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2017.10.07
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『セーヌの川辺』という本を、手にしたのです。
目次を見ると、全篇に亘ってヨーロッパや多言語のエッセイである。ちょっと気が重くなるが・・・読んでみるか。



セーヌ

池澤夏樹著、集英社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
フランス・パリ郊外に位置するフォンテーヌブローに移り住んで一年。著者はエッフェル塔と東京タワーを比較しながら理想の国家のあり方を模索。電力の75%を原子力に頼るフランスでエネルギー問題を考え、サッカーW杯で起こったジダンの頭突きからナショナリズムに思いを巡らす。海外に暮らし、相対的な視点で捉えることで浮かび上がってくる日本のかたちを鮮やかに綴るエッセイ集。

<読む前の大使寸評>
目次を見ると、全篇に亘ってヨーロッパや多言語のエッセイである。ちょっと気が重くなるが・・・読んでみるか。
なお、借りたのは、2008年刊のハードカバーでした。

rakuten セーヌの川辺



多言語のスイスが語られているので、見てみましょう。
p33~36
<クリスマス、EUと多言語社会、コープランド、ブルギニヨン>
 言葉の違う人々が一つの国を形成して、その状態が何百年も安定している。どうしてそんなことが可能なのかと考え込むのは、ぼくが日本人であるからかもしれない。日本という国は言語の面において格別に統一性が高い。日本語以外の言語がほとんど使われていない。それが国家意識の中心にあるから、スイスのような多言語の国の形が理解しにくい。

 どうしてスイスはこういうことになったのだろう。まず考えられるのは、地理的な条件が国の形態を決めたということ。ともかく山である。フランスから東に行っても、ドイツから南に、オーストリアから西に、イタリアから北に行っても、山を登ったところがスイスだ。どこの領土にもならずに残された地に山に登って辿り着いた人々が、背後に残してきた言語圏の言葉を保ったまま国家を形成した。

 彼らは互いの出自が異なることを決して忘れず、しかし一国でまとまることの利もよく承知していて、あのような国を作った。一人の王の下に結束はしない。一つの言語に統一もしない。カントンは地方自治体ではなく準主権国家であり、その連邦がスイスという国なのだ。直接民主主義も民兵的な国民皆兵もこの国家形態に沿って作られた制度であるのだろう。利の方は世界第5位の国民所得がよく証明している。

 ヨーロッパに住んでいるとたくさんの言語にさらされる。
 テレビを買えばマニュアルは数ヶ国語で書いてあるし、長距離列車の中のアナウンスも、フランス語とドイツ語と英語が次々に聞こえる。看板など仏・英・独・伊・西あたりは見ればわかる、と思うけれど、スペイン語とポルトガル語の違いはむずかしい。

 耳で聞く場合はいよいよわからない。時々頼むタクシーの運転手が携帯電話で友人と喋っていた。終ってから「スペイン語?」と聞いたら「ポルトガル語」という答えが返ってきた。ぼくのフランス語の教師も父母が共にイベリア半島の出身で、自分はフランス生まれ。語学が好きでよく勉強したからラテン系の言葉はたいていわかると言っていた(その代わりなのか、何か別に理由があるのか、英語は一切話さない)。

 こういう環境で、自分の母語以外にも世界にはたくさんの言葉があることを生活の中でいやでも知らされる。それだけで外語が身につくわけではないが、なにかと耳や目にしていればそれを学ぼうという促しにはなる。フランス人のほぼ半分はフランス語しか使わないが、40%は英語を、16%はスペイン語を、8.5%はドイツ語を、6%はイタリア語を理解できるという。

 こんなこっとが可能な理由の一つに、言語どおしが近縁で、さほど努力を要さずとも習得できるということが挙げられるだろう。少なくともラテン系の言葉の間ではまちがいなくそう言えるし、オランダ語とドイツ語も方言を介すれば連続的につながっているらしい。ラテン系とゲルマン系の間にはある程度の違いがあるけれど、文法や発音はともかく語彙はヨーロッパ全体で共通するものが多い。生活語は違っても抽象語は少し綴りが違うだけで実際には同じ。

 先にぼくは外語というあまり使われない言葉を敢えて使った。日本の辞書では外語とは「外国の言葉。外国語」ということになっている。しかしここまでの話でわかるとおり、この定義は正確ではない。つまり、言語を論じる時に国を介在させると現実に即さなくなる場合が多いのだ。

 スイス人にとって母国語とは何か? 憲法で認められた先の四つの言葉すべてを指すのか? 大事なのは人生の最初に習得し、日常最も多く使っている言葉、すなわち母語である。同じようにして、母語でない言葉もまた外の国の言葉とは限らない。
 こう考えてくると、非母語、二次的に習得しなければならない言葉、は自国の言葉であっても外国語ではないわけだから外語と呼ぶべきではないかと思うのだ。

 すべては一国に一言語という日本特有の事情から生まれた誤解なのだろう。日本語は孤立性が高い。似たような言葉が近隣のどこにもない。だから、日本人にとっては母国語と外国語の間の溝がとても広くて深く、他の言語はすべて遠いものに思われる。その結果、母語と母国語は重なっている。地理的に島国である以上に日本は言語的に島国である。

 ヨーロッパで日本文化について話す時、ぼくは、日本語と中国語はフランス語とアラビア語くらい離れているという説明から始めることにいている。


ウン スイスという国は、日本とは対極にあることがよく分かりました。





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Last updated  2017.10.07 00:21:57
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