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2016.12.06
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『反知性主義とファシズム』という本を手にしたのです。
パラパラとめくると・・・
『1Q84』とか『風立ちぬ』とかも載っていて、意外とアート関連のお話も多いようです。


ファシズム

佐藤優×斎藤環著、金曜日、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
AKB48・村上春樹・宮崎駿ー知の怪物と気鋭の精神科医が、カルチャーから日本社会を読み解く!
【目次】
第1章 AKB最終原論(橋下批判とパラレル/アベノミクスも宗教 ほか)/第2章 『つくる』の解釈に色彩を持たせる(核となる灰田の物語/『つくる』で描かれた死者の視点 ほか)/第3章 『風立ちぬ』の「ふやけたファシズム」(百田尚樹とは位相が違う/堀越二郎の縁戚者に映画を見せた ほか)/第4章 日本にヒトラーは来ない(日本でファシズムが起きるとしたら…/北朝鮮のファシズム ほか)

<読む前の大使寸評>
パラパラとめくると・・・
『1Q84』とか『風立ちぬ』とかも載っていて、意外とアート関連のお話も多いようです。
rakuten 反知性主義とファシズム


最後に、この本のメインテーマとも言える、ヤンキーや反知性主義を見てみましょう。
p245~249
<ヤンキーもファシズムに呑み込まれない>
佐藤: 私も、おそらく日本にはファシズムっていうのは来ないと思うんですよ。

斎藤: ファシズムの形態は取らないだろうっていう感じがするんです。危険はあるかもしれませんけど。

佐藤: 斎藤先生がおっしゃるヤンキー政治ですね。自民党の一強体制で、論理展開を無視する反知性主義が横行しています。これがこの先どこに向かって、どういうモデルになっていくことが考えられるんでしょうか。

斎藤: モデルも行き先もないので、僕は「ヤンキー主義」と名付けざるを得なかったというか。ただ、一種の美学はあるだろうと思うんですよ。

佐藤: 『永遠の0』みたいな美学ですね。

斎藤: そうですね。「美しい国」的な、そういう美学はあるでしょう。そういう美学の部分にも多少危険性があると思うんです。でも、その美学にはロジックが全然ないというか。ヤンキー主義というのは、もともと理論武装してる人ですら、バカになってしまうという空間です。そういった意味では、ファシズム的な暴走の危険は少ないでしょう。

 それから、ヤンキー主義というのはある種のエートスで、一方には論理性があるわけです。道徳性といってもいいかもしれません。自民党もそうですけど、ヤンキーは道徳がすごく好きです。たとえば、「親を大事にしましょう」とか、「人に迷惑をかけないようにしましょう」とか、「絆を大事にしましょう」とか。ヤンキーには、こういう素朴なところに回帰する回路がある。だから、ファシズム的な尖った暴走には至りにくいというか、ファシズム的な方向に行こうとすると、みんなが引いてしまう感じです。

これも隣組的な同調圧力だと思うんですけれどもね。でも、それがけっこう安全弁になってる感じです。日本の犯罪率の低さなんかも、ヤンキー性が不良性を回収してる部分が影響してるでしょう。よさこいソーランに代表されるように、群舞で不良性の衝動を吸収してしまう。誰が考えたんだか知りませんけど、非常にうまくできた構造です(笑)。

佐藤: イタリアのファシスト党のように、郡部から中心への行進が起きないということですね。

斎藤: マスゲームにも、行進にもならないという群舞の文化があります。群舞って、どう理解していいか、わかるようでわからないところもあるんですけど。群舞の中でも決して人心一つにはなりません。けれど、傍目に見ると気持ちが悪い。もちろんマスゲームほどは極端化しません。まさにヤンキー的中間集団の極みとしか、言いようがない。中間集団というのは、すぐバラけてしまうので、全体集団になりにくいということかもしれません。

佐藤: 中間集団としての結集軸は、シンボルですか?

斎藤: シンボル的なものはあると思います。

佐藤: 中間集団の中では、実際に助け合いますか?

