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2020.02.07
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カテゴリ: メディア
立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんがインタビューで「強兵を代替させ、スネかじり富国、地の利は冷戦まで」と説いているので、紹介します。


(2/04デジタル朝日から転記しました・・・そのうち朝日からお咎めがあるかも)


日米安全保障条約が改定され60年、人間でいえば還暦を迎えた。最初の30年が冷戦下。次の30年は旧ソ連という対抗軸がなくなった一方、経済力軍事力を強化した中国が台頭してきた。さて、これからの30年の見取り図はどうなるか。60年の評価と、押さえておくべき論点は何か。経済と歴史に造詣の深い出口治明さんに話を聞いた。

Q:日米安全保障条約が改定されて60年。これからの見取り図はどうなるか。出口さんのお話をうかがいたくなりました。
A:三つぐらい前提となる話をさせて下さい。 日本は何で江戸時代に約200年間も鎖国ができたのか。それは、日本に世界が必要とした商品がなかったからです。安土桃山から江戸初期にかけて、日本は世界に大量の銀を供給しました。世界の3分の1が日本産銀といわれた時期がありました。しかし、ほぼ掘り尽くしたので、世界の人が極東の日本にわざわざやって来てまで欲しいものがなくなった。

 では明治維新の契機となった黒船来航で、ペリーは何で日本に来たのか。当時の米国は中国市場をめぐって英国と競い始めていました。しかし、 英国が経済覇権を持つインド洋回りでは米国は勝てない。交易に商品代+ニューヨーク―ロンドン間の運賃が上乗せされるからです。となると太平洋航路を開き、中国市場に直接結びつくしかない。日本列島の存在が米中貿易を考える上で新たな価値を持ってきました。

Q:米国にとって日本は中国への玄関口、ゲートウェーだった。
A:明治維新の約15年前です。その時、幸運なことに阿部正弘という老中首座、つまり首相がいました。彼はアヘン戦争などを研究し、軍事力や経済力での彼我の違いを認識していた。その結果、開国して、交易して、国民国家を作って、富国強兵を断行しなければならないというグランドデザインを描いた。

 薩摩・長州などは尊皇攘夷で対抗したわけですが、薩英戦争や下関戦争で負けて攘夷はアカンと薩長が身をもって知った。 だから倒幕後は大久保利通が開国・富国・強兵という阿部のグランドデザインを採用して、日本の近代化を大いに推し進めたのです。

Q:植民地化されたアジアの国々やインドなどと比べれば、有利な立場に立てたわけですね。
A:ところが日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦とあまりに順調にいき、傲慢になって、開国を捨ててしまう。ロンドン軍縮条約や国際連盟から脱退したことに象徴されますが、富国強兵で何とかできると過信して、突っ走った結果が、先の大戦の大敗北でした。

Q:本来なら、国が滅びても仕方がないほどの過ちでした。
A: 戦後、吉田茂がもう一度『開国』『富国』『強兵』という3枚のカードを机の上に置いて考え抜きました。『強兵』の部分を安保条約で米国に代替させて、『開国・富国』で再建を果たそうと決断しました。 吉田がこうした大きい見取り図を描いて実行したことが今日の繁栄までつながっている、というのが第1の論点です。
    ■    ■

 戦後、連合国が東西2陣営に分裂し、冷戦が始まったことも日本に幸いでした。日本周囲の地図を上下逆さまにして見て下さい。旧ソ連や中国が太平洋に出ようとしたら、日本列島はめちゃ邪魔をしているわけです。

Q:米国から見れば防波堤、かつて不沈空母と言ったのは最近亡くなった中曽根康弘元首相です。
A:冷戦の時は、ペリーの交易ルートとは逆に、米国の仮想敵、ソ連を封じ込めるために日本列島が地政学上、絶妙の位置にあった。だから、冷戦期の間は米国は日本を本当に大事にしてくれました。

Q:今は中国が日本の最大の貿易相手国ですが、長く最大だった国は米国でした。
A: 戦後の日本は、米国というお父さんのスネをかじり尽くした息子で、鉄鋼、自動車、半導体と米国の主要産業を全部潰して成長してきたようなものです。普通の国だったらボコボコにされるところが、ボコぐらいで米国は済ませてくれました。 しかし、冷戦終結で米国が中国、ロシアと直接交渉するようになると、日本の地政学的な地位は低下します。これが第2の論点です。

    ■    ■
 第3の論点はこれからどうするか。安全保障を考える時に、自分で防衛力を強化するか、どこかと軍事同盟を結ぶか、基本はこの二つしかありません。例えば米海軍の最新鋭空母1隻で約1兆4千億円もかかる。これは海上自衛隊全体の予算に匹敵します。今の日本の財政状況で、自国だけで守れる軍備などつくれるはずがない、と普通は思います。国の借金が国内総生産(GDP)の2倍以上と敗戦時よりも大きくなっている状況で、これは無理です。

