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2018.12.15
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カテゴリ: 自然・環境
図書館に予約していた『極楽ですか』という本を、待つこと1週間でゲットしたのです。
この本は著者から、政治家、思想家、作家等に出された手紙という構成となっています。あまり見かけない構成であるが、なるほどこういう手もあったのか♪





谷川雁著 、集英社、1992年刊

<「BOOK」データベース>より
〈現代〉は、地獄か、極楽か?歴史の激動を見つめながら、〈他者〉を求めて明滅する詩人の言葉。同時代を生きる〈あなた〉への手紙。

<読む前の大使寸評>
この本は著者から、政治家、思想家、作家、学者等に出された手紙という構成となっています。あまり見かけない構成であるが、なるほどこういう手もあったのか♪

<図書館予約:(12/01予約、12/09受取)>

rakuten 極楽ですか


高橋裕宛の手紙を、見てみましょう。
(高橋裕:芝浦工大教授、「河川工学」の専門家)
p192~200
<思想としての雲仙火砕流>
 高橋裕様
 雲仙火山群普賢岳の地獄変にはボディ・ブロウがじわじわきいてくる心理的打撃を味わっています。いまさらのように災害が出郷者の襟髪をつかんで離さない力であることを感じます。あの海坊主みたいな連峰について身を入れて考えた記憶はありません。風景にすぎなかったのです。
(中略)

 百五十年、二百年の間隔で溶岩があふれ大地震がくる。その合間を縫ってしばしの桃源郷が出現する。これは雲仙の本質であるとともに、横軸から切りとられた日本そのものの相ではないか。列島社会の躁鬱質を身をもって体現する場であるゆえに、雲仙からは物語が消えるのではないか。

 そもそもこの国における<連続>とはなにを意味するのか。しょせん大噴火または大地震のはざまの一紀元がそのたびに同じバイオリズムをくりかえすという事実に帰着するのではなかろうか。自然災害によって歴史を区分する史観があっていい。それは歴史のとぼしい雲仙が火砕流の形で届けてくれた思想の贈り物といわねばなりません。

 だとすれば明治・大正とは安政地震と関東大震災の間にはさまった大一期<東京文化>のことであると規定できます。そして現在は1922年にはじまりつぎの巨大災害までの時間を漂流している第二期のそれです。

 カルル・フォン・リンネの眼をもってすれば京都だっていくつもの亜種、変種に分類できるはずですが、日本人がそれをやらないのは天皇制の利害に関わっておりましょう。いずれにせよ宝永山の爆裂なみの富士噴火が起きたら、東海道と中山道を経由した東西の交通は相当の期間断絶すると見なければなりますまい。
(中略)
 災害といえばさしあたっての衣食住を心配する。それはいいが、真の民衆苦はそれにつづく段階におとずれる。すくなくとも富士噴火を列島文明の再編成に結びつけるシミュレーションは皆無であるようにおもえます。

 この憂いがまとはずれでないことは雲仙水無川流域という局所についても日日あきらかになっている気がします。火山学者は状況の監視にいそがしく、地震学者は周縁にいて、治水工学者は蚊帳の外。政治も行政も口をつぐんでいますが、住民はただ一つの焼けつくような疑問に日夜苦しめられているにちがいありません。すなわちこの土地は果して復旧可能でしょうか。復旧できるとしても、したのがよいのでしょうか。避難民はいずれは帰れるのかどうか。その見通しがさっぱり語られません。

 いったいこのような告知について責任を持つ体制は存在するのでしょうか。伊豆大島の場合は町長の判断で住民を島に帰しましたね。すると市町村の長が託宣の神になるのですか。だれがいつどのような方法でいかなる種類の<安全>の判定をするのか。立入禁止の経過を眺めても、私などにはむしろ<安全宣言>こそが危険きわまりないと感じられるのです。

 ここで50年代後半からはじまった炭鉱の潰滅をおもいだします。いくたの調査団が組まれたけれども、なにがしかの大局観があれば容易に到達できたはずの結論を避け、国内石炭産業の全面的な消滅は必至だとする前提に立った報告は一つもありませんでした。つねに目前の利害に妥協する弥縫策に終始し、ために労働者とその家族数十万人は動揺し混乱し反目し、多くの犠牲者をうみだしました。

 雲仙にも同じことが起きるのではないか。
(中略)
 自然災害にゆたかな経験をお持ちのあなたにおたずねします。復旧すべきない災害もありうるのではないでしょうか。住民へのゆきとどいた十分な補償とひきかえに、水無川流域を手つかずにのこし、きたるべき噴火災害にそなえる各分野共同の<研究公園>にする。そうすることが地霊にしたがう道であるならば、告知は早いほうがいい。


ウン 東北津波後の国・行政の災害復旧策が短慮にすぎた例が多々みられるが、要するにお役人の時間感覚が庶民より長すぎて(悠長で)・・・
高台移転など完成しても、助ける対象者がいなかったりして。

『極楽ですか』3 :菅木志雄
『極楽ですか』2 :藤間生大
『極楽ですか』1 :井上光晴





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Last updated  2018.12.15 09:11:11
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