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2020.10.13
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カテゴリ: 気になる本
本屋の店頭で『たちどまって考える』という新書を手にしたのです。
パラパラとめくってみると、ヤマザキマリの最新評論集のような本になっています。
これは図書館予約している場合ではないでえ・・・ということで、衝動買いしたわけでおます。





ヤマザキマリ著、中央公論新社、2020年刊

<「BOOK」データベース>より
パンデミックを前に動きを止めた社会。世界を駆ける漫画家・ヤマザキマリもこれほど長期間家に閉じこもり、自分や社会と向き合ったのは初めてだった。しかしその結果「たちどまることが実は必要だったのかもしれない」という想いにたどり着く。ペストからルネサンスが開花したようにまた何かが生まれる?混沌とした日々を生き抜くのに必要なものとは?自分の頭で考え、自分の足でボーダーを超えて。あなただけの人生を進め!

<読む前の大使寸評>
ヤマザキマリの最新評論集のような本になっています。
これは図書館予約している場合ではないでえ・・・ということで、衝動買いしたわけでおます。

rakuten たちどまって考える



「第4章 パンデミックと日本の事情」で<外国語の習得>が語られているので、見てみましょう。
p200~203
<「失敗したくない」という病>
「日本のナショナルチームはなぜ、『いよいよゴールだ!』というときにボールをみんなで譲り合うのか、その理由を知りたい。失敗したら責められるのが嫌だからなのかい?」

 少し前になりますが、駐日イタリア太子から日本代表のサッカーチームについてこんな質問を受けました。スポーツニュースなどを通じて、ゴール前の決定力の低さがよく指摘されていた頃のことです。

 その真偽はその道のプロにお任せしますが、「失敗したくない」というメンタリティは現代の日本人が抱える大きな病ではないでしょうか。

 実際、コロナ対策で日本政府が急に方針を変えたり、何かと右往左往している姿を見ていたりしても、失敗したくない、つまり責任を取らなきゃいけない状況をとにかく回避しようとしている気がしてなりません。

 この日本人の“失敗したくない病”を、“語学学習”の話を例に考察したいと思います。

 私のイタリア語は、美術の学校の勉強やフィレンツェで出会った人たちと接するなかで身につけたものです。学生時代、イタリア語でレポートや論文を書いていましたが、当初スペルは間違いだらけ。

 しかし、当時の私にとっては完璧なイタリア語の習得より、付き合っていたイタリア人たちに言いたいことを伝えるほうが大切だったため、とにかく聞き覚えのある言葉から覚え、言語化するのを優先していました。つまり「伝わること」こそ、言語を生かしたコミュニケーションで、文法やスペルの正しさは追いついてくるものと思っていた。実際、それでなんとかなってきました。

 しかし、この世界にはそんな荒っぽい語学学習をする私の上をいく人がたくさんいます。イタリアももちろんそうですが、中東や南米など、おおむね積極的に会話する地域で、言語の“ハッタリ”達人に多く出会ってきました。

 二言、三言でも知っている言葉があればもう十分で、男性なら「コンニチハ」「サヨウナラ」「アイシテマス」だけで、冗談ではなく日本女性と恋に落ちる。この場合、しゃべりたい意欲と相手への気持ちを少ない語彙に精一杯込めながら、雰囲気で相手に合わせていうわけです。彼らが伝えたいのは、言語よりコミュニケーション力であり、相手を知りたい、わかりたい、と思う気持ちなのでしょう。

 言語はその国の文化や考え方を表すものですから、母国語にしている人々と付き合っていくうえで徐々に理解できる表現のニュアンスというものがあります。テキストだけでは学べない部分ですね。そこに暮らして恋愛し、喧嘩もし、仕事に生かして不条理を経験し・・・。真の言語力を身に着けるには、やはり「経験」が不可欠です。

 一家でポルトガルに住むことになったとき、リスボン大学の学生に息子の家庭教師を頼みました。彼は外国人に言葉を教えることを専門に勉強していました。その学生いわく、もっとも言語を教えるのが難しい外国人が日本人、とのことでした。日本人は文法を間違えまいと慎重になり過ぎて、なかなかしゃべろうとしない。文法の正しさにこだわるがため、かえって習得率が下がってしまうというのです。

 私がかつて日本でイタリア語を教えていた生徒さんにも、とにかく文法の正しさにこだわる方がいて、会話をしたイタリア人が「君は間接代名詞を使うのが好きだねえ」と苦笑いをしつつ、戸惑っていたことがありました。すると途端に躊躇して、もう積極的に会話ができなくなってしまう。もちろん日本人であってもハッタリ力をおおいに発揮する人もいますが、真面目な人ほど表現に引っかかって、会話がブロックされる傾向がある。

 逆の立場になればわかりまうよね。きちんとした日本語をはなせなくても、文法はめちゃくちゃでも、何かを伝えようとしている人なら、こちらも言わんとすることに耳を傾け、理解してあげようと思う。たしかに文法をしっかりと把握することの合理性はあります。しかし言語コミュニケーションでは「伝えたい」という意思と意欲が最優先なのです。
 なお、この「失敗してはいけない」メンタルは、言語だけでなく、報道などを通じてもよく感じられます。たとえばイタリアの報道は、自分たちの国で起こることを常に俯瞰で捉え、批判にも容赦がないのがその特徴です。政府や行政によるずさんさが明るみに出れば「イタリアという国はこれだから・・・」と客観的に捉える。

 失敗に対しても同じです。でも同じような報道を日本でやっていたら、きっと非国民的な扱いを受けてしまうでしょう。群れのなかでの一糸乱れぬ統率がとれて完璧な社会というイデオロギー、というか信念が日本には深く染み込んでいると思います。


『たちどまって考える』1 :漫画家のくせに





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Last updated  2020.10.13 00:48:35
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