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2017.01.30
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カテゴリ: 歴史
図書館に予約していた『日本人はどこから来たのか?』という本をゲットしたのです。

航海



日本人

海部陽介著、文芸春秋、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
約10万年前、アフリカを出た私たちの祖先は、4万8000年前、ヒマラヤ山脈を挟んで、南北に別れて拡散、1万年後、東アジアで再会する。そして、私たちの遙かなる祖先は、古日本列島に、3ルートから進出した。3万8000年前の航海術の証拠そして実験、世界各地の遺跡の年代調査比較、DNA分析、石器の比較研究。国立科学博物館気鋭の人類学者の重層的な調査によって浮かび上がる日本にいたる人類の「グレート・ジャーニー」その新たなる仮説ー。

<読む前の大使寸評>
今夏の航海の再現実験の失敗にはガッカリしたのです。・・・でも、この一見アホな実験を企てた人は賞賛に値すると思うのです。
その張本人の出した本とあれば、惹かれまんな♪

<図書館予約:(10/11予約、1/28受取)>

rakuten 日本人はどこから来たのか?


台湾~与那国島の渡海の困難さを見てみましょう。
p166~169
<台湾から与那国島に行くには100キロ以上の航海が必要だった>
 ワラセアの海域には、最長80キロメートルの航海でサフルランドに到達できるルートがある。つまり、ワラセアの海は、人類最初の海洋進出には適した場であったのかもしれない。この偉大な最初の航海の後、さらにいくつものチャレンジを続けて、祖先たちは次第に遠くの海洋世界へ出て行くようになったのだろう。私はそうしたステップの中で、琉球列島への渡海には、ワラセアの次の段階の挑戦があったと考えている。

 先に考察したように、琉球の島々への移住には、南北両方からの移動があったようだが、九州からの南下が確認できるのは大隈諸島までで、沖縄島への移動は台湾からの北上であった可能性が高い。奄美群島への移住経路については、現段階ではよくわからない。

m図7図7

 当時海面は今より80メートルほど低かったので、琉球列島の地形はおおよそ図7のようであったと考えられる。九州島と種子島は22キロメートルほど離れていたが、これは3万8000年前に対馬海峡(40キロメートル)を横断している人々にとっては、大きな問題ではなかったろう。

 しかし台湾から北上するルートは、最初の与那国島への渡海から大きな問題にぶちあたる。台湾~与那国島の直線距離は、海面が低かった当時でも105キロメートルほどあった。しかも与那国島は小さくて低いので、近くまで寄らないと舟から目視できない。祖先たちは、目的地が見えない航海を強いられたということになる。小さな与那国島をやり過ごして、最初からより大きな西表島を目指したと考えてもよいが、目的地が見えないことに変わりはなく、かつそれはもっと距離の長い大航海となる。

 次の問題は、海流だ。現在、台湾と与那国島の間を、黒潮が横断している。フィリピン沖から北上して日本列島と絡むように流れる黒潮は、世界最大規模の海流の一つで、その幅は100キロメートルに及び、流速は速いところで毎秒2メートルに達するという。これを動力のない小舟で横断するのは容易であったはずはなく、海流に流されることを見越し、かつ航行距離が伸びることを覚悟して、台湾からの出発地を南に下げないと与那国島に到達することはできなかったはずだ。

 4万~3万年前の黒潮がどこをどう流れていたのかは、実はまだ解明されていない。しかし台湾~与那国島の海峡は深さ800メートルに達するので、海面が80~130メートル下がったところでこの巨大海流が止まるわけはないだろう。
(中略)

 このように台湾から与那国島への渡海は一筋縄では行かないのだが、話はこれで終わらない。八重山諸島から宮古初頭までは、次の島が見える距離になり、60~30キロメートルほどの航海を繰り返せば宮古島まで行ける。しかしその先の沖縄島は220キロメートルの彼方にあったので、またしても見えない目的地への、しかもさらに遠い距離の大航海にチャレンジしなくてはならなかった。


今夏にも台湾~与那国島の航海実験が予定されているようだが…
この航海の出発地が朝鮮半島でなくて台湾というのが、なんとなく惹かれるのでおます♪
古代人の渡海の困難さが、ナショジオに載っていました。

フィリピンから台湾へ、風待ち停滞と国境の壁
縄文号縄文号(奥)
 2年目(2010年)の航海は最初に難関が待っていた。フィリピンのパラワン諸島とミンドロ島の間にあるミンドロ海峡80キロを渡らなければならない。最短コースでもベーリング海峡と同じ距離だ。今まではセレベス海、スールー海という、島々に囲まれた比較的静かな海を走って来たが、これからは、南シナ海に放り出される。うねりも波も大きくなるはずだ。

 私たちは5月中旬に出航するため、パラワン諸島北端のコロンにいた。出航をこの時期にしたのは、フィリピン、台湾、沖縄の風の動きのデータを読んでのことだ。
 ここ30年間のデータを見てみると、この地域は共通した風の動きをしていた。10月から4月までは北風が吹いているが、5月に風がやみ、やがて南風が吹き始める。
(中略)

■帆走4割、漕ぎ4割、風待ち2割
 5月21日の午後から弱い南風が吹くようになり、23日早朝に出航することに決めた。ミンドロ海峡は南からの微風で、穏やかだった。最後は風が止み、漕がなければならなかったが、無事渡れた。

 しかしそれから南風はめったに吹かなかった。ミンドロ島とルソン島の岸に沿って北上していくのだが、北寄りの、前方から吹く風が多く、四苦八苦しながら進んだ。1日60キロ以上進んだこともあったが、大抵は20キロほどで、6キロしか進まなかった日もあった。マニラ湾を通過したのが6月10日。予定よりかなり遅れた。1日およそ12~13時間航海していた。私が乗っていた縄文号に限って言えば、時間で言うと、帆走4割、漕ぎ4割、風待ち2割という割合だろうか。

(中略)
 台湾の方は大方問題はなかったのだが、「インドネシア人クルーの海外旅行保険証はインドネシア語で書かれているので、英語に翻訳し、在日インドネシア全権大使にその保険証が本物で、英訳が正しいかを確認してもらい、その証明書を提出するように」という難題を突き付けてきた。結構ハードルの高い要求だった。

 私たち自身はいつでも出発できる準備ができていて、実は出発直前にやるイスラム式の儀式は済ませてしまった。しかし、海のグレートジャーニーも、太古の人々にはなかった国境の壁が大きく立ちはだかっていた。


『日本人はどこから来たのか?』1





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Last updated  2017.01.31 22:04:56
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