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2018.01.23
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カテゴリ: 中国
図書館で『「在中二世」が見た日中戦争』という本を、手にしたのです。
戦争を見聞きした世代が絶えようとしている昨今であるが・・・
日中戦争時、青島の日本租界ですごした著者の少年時代が、興味深いのです。



日中

若槻泰雄著、芙蓉書房出版、2002年刊

<「BOOK」データベース>より
満州事変から太平洋戦争までの激動の時代、「外地」に住む少年が見たものは…?学校生活、軍国主義教育の浸透、中国人・欧米人との関わり、日本軍の蛮行、天皇制への疑問、日本人のアイデンティティなど、歯に衣きせぬ筆致で「大人の論理」を徹底的に批判する。

<読む前の大使寸評>
戦争を見聞きした世代が絶えようとしている昨今であるが・・・
日中戦争時、青島の日本租界ですごした著者の少年時代が、興味深いのです。

amazon 「在中二世」が見た日中戦争


「第二部 盧溝橋事件から真珠湾攻撃まで」から、語り口をちょっとだけ見てみましょう。
p115~121
■半年ぶりの帰青
 昭和13年(1938)4月、私は東京から日本軍占領下の青島に帰ってきて、「青島日本中学校」の2年生に編入された。まだ全員が復学していないとみえ、生徒数は少し減少し、逆に新しい若い先生2、3人増えていた。中国で勤めていれば召集されないという噂を聞いたことがあるが、昭和15、6年頃までは、大陸の第1線で職についているものに対しては別に教師に限らず、そういう配慮があったらしい。

 事実、青島に住んでいる日本人たちには、真実か建て前かは別として、「大陸の第1線」的気分が少しはあったような気がする。これは盧溝橋事件以後に限らず、それ以前からあったことで、明治以来の日本の基本的国策である「海外発展」、「大陸政策」の前衛を担っているという自負のようなものがあったのだろう。

 半年ぶりの市街には破壊の跡はまったく見られず昔のままだったが、前よりいくらか静かなような気もした。日本との断交で経済活動は沈滞し、日本軍の占領下で暮らすのをいやがって脱出した中国人が少なくなかったためだろう。事実、市長以下の市政府の高官や名士たちもほとんど姿を消していたし、私の家の周囲にも2、3軒、住民が変わってしまった中国人の家があった。

 市街は一見被害は免れたとはいっても、日本人の中には、盗難、破壊といった被害を受けた人もいたようだ。私の家は、父が古くから付き合いのあったドイツ人に管理を頼んであったので無事にすんだが、父が自慢していた清朝王室が使っていたと称する硯はなくなっていた、とのことだ。大事なものだからわざわざ地下室の石炭倉庫の中に隠しておいたのが裏目に出て、石炭をちょっと失敬しようとしたボーイにでもとられたのだろう。中国人の使用人の大部分はそのまま残っていたが、やめてしまった者もいた。

 市内の被害が軽微だったのに比べ、郊外にある日本の紡績工場は、ところどころに煉瓦の壁を残すだけで、屋根も機械も跡かたもなくなり、文字通り「瓦礫の山」ではなく、「瓦礫の平地」と化していた。私は二つの工場を見に行ったが、こういった状況はどこの会社の工場も同じだったという。日本軍の上陸も迫ったと見られた前年12月、市当局の命令により、爆破放火されたとのことだった。確かにこれほど徹底した破壊は、中学生の目にも、単に暴徒の襲撃ではないように感じられた。

 町は静かであまり変わっていないと書いたが、やがて、急速に変わってくるようになった。何も青島だけではなく、日本全体、さらには日本軍の占領下の地域はどこでも、戦争の進展とともに変化していったのであろうが、それに加えて、私自身が未熟な少年から、少しは観察眼や考察力をもつ年齢に達したことも大きく影響していたに違いない。

 青島の状態、そして私の内外の状況は、様変わりしてきたのである。平和な時代は去り、動乱の時代が始まった。

■もう中国ではなくなった青島
 決定的な変化の第一は言うまでもなく、青島の権力者が変わったということである。青島はもう中国ではなく、日本軍の占領地であった。「市政府」という中国の役所はなくなり、その大きな建物は「海軍陸戦隊本部」となって、国民政府の「晴天白日旗」に代わって「軍艦旗」がひるがえっていた。

 玄関にぶらぶらと立っていたカーキ色の制服を着た中国人巡警は姿を消し、紺色の制服に紺色の戦闘帽をかぶり、帯剣を腰にして小銃を握った陸戦隊員二名が厳然と立っているようになった。

 治安が確立したためだろうか、日本軍の兵隊も武装していない姿を多く見かけるようになったし、海軍と陸軍のトラックがスピードをあげて町の中を走っていた。もともと自動車の少ない静かな道路だったから、走り回る紺色(海軍)と国防色(陸軍)のトラックはよく目立った。