 では、同盟を結ぼうとすれば、素直に考えて日本を守ってくれる国は日本より経済力が大きい国でないと無理です。そうすると米国、中国、EUしかありません。EUは遠すぎますし、従って米中2ヶ国しかない。

Q:中国の台頭は唐王朝とか清王朝とかの成立に匹敵する何世紀ぶりの革命的な画期に思えます。将来の大帝国と、敵対的になるより、同盟も視野に置くことも中長期戦略としてあり得ませんか。
A: 中国という選択肢はあり得て、GDPの2、3位連合ですから、米国が一番嫌がる。しかし、国民感情や今までの経緯を考えて米国の嫌う同盟を百年の計をかけて実現できるかを考えれば、大きな疑問符がつく。消去法で日米同盟を大事にしていくしかない。

 加えて米国は中国になかなか負けない気がします。西洋の歴史を見ると、覇権国の交代は人口減少が引き金になっています。近世以降の覇権国はスペイン、オランダ、英国、そして米国の順ですが、前の3カ国はいずれも人口が減って衰退していきました。

 しかし、米国は人口が増え続けている例外的な覇権国です。企業としての評価額が10億ドル以上で非上場のベンチャー企業のことをユニコーンといいますが、米国には200社ぐらいある。中国はまだ100社ほど。米国のユニコーンは留学生が絡んでいて、世界から人材を呼び寄せる希望の国である限り、簡単には衰退しないでしょう。

 しかし中国を甘く見てはならないのは、その通りです。教育にひたすら力を入れ続けているのでPISA(国際学習到達度調査)の試験結果は、ぶっちぎって優秀。ハイテクやAI分野は米国と互角の戦いをしています。ファーウェイが米国に制裁を受けても、15億人いるから、データはいくらでもとれる。ハイテク分野の覇権争いの行方は予断を許しません。

Q:やはり、日米同盟に逃げ込んで、中国とは潜在的な敵対関係というのは危険と思います。
A:参考になるのはドイツの宰相ビスマルクの手練手管です。イデオロギーではなく国益を中心に考えて、ロシアと敵対するオーストリア、イタリアと三国同盟を結ぶ一方、秘密裏に再保障条約をロシアと結んで関係を深めます。

 独の基本戦略は、フランスとロシアに挟撃される二正面作戦を避けること。しかし、彼の退陣から四半世紀後の第1次大戦では仏ロを敵に回した。敵を最少化したビスマルクの手練手管が放棄された結果です。日本に必要なのはビスマルク的発想です。

Q:どういうことでしょうか。
A:冷戦が終わったので、米国は日米同盟を死活的に重要とは考えていません。ですから、日本は人間関係、経済関係、外交的支援などあらゆる手立てを講じて同盟維持のための努力を継続しなければなりません。その一方で、できる限り中国とは仲良くしていく。経済のパイプも切れないように太くしていく努力を惜しまない。

 であれば、同盟ではないですが、切っても切れない仲、になります。僕が京大で習った故高坂正尭(まさたか)先生だったら、ケラケラ笑って『中国と貿易をたくさん行って、最恵国待遇にして、稼いだお金で日本は軍艦を造ったらよろし』と言われるでしょう。
    ■    ■

Q:ただ大きな懸念が日米同盟には漂っています。トランプ大統領という見通せない不確実性が思わぬ危険を招きませんか。
A:確かにリスキーですね。次の大統領選挙がどうなるか、さらに年齢を重ねて判断力が鈍ることも怖い話です。しかし、彼だからこそ日本がTPP(環太平洋経済連携協定)をやれたともいえます。緻密で整合的な思考を持っていれば『俺が嫌という話をなんでやるんだ』といってきたでしょうが、関心がないのでしょう。 TPPは米大統領が反対することを日本がやった唯一の例だと思います。

 大統領はいずれ代わります。彼とどうディール(取引)するかより、 米国のベスト・アンド・ブライテスト(最も聡明な人たち)に日本がいかに大事な国か、常に意識を呼び起こすように、国の戦略として働きかけをしていくことが急務です。 しかし、米国への日本の留学生が減るなど、将来の人間関係の構築が十分対応できていない。日米同盟の未来にとって、最大の課題です。外交は友人の数ですから。(聞き手 編集委員・駒野剛)

    *
出口治明:1948年生まれ。日本生命保険に入り英国現地法人社長などを歴任。2008年ライフネット生命保険を開業。18年に国際公募で選ばれ現職。


(インタビュー)日米安保改定はや60年 出口治明2020.2.04


この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップR15 に収めておきます。

Q:
A:





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Last updated  2020.02.07 00:04:54
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