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2017.08.23
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カテゴリ: 歴史
図書館で『満州事変から日中戦争へ』という新書を、手にしたのです。
1931年の鉄道爆破作戦は、日本近代史のまったくエポックメーキングな事件ではないか…ということで借りたわけでおます。




加藤

加藤陽子著、岩波書店、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
「満蒙の沃野を頂戴しようではないか」-煽動の背景に何があったのか。満蒙とは元来いかなる地域を指していたのか。1931年の鉄道爆破作戦は、やがて政党内閣制の崩壊、国際連盟脱退、2.26事件などへと連なってゆく。危機の30年代の始まりから長期持久戦への移行まで。日中双方の「戦争の論理」を精緻にたどる。

<読む前の大使寸評>
1931年の鉄道爆破作戦は、日本近代史のまったくエポックメーキングな事件ではないか…ということで借りたわけでおます。

rakuten 満州事変から日中戦争へ


張作霖爆殺あたりの軍事的・政治的背景を、見てみましょう。
p88~91
<吉田茂の苛立ち>
 眼目は二つ目の張作霖引退勧告にあったが、田中はこの項目を削除した。外務も陸軍も、張の下野が望ましいと考えていたので、有田八郎亜細亜局長や白川義則陸相は田中を説得した。しかし、田中は撤回に応じようとはしなかった。鉄道交渉や東三省政権の財政改革などを満鉄にやらせ、あくまで張を相手とする、この点についての田中の決意は固かった。田中がいる限り張を排除しえない。こうした認識は、陸軍の中に広まったであろう。

 張を引退させるべきだと考えたのは陸軍だけではなかった。その1人に奉天総領事・吉田茂がいた。なぜ張はこれほど忌避されたのだろうか。東方会議後の「満蒙における懸案解決に関する件」(27年7月12日)をみると、外務省が、鉄道よりも「東三省の条約違反その他不法措置」解決を最優先課題としていたことに気づく。吉田は、イギリスが「12月メモランダム」で中国側に認めたワシントン付加税に強く憤慨していた。

 25年10月、12ヶ国を集めて開催された北京関税特別会議(26年7月無期延期となる)は、28年7月7日、国民政府が不平等条約廃棄、新条約締結宣言をした時点で閉会となっていた。ワシントン会議で決定された中国関税条約第2条は、中国各地の地方政権の課している通行税であるリ金を廃止するため特別会議を開催し、リ金廃止が確認されて後初めて2.5%の増税を許す、と定めていた。

 吉田にとってみれば、リ金の廃止もなれないままに、イギリス側の一存で中国全土での新税課税が始まったのは許しがたかったのであろう。吉田はまた、北伐軍との戦闘の軍費を補うため、張が東三省で行った紙幣乱発を批判していた。奉票と呼ばれたその紙幣が暴落すれば、日本からの綿布輸出が不利となるからである。

 吉田の張作霖批判は辛辣であった。27年6月10日、「軍閥私闘の為に東三省の治安を撹乱せしめざる我が決意」を示すため、たとえば張にとって、最も重要な奉天工廠を占拠するか、山海関・トウ南・吉林など鉄道主要地点を日本側は占拠すべきだと具申していた。

<張作霖爆殺>
 基本的に「東三省の条約違反その他不法措置に関する件」を重視していた吉田など外務省の出先は、ワシントン体制からの逸脱を辞さない英米側の態度もあり、また北伐に対して日本軍が軍事的に干渉した結果起きた済南事件の衝撃もあり、中国側からの批判の矢面に立たされるようになっていた。吉田が、田中への意見具申の中で、張作霖以外の東三省実権者擁立を切望するようになってくるのにも、こうした背景があった。

 28年6月3日午前1時15分、張は関外へ退去するため北京駅を発った。国民革命軍、北京入城の5日前のことである。張の乗る列車は、4日早朝、京奉線と満鉄線の交差する地点・皇姑屯で爆破され、張はその日のうちに死亡した。

 事件は、関東軍高級参謀・河本大作らによって準備されたものだった。河本は、21年3月から23年8月まで北京の公使館付武官補佐官を、その後24年8月まで参謀本部支邦課支邦班長を務めた人物であった。

 事件を知った蒋介石は翌5日の日記に「日本人の陰険たるやかくの如く、わが東北国防はいかにすれば強固にし得るだろうか」と記す。事件から1ヵ月余り前の4月27日、参謀本部第一部長・荒木貞夫と第二部長・松井石根に宛て河本が出した書簡が残っている。この手紙からは、国民革命軍による張作霖の撃破を、河本が強く望んでいたことが判明する。


ウーム 公使館付武官には「殺しのライセンス」が許されているかのような所業であるなあ・・・・
まさか河本大作氏がイアン・フレミングの愛読者だったとは思えないが(笑)。





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Last updated  2017.08.23 18:04:54
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