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2019.11.07
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『老人のライセンス』という新書を、手にしたのです。
かつて赤瀬川原平が老人力を提唱した頃は微笑ましい感じだったが・・・今「老人のライセンス」と聞くと、なにやら恐れ入るのである。






村松友視著、河出書房新社、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
老成を極めた人間力にせまる66篇。
【目次】
第1章 老人って何?(老人って何?/「若返り」対「老成」の構図 ほか)/第2章 老猿に道をゆずるの巻(老猿に道をゆずるの巻/蓮っ葉な女の読書に翻弄される ほか)/第3章 理想ではないが、妻である(文鎮の安心と重みよ、今いずこ/右と左に泣き別れる老人の心もよう ほか)/第4章 何しろ、人間の舌は器用なもんでしてね(何しろ、人間の舌は器用なもんでしてね/鮨ネタの栄枯盛衰 ほか)/第5章 今日は、絶好の雨日和(黒鉄ヒロシという謎の生命体/病んだヨーロッパ人、伊丹十三 ほか)/第6章 涙をさそう唐辛子の焼香(極め付きの無表情/上り坂と下り坂はどっちが多い? ほか)

<読む前の大使寸評>
かつて赤瀬川原平が老人力を提唱した頃は微笑ましい感じだったが・・・今「老人のライセンス」と聞くと、なにやら恐れ入るのである。

rakuten 老人のライセンス


「老人のライセンス」があることが「あとがき」で例証されているので、見てみましょう。
p217~219
<あとがき>
 「老人のライセンス? そんなもんあるんですか」という当然の反応に対して、「実はあるんですよ」と、1冊をあげて例証しようというのが本書の目論見だ。言わずもがなのことだが、当今世上に取りあげられている高齢運転者の免許問題とはまったく無縁であるところの、心のライセンスのことである。

 そして、そのライセンスがいまだ掌中にあらずという自己認定のもとに、これまで体験した端倪すべからざるライセンス取得者たちの、愛すべき人間の味の幅広さを、読者諸兄妹に供しようというかまえが、とうに後期高齢者の年齢をすぎた未熟者老齢者たる著者の、特徴的物腰ということになり、これが本書の老人問題へのスタンスともなっている。

 さて、そんな著者たる私に個性らしきものがあるとするならば、それは宿病とも言うべき他者への観察癖だろう。そして、私の観察癖は、やましさやうしろめたさをかこつ者の症状ではなかろうかという気がする。といっても、そのやましさやうしろめたさが、それほど深い意味合いをふくんだものでないのはもちろんのことで、たとえば宿題を忘れがちな小学生であった私に、その日の先生の機嫌、気分、あるいは心もようなどをあれこれ想像しながら、先生の一挙手一投足を探る癖が宿ったことを原点とするといったレベルの観察癖だ。

 宿題を忘れぬ生徒は、先生の機嫌などうかがうこともなく堂々としているが、宿題を忘れた生徒である私は先生が宿題を出したことを失念していることをねがいつつ、指名するとしたら左右どちらの席から? 真ん中から? うしろから? あるいは気紛れ?と、刻一刻の先生の顔色の変化をうかがいつづけるわけで、そのレベルの怯えを原点とするのだから、たかが知れた観察癖である。宿題を忘れても堂々としている生徒だって何人もいたし、彼らの洋々たる未来図と私の揺々たる未来図は、そのあたりですでに分別されていたのかもしれない。

 その、やましさやうしろめたさの発する貧乏性的観察癖が宿病となり、大人になっても治癒せぬまま個性となって、いまだに体内で蠕動することをやめぬのだから始末がわるい。

 ただ、この観察癖の効用というものによって、本書を書き綴ることができたのはあきらかだ。人間という存在の摩訶不思議から醸し出される面白味、妙味、滋味そして珍味などを、私なりに汲み取るについては、この私流のせこい観察癖が手がかりとなっているはずなのだ。
 この期に及んでこんな居直り的呟きをもてあそんでいるのだから、老人のライセンセンスは私にとって、当分のあいだ手のとどかぬ陽炎(かげろう)というけはいであります。

                  2018年6月1日   村松友視

ウーム 「老人のライセンス」とは村松さんの心のライセンスであり、それも当分のあいだ手に届かないだって・・・オイオイ。


『老人のライセンス』1 :神戸の「壷やき」
『老人のライセンス』1 :設問「老人とは何ぞや?」





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Last updated  2019.11.07 06:51:07
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