多く、スエさん夫婦も最初のころは山中の親方についていたという。
 スエさん夫婦が入った山は、主として岐阜県境に近い旧上穴馬大谷、久沢、上伊勢、下伊勢の山で、そのすぐ北には平家岳、左門岳、屏風山などの1300~1400メートル級の山が連なり、その名のごとく屏風のようにそそり立っている。大谷、久沢、上伊勢、下伊勢といった村むらは、山仕事と農業、峠越えの物資輸送などで生活をたててきた山村である。木地屋はそこから1里ほど離れた山中に、小屋を建てて生活の拠点にした。

 木地屋が活動する範囲は、1里という距離が基準になっていたようである。木地屋が住居兼仕事場にしていた小屋を一般に木地小屋というが、この小屋から半道(2キロメートル)の範囲に原木がなくなると、また木のある場所に移っていく。木地小屋を中心に半径2キロ、つまり直径1里の範囲になる。

 この距離は原木や木地椀の運搬と密接に関係しているようで、福島県会津地方でも同じような傾向がみられた。

 木地屋の生活の場も仕事場も山であった。古くは家族ともども年間通しての山暮らしであったが、越前地方では次第に里山や大野市に降り、春から秋までの雪の降らない間だけ山に入るようになったようである。スエさん夫婦も結婚した当初は、冬期間も山を降りなかったというから、大正時代の後期ごろまでは山から山へ渡り歩く木地屋の姿があったとみられる。


『宮本常一とあるいた昭和の日本23』1





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Last updated  2016.10.21 00:02:12
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