 済南を経て、膠済線から青島に向かう陸軍の占領部隊と、東シナ海から直接上陸する海軍陸戦隊がどんな関係だったのかなど、その時は考えもしなかったが、戦後、「戦史」を読んでみたら、いろいろな疑問が生じ、特に、利用すべき公共建築物の接収については両者の間で一悶着あったことを知った。

 日本軍の権力の下に、中国側の自治組織として「治安維持会」なるものが設けられ、その看板のかかった建物の前には、昔ながらの巡警が立っていた。この治安維持会というのは、占領後も居残っていた「親日派」と目される地方名士を集めて結成した行政機関で、実質上、日本軍があやつっている軍政の下請け機関といったものだ。日本軍がいつもよくやる「傀儡政権」のもう一つ下の段階といったところである。
 治安維持会が入っている古びた建物は、民家としては少し大きめな程度だから、これを見ただけでも権威がありそうには見えなかった。

■行儀の悪い新来日本人
 日本軍の占領とともに、私たちのように事変前から住んでいた者が帰ってきただけでなく、新来の人々によって日本人人口は増加していった。日本政府が占領地に作った国策会社や新たに進出してきた日本資本の会社社員、それに占領地ではどこでも見られる「一旗組」もやってきたようだった。

 「一旗組」というのは、「ひとはた揚げる」からきている言葉であろうが、「新しく事業をおこす」「意欲をもって新しい運命を切り開く」という本来の意味ではなく、悪い印象に使われていた。占領下、軍の権威を利用して、あるいは軍に取り入って、経済的、社会的混乱に乗じ、一稼ぎ、荒稼ぎしようとする人たちのことを指し、遠く明治以来、日本の大陸進出とともにしばしば使われていた言葉のようで、小さい頃からよく聞いたものだ。

 この時から4年後、日本軍が南方緒地域を占領した際、日本政府は「シナにおける経験上」南方への日本人の新規渡航を厳しく制限した。ということは、中国には多くの一旗組や大陸ゴロといった部類の日本人が流れこんだことを証明していることになる。
(中略)

■町の品格は落ちて「日本並」に
 道路を歩いていて特に気がついたのは、その種の店の看板だけでなく、一般に広告や看板が多くなってきたことである。事変前の青島特別市長の沈鴻烈は「公園と道路の市長」といわれていたそうだから、ドイツ時代の伝統を継いで、町の美観には相当気をつかい、街頭の広告などは厳しく規制していたらしいが、今や、町並みは雑然とした雰囲気に変わってきたのである。

 従来は見かけたことのない電柱広告が現れたと思うと、それは急速に広がっていって、この傾向に拍車がかかったように思われる。電柱広告が日本軍占領後に生れたものだと、ほぼ確信をもって言えるのは、その2年前に日本に初めて旅行したとき、電柱広告を見て、こんなものがあるのかと、へんに感心した記憶があるからだ。

 日本軍の占領下で、町の品格は確実に「日本並」に落ちていった。何も道路上の看板だけでなく、日本人は空地をどんどんつぶしていったのである。以前から、商店街の建造物は密着して建てられていたが、住宅地では、今いうところの建蔽率は、おそらく20%程度、多くとも30%以下だったに違いない。せせこましい所に住みなれた日本人の行政官にしてみれば、そんな状態はもったいないと思ったのであろう。

 新しく市街を造るのとちがい、従来の市街地の空地に建物を造るのなら、道路や上下水道などの資本投下も不要で簡単にできる。そこで空地はもとより、家の庭をつぶしてそこに家を建てるようになったわけだ。


1937年、日本軍の動向をネットで見てみましょう。
(なお、このサイトは中国政府のヒモがついているので、割引いて読む必要があります)

海軍の青島への単独突入
青島突入

日本軍は、上海、南京の戦局が一段落すると、今度は青島への攻撃を計画。しかし、青島地上戦の責任者である陸軍司令部が「陸海軍提携方針の下、華北地方所属部隊の青島西方への攻撃を待って、海軍とともにこれを占領すべし」との考えを固持したため、先延ばしされていた。日本海軍司令部と現地第四艦隊は、情勢から判断すれば、現在青島における中国兵力は少なく、海軍は単独でこれを処理できるため、これ以上作戦開始を遅らせるべきではないと考えていた。そして、陸海軍の意見は平行線のまま、日本第四艦隊豊田副武司令官により、海軍単独での青島突入が提議される。

12月23日、日本陸軍が黄河を渡り、青島への攻撃態勢を整える中、海軍は歩みを速め、海上勢力の優勢を利用し素早く青島入りし、先に占拠を遂げた。陸海軍は、青島侵略の過程で互いに先を争う結果となった。

1938年1月7日、日本大本営海軍部は、「中国方面艦隊」長官に対し、「現任務を遂行するため、時期を見て青島を占拠すべし」という大海令を発した。これにより、日本第四艦隊は攻撃日を1月10日に決めた。


『「在中二世」が見た日中戦争』1





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Last updated  2018.01.23 00:12:43
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