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2018.02.18
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『そらをみてますないてます』という本を、手にしたのです。
「BOOK」データベースが冒険純文学と評しているが・・・かなり冗談っぽいのが、いかにもシーナではないか♪


【そらをみてますないてます】
椎名

椎名誠著、文藝春秋、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
1964年、東京。深夜の皿洗いのバイトをするおれは、官能の塊のような女イスズミをめぐってすさまじい喧嘩に巻き込まれる。職を転々とし、次に出会ったのは、後に妻となる女性だった―ぎらぎらとあぶなっかしい若き日々が二十年後の冒険と交錯する、渾身の青春冒険純文学。

<読む前の大使寸評>
「BOOK」データベースが冒険純文学と評しているが・・・かなり冗談っぽいのが、いかにもシーナではないか♪

amazon そらをみてますないてます


第1章が「砂漠と運河」となっていて、大使のツボがうずくのです。
語り口の一部をチョットだけ、見てみましょう。
p10~14
<1988年>
 おれは歩いていて、やはり目の前に夜明けのきざしがあった。おれは砂だらけになっていて、ぎっしり砂の入り込んだ赤い革のレッド・ウィングの編み上げ靴を履いていた。砂が靴のなかで足を噛み、痛くてたまらなかったが、止まって砂のなかに座り、靴を脱ぎ、靴下まで脱いで砂をはたいても結局はまたすぐに同じ状態になってしまうのだ。だからそんなことは時間の無駄だった。むしろそんなことで時間をつぶしてこれ以上遅れたら本当に危ない。だから歩き続けるしかなかった。

 中国隊はおれたちより2キロほど先に行っているようだ。やつらは汚かった。とくに未開放エリアに入ってからはエゴを丸出しにしてきた。水はあきらかにやつらがおれたちの倍持っていた。つまり一人あたり4リットルだ。4リットルあったらそうとう喉が潤う。おれたちとは体力を維持する基礎のところが違ってくる。だからこの差別は深刻だし重大な契約違反だった。けれどそんなことを言っていたらあいつらのやっていることはこの砂漠に入ってから全部が契約違反だった。

 それに味方だったウイグル人のルートガイドが方向を間違えてしまったのも痛かった。おれたちは予定よりもかなり遠のいた楕円形を描く湾曲ルートを歩いていた。それは後で知ったことで、生き残ったから言えることだった。

 おれたち3人はとにかく全身くたくたで、1日2リットル与えられた水はもうあらかた飲んでしまっていて、残りはあともう指2本ぶんぐらいだった。それを飲みつくし、水のデポのある今日の目的の場所に着かないうちに太陽が頂点まで上がってきてしまうと、たぶんおれたちはその日の夜までに倒れてしまうだろう。そういう辛い予感が頭のなかでごろごろしていた。単なる悪夢ではなくて悪夢のような現実のなかだった。

 おれたちは中国の組織した「タクラマカン英雄遠征隊」のなかにまじりこんでいた。16ミリのシネカメラでスウェン・ヘディンの探検した「さまよえる湖=ロプ・ノール」とその湖畔近くにあった幻の城といわれる「楼蘭」を撮影するという目的があった。おれは40歳になったばかりでまだ体力には自信があった。

 この探検行によってロプ・ノールと楼蘭をこの目で見て、フィルムに収められればそれでおれのちょっとした人生の目的としていた旅は完成する筈だった。

 おれは歩いていた。ヤルダンが1日中続いていた。ヤルダンというのは風が作ったでっかい連続する固い土の壁だ。タクラマカン砂漠のそのあたり、風は常に北東方向から吹いていた。それはこの砂漠が生れたときからずっとかわらず同じ方向から吹いているのだという。だから三千年か四千年、北東方向から吹いているのだ。なんという融通のきかないバカみたいな風なのだ。

 なんで飽きずに同じ方向に吹く必用があるんだ。吹く意味があるんだ。おれよりへたばっている音彦がきしきしいうアブラの切れたような声でさっきからそう言って怒っている。本当は乙彦と書いたが、おれと壱は「音彦」の意味でそう呼んだ。やつはナグラを操作する音の専門家だ。

 「三千年や四千年そこいらじゃあないだろうよ。中国文明が生まれるまえにここにはこういう風が吹いていたのだ。人間がこのくそろくでもない砂漠に入り込みはじめた頃から吹いていたんだ。1万年とか3万年とかそんな単位で吹いているくそいまいましい強情な風なんだ」

 壱が言った。壱は16ミリカメラの撮影者で中国隊と最初から交渉していたおれたちのリーダーだった。おれたちは「タクラマカン英雄遠征隊」の正式なメンバーではない。壱の勤めている会社、日本の映像プロダクションが中国のコネを使って、中国隊の趙文奄隊長と直接交渉した。決め手は金だった。いったい幾ら払っているのかおれはいまだに知らなかったが、おそらく状況からいってとんでもない金を突っ込んだ筈だ。そうでなければ下手をこくと趙の人生を筒禅遮断する(逮捕、重罪)という事態もありうるこんな危険な賭を趙がのむはずがない。

 ヤルダンがまだまだ続いていた。北東から吹き続ける風によって砂漠の軽い砂は殆ど吹き流されてしまった。残ったのは風に飛ばない固い地殻だけだ。それが畑のでっかい畝々のようになって延々と続く。まるであくどい冗談のようにだ。
(中略)

 壱はところどころでカメラを回した。おれが背負っている三脚を使うときもあったし、ヤルダンの固い地殻の上にカメラを置いてそれで済ませることもあった。壱はどちらかというと手持ちカメラのドキュメンタリーアングルが好きだった。

 そのあたりまでは壱がミニエクレールの12倍望遠レンズをいっぱいまで使うと先を行く中国隊の五星紅旗がまだ見えている。
「あいつらは馬鹿だ。こんなくそ砂漠を行くのに、中国国民が誰一人見ているわけでもないのに、まだ国旗を先頭につきたてて歩いている。それだけ体力を消耗するというのに、まだ掲げ持って歩いている。だからあいつらは趙隊長もその子分たちもみんな馬鹿なんだ」
 音彦が大きな声でいう。音彦はナグラを回しても結局風の音しか収録できないのでかなり苛ついていた。

「でもおかげでやつらの位置がわかる」
 おれが言った。


日中合同の探検隊の体力勝負、そして馬鹿さについては『砂の海』により鮮やかに描かれています♪


【砂の海】
砂

椎名誠著、新潮社、2000年刊

<「BOOK」データベース>より
目的地は、探検家ヘディンが「さまよえる湖」と名づけたロプノールと2000年前の幻の王国・楼蘭。太陽のコノヤロ光線、岩山も刻む砂嵐の中、“あやしい探検隊”隊長は、“正しい探検隊”である日中共同探検隊と、ずんがずんがと砂漠を突き進む。金属味の缶詰料理に辟易し、激しく車に揺られながら、著者が最終地点で目撃したものは?ハードな旅をユーモアで描く、シルクロード紀行。

<読む前の大使寸評>
ちょっと古い本ではあるが、砂漠、西域は大使のツボでもあるし、シーナの紀行とあれば期待できそうやでぇ♪
借りたのは、1998年刊のハードカバーです。

amazon 砂の海
『砂の海』6 byドングリ





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Last updated  2018.02.18 06:42:09
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