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2018.07.31
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カテゴリ: アート
図書館で『国境を越えて愛されたうた』という本を、手にしたのです。
テネシー・ワルツ、花はどこへ行った、エル・チョクロ、マシュ・ケ・ナーダ、黒い瞳等々・・・好きな歌のオンパレードではないか♪





竹村淳著、小学館、2005年刊

<「BOOK」データベース>より
ラテン音楽の名曲の数々、日本、インドネシア、ヨーロッパ、イギリス、アメリカの不朽の名歌の誕生からヒットまでの知られざる歴史とエピソードを綴る!!それぞれの歌のお勧めCDと、YouTubeで観ることができるお勧め動画の案内も掲載!!
【目次】
上を向いて歩こう(SUKIYAKI)-日本/エル・マニセロ(El manicero)~南京豆売り(THE peanut vendor)-キューバ/アンダルシーア(Andalucia)~そよ風と私(The Breeze and I)-キューバ/エル・チョクロ(El Choclo)~火の接吻(Kiss of Fire)-アルゼンチン+アメリカ/エル・アレグリート(El arreglito)~アバネーラ(Habaner a)スペイン+フランス/誰も知らない私の悩み(Que nadie sepa mi sufrir)~群衆(La foule)-アルゼンチン+フランス/さらば草原よ(Adi´os Pampa mia)/青い背広で~Mi Geisha esta triste~女の嘆きーアルゼンチン/日本/ソンブラス“ただ影だけ”(Sombras nada mas)-アルゼンチン+メキシコ/ブンガワン・ソロ(Bengawan Solo)-インドネシア/ドナドナ(Dona Dona)~ダナダナ(Dana Dana)ベラルーシ+アメリカ〔ほか〕

<読む前の大使寸評>
テネシー・ワルツ、花はどこへ行った、エル・チョクロ、マシュ・ケ・ナーダ、黒い瞳等々・・・好きな歌のオンパレードではないか♪

rakuten 国境を越えて愛されたうた



テネシー・ワルツを、見てみましょう。
p110~115
<テネシー・ワルツ>
 新制中学に入った1949年春から、近所に住む米軍通訳に英語を習うようになり、少しでも英語に慣れようとFEN、米軍の極東放送を聞くようになった。“This is Far East Network”というコールサインがカッコよく、口真似したりしていた。

 1951年だったが、パティ・ペイジが唄う「テネシー・ワルツ」を初めて聴いたのもFENだった。この歌はぼくがほれ込んだアメリカン・ポップスの第1号となった。

♪I was dancin' with my darlin'
To the Tennessee waltz
When an old friend I happened to see
Introduced her to my loved one
And while they were dancin'
My friend stole my sweetheart from me

 ダーリンとテネシー・ワルツで踊っていた/そのときたまたま旧友に会った/私の愛する人を彼女に紹介した/すると二人で踊っている間に/友人は私の恋人をとっちゃったの…。

 格別むずかしい単語もなく、中学生の英語力でも理解できる歌だった。それもあったろうが、いま思うにおきゃんなアメリカ娘らしくない、パティ・ペイジが漂わせるフェミニンな雰囲気と“恋人を奪われた娘心”という曲想を表現するためだろうか、控えめで、どこか頼りなげな感じをにじませる歌唱がよくて、それに惹かれていたようにも思える。

 この歌はカントリー・ミュージック畑のアコーディオン奏者でバンド・リーダーのピー・ウィー・キングが1946年に作曲、歌手のレッド・スチュワートが作詞したワルツ調の失恋バラードで、1948年に彼らが始めて録音した。当時は彼らのオリジナル盤があることなど知る由もなく、聴いたことはなかった。

 いまはYouTubeで簡単に映像で見聞きできるが、カントリー色が強い。それだけに本国ならともかく日本で発売しても、ペイジ盤のようには受けなかったろう。ずっと後になって、米国では大評判だったカントリーの人気歌手ハンク・ウイリアムスやエルヴィス・プレスリーを初め、この歌の様ざまなカバーを聴いてみたが、ぼくにはパティ・ペイジ盤が極めつけだった。

 ところが、パティ・ペイジの1年ほど後に聴いた江利チエミの「テネシー・ワルツ」に、ぼくは夢中になった。彼女のデビュー盤が欲しくてたまらなかったが、ぼくの小遣いでは高くて買えなかった。それでもその前年、1951年に放送を開始した民間放送のラジオから彼女の歌声はいつも流れていたので、聴くのに不自由はなかった。
(中略)

 チエミの「テネシー・ワルツ」は40万枚を超える大ヒットとなり、彼女は“美空ひばり以来の天才少女”と絶賛され、その年に初の主演映画『猛獣使いの少女』に出演する。翌1953年春には、米キャピトル・レコードに招待されて渡米し、「ゴメンナサイ」と「プリティ・アンド・ベイビー」の2曲を録音し、日本人として初めてヒット・チャートにランクされた。
 LAでステージに立って喝采を浴びたり、帰途ハワイでも公演を成功させ、さらに同地で合流したボーカル・グループ、デルタ・リズム・ボーイズと連れ立って帰国し、各地でジョイント・コンサートを開催して称賛され、ジャズ・ボーカリストNo.1の地位を確立した。
(中略)

 進駐軍とともにどっと入ってきたアメリカン・ポップスやジャズを唄うとき、英語で唄うのが当たり前だったが、チエミがとった英語日本語併用スタイルは当時としては画期的なことだった。これにより外来ポップスのカバー盤の人気は都市部に限られていたのが、地方都市にまで広がることになり、彼女に続いたペギー葉山や小坂一也らはその恩恵をこうむることになる。

 15歳の天才少女の健闘で、「テネシー・ワルツ」はあざやかに海を越えただけではない。時空をも超越し、多くの日本人の心に定着し、いまも唄い継がれ、聴き継がれている。

 一例を挙げると、2003年のNHK紅白歌合戦でユニークなジャズ・シンガー、綾戸智恵が唄ったことは記憶に新しいところだろう。同じ現象はこの歌の生まれ故郷である米国でも起こっている。たとえばノラ・ジョーンズのような若い世代の歌手がこぞってカバーい、まさに永遠のスタンダード・ナンバーとなっている。

 ところでパティ・ペイジと江利チエミの2人には共通項が多い。ペイジは大家族の家庭に生れたが、父親は線路工夫、母親と姉妹は綿花摘みをしてなんとか生計を立てていたとかで、貧しくて家には電気もなく、日が暮れると本も読めなかったという。チエミのデビュー前後の苦労話はすでに書いた。ともに生活苦と闘うなかで「テネシー・ワルツ」と出会い、この歌をカバーし歌手としてのステイタスを築き上げた。
(中略)

 ほかにも両者の共通点は多いが、決定的に違ったことがある。
 1927年生れのペイジは80歳前後まで現役で歌い続けて、充実した幸せな一生を過ごし、2013年1月1日に85歳で天に召された。
 ペイジのちょうど10年後の1937年に生れたチエミは、散々なまでに辛酸をなめた末、「もういいよ。お疲れさん」と神が差し伸べてくれた手に導かれ、1982年2月13日に45歳の若さでこの世を去った。


『国境を越えて愛されたうた』1 :「花はどこへ行った」





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Last updated  2018.07.31 00:07:58
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