斎藤: 助け合います。「絆」ですから。

佐藤: 金出したり、メシ食わしたり。

斎藤: そのくらいはします。儒教文化圏の特徴かもしれませんけど、絆でつながっているときは支え合うんです。ただ、ある一線を越えちゃうと徹底的に排除するっていう一線の引かれ方があります。

佐藤: その一線っていうのは可動的なんですね。

斎藤: かなり可動的だと思います。集団によっても違うと思いますし。

佐藤: 同じ集団でも、時代状況など与件が変わると、その一線も変わってくるわけですね。

斎藤: ええ。ファシズムの関係で言えば、内藤朝雄さんが言う、 「中間集団全体主義」 という形だと思うんです。いわゆるファシズムとは違うんですけれども、さっき佐藤さんがおっしゃった同調圧力のように、中間集団は、たとえば学校のクラスでスクールカーストを作ったり、いじめの温床になったりというレベルの問題が起こってるということになります。スクールカーストのように、階層があると閉じやすいという構造がいろんなところに出てくるということではないでしょうか。

佐藤: そうすると、新自由主義におけるアトム的な人間観や社会観とは当然ぶつかります。

斎藤: ええ。個人主義の否定ですから。

佐藤: だから、新自由主義的な流れが出てくることに対する反発として、今お話しされた、身分的な、あるいは、前ファシズム的な処方箋というのは出てき得るわけですよね。

斎藤: 処方箋・・・。

佐藤: 全体として合成されるとよく見えませんね。

斎藤: 全体の合成を考えないシステムになってますから。

佐藤: でも、システムとして、きっとどこかで合成できてるはずです。

斎藤: まあ、そうですね。ヤンキー的なものが非常に不気味なのは、別に統制しようという意思がないにもかかわらず、みんなの世間的な倫理観から価値観ができてしまうところです。

佐藤: ヤンキー的なもの、ファシズム的なもの、それから新自由主義的なものに対して、教養主義って対抗軸になりえますかね。

斎藤: なりうるんじゃないでしょうか。

佐藤: 処方箋ということを考えると、やはり教養主義的なものっていうのは非常に重要です。

斎藤: 同感です。



ファシズムの続きを見てみましょう。。
p250~252
<ファシズムよりも恐ろしいもの>
佐藤: 日本では「ファシズムが軽々に成立する」っていう警鐘を鳴らさない方がいいと思うんです。それはオオカミ少年の話になりますから。

斎藤: そうなんですね。

佐藤: それよりも、ファシズムと民族の関係についてよく考える必要があると思います。日本のインテリの中にある、ナショナリズムにおけるダブルスタンダードが要因の一つです。要するに、インテリは大民族のナショナリズムに関しては同胞主義的なんです。「支配の道具である民族なんていうのは、近代にできたものでとんでもないものだ」と。

 民族の上に乗っかるのは、抑圧の論理だと主張する。ところが、小民族の論理になると、急に原初主義的になって、「民族は昔からあるから自決権を尊重すべきである」となってしまう。どこまでが大きくで、どこまでが小さいのかという区別がものすごく曖昧で、ほとんど意味のない議論になってくるんですよ。

斎藤: なるほど。

佐藤: ただ、日本人は恐ろしいことに、民族に対して鈍感です。民族に対して鈍感なところに「内」と「外」をどうやって作っていくのかということです。
 実際のところ、在日朝鮮人や中国人など外部としての民族っていうことに対して、非常に鈍感なんですよ。それに沖縄人も含まれつつある。

斎藤: またその鈍感さにも、ファシズムへのなりにくさがあると思います。

佐藤: あると思います。ファシズムの場合、やはり「内」と「外」っていう仕分けが必要ですから。

斎藤: そうですね。

佐藤: 私はなぜファシズムがいかんと思うのかというと、必ず非国民を作りだすからなんです。

斎藤: ええ。

佐藤: ファシズムの内側にいる人はそれがわからないから、ファシズムはいいと思ってしまうわけです。ただ、非国民だって認定された側にとっては、こんなシステムは堪ったもんじゃありません。

 イタリアのファシズムは、「内」と「外」の仕分けっていうことをしても、ナチスのように極端な形にはなっていません。逆に、ナチス型になってきた場合、人種やイデオロギーなど、いろんなものがファシズムの中に入ってきてしまう。それで、ユダヤ人種の絶滅みたいな話になってくるんです。

斎藤: そうですね。

佐藤: 逆に、日本はファシズムすら成立しないような恐ろしい状態になっている・・・・。

斎藤: という言い方の方がずっと説得力があります。安部総理をヒトラーに例えるような茶番をやってると、本当に不満を抱えている人たちの大多数から「アイツらと一緒になりたくない」っていう反発が出てくるので。

 今の状況からファシズムというのにあんまり飛び付かない有効な批判ができるのではないかということを提案したいんです。


『反知性主義とファシズム』1
『反知性主義とファシズム』2






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Last updated  2016.12.06 06:24:36
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