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2020.12.31
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カテゴリ: アート
図書館で『日本文学史序説補講 』という本を、手にしたのです。
この本は5日間の合宿学習会の記録であるとのこと・・・それにしても広いジャンルで濃密な講義を行ったものですね。





加藤修一著、筑摩書房、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
世界7カ国語に翻訳され、高い評価を受けた『日本文学史序説』。本書は、この不朽の名著について、著者みずからが集中講義を行った全記録である。『日本文学史序説』のエッセンスを分かりやすく説きつつ、執筆の方法論を明かし、その後の発見なども織り交ぜて縦横に語る。日本文学の細やかな味わいについて、中国や西洋の文学との比較、文学にあらわれた思想についてー自著の解説やすでに語られたことの要約に留まらぬ、芸術・文化、政治、社会に及ぶ白熱の講義録。文庫化にあたり、『日本文学史序説』をめぐる、大江健三郎、小森陽一、成田龍一各氏の追悼鼎談を「もう一つの補講」として収録。

<読む前の大使寸評>
この本は5日間の合宿学習会の記録であるとのこと・・・それにしても広いジャンルで濃密な講義を行ったものですね。

rakuten 『日本文学史序説』補講


「第5章 能と狂言の時代で」で文学と戦争の関係を、見てみましょう。
p149~153
■<戦争>と文化創造との関係
 余談ですが、奈良、京都の文化がそれ自身でまた発達して、18~19世紀にかけて浮世絵になった。浮世絵になった文化は、また海を渡ってフランスに行って印象派に影響を与えた。それで結局、ヨーロッパから発した文化がひと回りした、ということを木下杢太郎は考えていました。

 別の例はモンゴール帝国です。モンゴール人は西に向かった。一つはロシアに向かって北上し、また南下してきます。一つはまっすぐインド、中央アジアからヨーロッパへ向かう。両方ともトルコを通る。そうするとやはり、戦争による異文化接触というものがあらゆる場所でおこるわけです。

 アレキサンダーは美術にしても哲学にしても、圧倒的に進んだ文化をもっていた、軍事的に圧倒しただけでなく、文化的にも圧倒的でした。モンゴールは、武力において圧倒的だったから征服しましたが、文化的な彫刻とか文学という話になると、遊牧民ですからそんな手のこんだことは知らなかった。

 そこで何がおこったかというと、被占領者のほうが占領者よりも文化的にははるかに高いという逆の現象がおこった。戦場で勝ったほうの文化的無条件降伏です。軍隊はどんどん先へ進むけれど、途中で親玉を一人残して、たとえば北インドでムガール帝国をつくります。

 いちばん大掛かりなケースがムガールのモンゴール時代です。それはイスラム国家以前のこと。そこを支配したけれども、彼らはしたたかにインド文化に同化してしまった。遊牧民文化の新しい影響は入ったものの、全体としては、ことに技術面はインドとペルシャのものです。ペルシャのモスクなどを建てたのはモンゴール人の力ですが、技術者はペルシャ人です。テントとタイルではだいぶ距離がある。

 だから、ちょうどアレキサンダーと鏡像、左右入れ違いです。アレキサンダーは勝ったほうが文化を押しつけた。ジンギスカンは勝ったほうが文化を学ぶ。あるいは同化されてしまう。

 ヨーロッパ史でそういうことがおこったのはローマ帝国です。ローマ帝国は紀元前にギリシャを征服して、ギリシャは植民地になる。しかし文化的にはローマ人がギリシャ語を学んだので、ギリシャ人がラテン語を学んだわけではない。

 逆転現象がおこった。プルタークはギリシャ人で、ギリシャ語で書いた。だから、ローマ対ギリシャは、ややモンゴール対ペルシャとかモンゴール対北インドと似ています。

■社会的約束事が壊れるとき
 もう一つは、異文化接触ではなくて、一つの文化内部で内乱がおこって国内が混乱状態になったりすると、それまでその社会がもっていた社会的約束事が壊れます。

 建物だけじゃなくて、生きている人のなかの価値の体系が壊れる。価値はかならずしも倫理的価値や政治的価値だけではなくて芸術的価値でもあるでしょう。『建礼門院右京太夫集』の「なぜ月の話ばかりして星の話をしないのか」という疑問の答えは、それが社会的約束だからだということになります。

 ほかに何の理由もない。伝統的にそうなっていたからで、いかに<伝統>が詩人あるいは歌人の感受性と表現をしばるか。ものすごい力です。

 その力があまりに強いために、最近の文芸理論のなかには、文学を論じるのに作者はいらないという説さえもでてきた。作者と作品の関係などよくわからないのだから、そんなものははずして、その作品に先行する同時代の文化、あるいはそれ以前の文学作品が新しい文学作品に及ぼす影響を考察する。作者がつくるのではなくて、文学的伝統が文学作品をつくるのだという極端な考え方。

 それを「テキストの理論」といって、最近大学ではかなり流行っています。そういう理論が出てくるくらい伝統とは強いものです。

 ところが、混乱の時代はそれを一挙に壊してしまう。「源平の戦い」で平家が滅びると同時に歌の伝統も壊れた。だから、建礼門院右京太夫は星空を見上げた。つまり、混乱は伝統からの解放になるのです。解放は社会的約束、芸術表現上の約束の破壊です。そうすると芸術家は自由になる、ということが一つあります。

 混乱から出てくるのはまた<個人>です。頼むものは自分しかない。村があって、そこには政府の役人がいる、律令制は中央集権制度です。律令制が壊れてしまうと村の安全を誰も保護してくれない、自分で守るよりしようがなくなる。

 元サムライの強盗が襲ってくると、百姓は軍事訓練を受けていませんから太刀打ちできない、そういうといに別の浪人集団を村で雇うわけです。黒澤明の『七人の侍』はそれを描いています。

 病気になると比叡山の坊さんに加持祈祷をしてもらっていたのが、内乱で来てもらえないことになると、死んだあとで極楽に行きたいのに比叡山は信用するに足らずとなります。あるいはしていても来てくれない事態になってしまった。それが平安朝末期です。


『日本文学史序説』補講2 :本居宣長の世界観
『日本文学史序説』補講1 :日本文学の特徴

おっと、今日は大晦日だ。
年賀状は昨日投函したので、心安らかに年の瀬を過ごしています。
このブログを訪れた皆さんに、良いお年を願っております。





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Last updated  2020.12.31 15:49:39
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