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2018.04.10
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カテゴリ: 歴史
図書館で『熱河日記-1』という東洋文庫シリーズの1冊を、手にしたのです。
おお 先日、ブログで取り上げた本ではないか。
「東洋文庫ガイドブック1」で野崎充彦という人が、今村与志雄訳の『熱河日記』を激賞していたので、気になっていたのです。







朴趾源(著), 今村与志雄(翻訳)、平凡社、1978年刊

<「BOOK」データベース>より
データなし

<読む前の大使寸評>
「東洋文庫ガイドブック1」で野崎充彦という人が、今村与志雄訳の『熱河日記』を激賞していたので、気になっていたのです。

amazon 熱河日記-1


旅の第一歩「渡江録」を、見てみましょう。
p6~8
■辛未 九連城にて
 辛未(1780年7月25日)朝、小雨。終日、降ったり止んだりした。正午すぎ、鴨緑江を渡り、30里(日本の3里)進んで九連城で野宿。夜、大雨、すぐやむ。

 当初、竜湾に10日間、逗留し、進貢の品物がのこらず到着して、出立の期日もたいへん切迫した。ところが、雨がなかなかやまず、河が増水した。その間、雨があがってから、4日もたったにもかかわらず、水勢はますますはげしく、木や石が押し流され、濁流は天をつくばかりにさかまいた。というのは、鴨緑江は、水源が最も遠いからである。『唐書』によると、高麗の馬誓水は、マッカツの白山に発し、鴨頭のような色をしているから、鴨緑江と呼ぶ。いわゆる白山とは、すなわち、長白山である。朝鮮では、白頭山といっている。白頭山は、いろいろな河川の源になっている。西南に流れ出たのが鴨緑江である。(中略)

 その発源の地の渇水も増水も、はるか遠方からは見当がつかない。現在の水勢から判断すると、白山で長期間雨が降っていたらしい。まして、ここは、ありきたりの渡し場とはちがうではないか。増水期にあたる現在、徒歩わたりする洲も、停泊の場所も、みな本来の位置がわからなくなって、河の中央の浅瀬も、見分けにくくなった。船頭が少しでも舵をとりそこなうと、人力では船をもどすことはできない。随行の通訳たちはつぎつぎに前例をあげて、出立期日の順延を懇請した。

 竜湾(義州館)の長官も従卒をよこして、数日間のばすよう、ひきとめた。だが、正使は意志をまげずにこの日を渡江の期日とした。書簡に日時を記入していたのである。

 朝、起床して窓をあけると、黒雲が一面にひろがり、山々には雨のけはいが著しかった。洗面と髪の手入れをすましてから、荷物をととのえ、家族あての書簡や諸方への挨拶状に封をして、戸外へ出て飛脚に渡した。それから、朝食前の粥をすこし食べ、義州館へ出かけた。

 兵卒たちはすでに軍服や陣笠を着用していた。そのいでたちは、陣笠に銀細工の雲月をつけ、孔雀の羽をかけ、腰には藍色の角の紗ユウの帯をしめ、環刀をさげて、短い鞭を手に握り、たがいに顔を見合わせてにっこり笑った。「この格好はどうだい?」盧参奉が帖裏を見たときは、一段と勇壮になっていた(領土内では帖裏を着用し、渡江すると、狭袖に着換える)。

 鄭進士は、笑顔で出迎え、「今日はほんとうに渡江できますな」と言った。盧はそばから口をはさんだ。「いまこそ渡江しますね」 私はどちらにも「うん、うん」と返事しておいた。なぜならば、10日間も逗留していて、誰もが崩壊感覚におそわれて、みんな勇躍、出発する気持ちを秘めていた。そのうえ、長雨のため河川が増水したから、ますます憂鬱になり、あせっていた。

 いよいよ、その期日が到来して、いまさら渡江はやめたくても、不可能なのである。はるか前途を見渡すと、蒸し暑さはうだるようだ。故郷を回想すると、雲も山もはるか遠く漠然としている。その場になると、どうしてもわびしく消極的いなるのは人情だ。いわゆる平常の旅行の場合、諺に、ぜひ一目見物しておかねば云々というのは、実は、第二義なのである。彼が「今日は渡江云々」と言ったのは、愉快な、満足した言葉ではなくて。どうしようもない意思の表明であった。

 訳官の金震夏は老齢で病身のため、一行から脱落して去った。くりかえし、くりかえし暇乞いの挨拶をしていた。思わず、わびしくなった。朝食後、私はひとりウマに乗って先発した。ウマは、たてがみの黒い黒馬で、額が白く、足は贅肉がなく、蹄は高く、頭は尖っていて腰は短く。双の耳がピンと立って、まことに万里をゆく想いを抱かせた。


熱河日記書評 byドングリ





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Last updated  2018.04.10 08:18:19
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